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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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おばけはおかしで化けて出る

 ある日、私の部屋におばけとしか思えないものが現れた。


「おかしくれ」


 肥えた姿をしたおばけは、口をあんぐりと開けて私を脅した。


「……あめでいい?」


 私は瓶のフタを開け、そこに入ったあめ玉をおばけに渡す。おばけはあめ玉をごくんと飲み込んだ。


「……うまかった、ありがとう」


 おばけはそれで満足したのか、部屋から出ていった。


「おかしくれ~!」


 翌日、私が勉強している時に、再びおばけは現れた。私はそおっと階段を下りて、母が戸棚に隠していたポテトチップスを取った。


「はいどうぞ」


 私は袋を開けておばけに渡す。おばけは嬉しそうな顔をしながらバリボリとポテトチップスを食べていく。


 それからもおばけは三日に一度のペースで何度も私の部屋に来た。私は戸棚のおかしだけではなく、学校からの帰り道などにコンビニに寄って、おかしを用意しておばけに食べさせた。


「おいしい、おいしい……!」


 お小遣いがもったいないとは思わなかった。おばけの食べる姿を見るだけで、私のお腹も満たされた。


「いったいどういうこと?」


 だけどそんな満たされる時間も長くは続かなかった。コンビニに寄っていること、戸棚からおかしを取っていることがバレてしまった。


 私は三ヶ月の間、お小遣いを取り上げられ、戸棚にあったお菓子も違う場所に隠された。


 それから私は無心となって勉強した。


「おかし、おかし」


 でも、おばけは消えなかった。


「…………」


 最初の内は我慢しようとした。でも一度甘い顔を見せたことで、おばけの欲望に終わりはなかった。


「オカシオカシオカシオカシオカシオカシオカシオカシオカシオカシオカシオカシ……」


 壊れたテープレコーダのように、おばけは何度何度も繰り返す。


 私はおかしくなってしまいそうだった。


 三ヶ月の罰が解かれた。久しぶりのお小遣い。私はおばけに満足させるため、大量のお菓子を買い込んだ。


 だけど部屋に帰ってきた時、おばけはもういなくなっていた。


 どこに行ったのだろう? 私はおばけが帰ってくるのを待った。



 そして十年経った。久しぶりにおばけは現れた。


 あの時と同じ、ぶくぶくと肥えた、不健康な体……。だけどよく見るとそれは、おばけではなかった。



「おかし……おかし……」

 

 おばけは、鏡の前に立っていた。

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