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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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ゲームを始めるその前に

 もう、今から五年近く前からのことだ。俺はその見ているだけで、キラキラする気持ちになれるゲームがやりたくて仕方なかった。



 そのゲームをやりたい! その気持ちはずっと揺らぐことはなかった。


 だが、ゲームを始めるに当たって、重大な問題がいくつもあった。


 一つめは単純にお金がなかった。そのゲームはまともにやろうとするならば、俺のお小遣い三ヶ月分はする。


 二つめは買いに行く時間がなかった。というのも、俺はサッカー部に所属していて、家に帰るのは八時を過ぎる。


 三つめはそもそもプレイする時間がなかった。休みの日は疲れから、ほとんで寝て過ごしてしまうからだ。


 四つめは……まあこれはどうにでもなるのであとでいい。


 そんな様々な要因から、俺はゲームを買うこともプレイすることもままならない。だがそのゲームをやりたいという気持ちだけは本物だった。


 ならばと俺はゲームのために覚悟を決め、部活を辞めることにした。


 監督からもチームメイトからも考え直せと何度も言われた。だが、今の俺にとってはゲームの方が大事だった。


 次に俺はバイトをすることにした。バイト先はスーパーマーケットでのレジ打ち。おばちゃんたちに遅い遅いと何度も言われ、心が折れかけそうになった。けれどその度にゲームのことを思い出して、耐えきった。


 そして俺はプレイする時間を作るために、やるべきことをできるだけ早くすることにした。宿題は学校で終わらせ、食事は十分で済ませ、風呂は五分で終わらせる。睡眠時間はきっかり五時間。少しずつ時間を節約することで、俺はかなり時間を作ることができた。


 一ヶ月後、生まれて初めて、自分で働いて稼いだお金を手に入れた。他と比べてどうかは分からないが、ゲームを買っても全然お釣りが来るで問題なかった。


 俺はバイトを辞めた。……一応言っておくと、急にではなく、元々二ヶ月限定で始めたバイトだったからだ。


 ゲーム購入費だけを財布に入れ、残りは全部貯金し、俺はゲームショップに向かう。


 これから楽しい毎日が待っている……! 何の問題もなくゲームを買って俺はルンルン気分で家に帰る。


 さあ始めよう! 俺は包装紙をビリビリと外し、テーブルの上にゲームを置く。






 ――と、ここでようやく俺は目をそらしていた四つめと向き合うことにした。



「誰とやろう……」


 

 テーブルの上のキラキラしたカードは、ただそこに置かれただけだった。



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