孤独の煌めき
「なんでも願いを叶えてあげる」
突如現れたカナエという魔女にそう言われた地味な少女ニナは、とっさに「キラキラした青春を送りたい」と願った。
「いいよ。とても簡単だ」
カナエは指を鳴らす。すると眼鏡のおさげ姿から一変。ニナは誰もが認める美少女となった。
「ありがとう、カナエさん」
ニナは生まれ変わった姿に感激する。これならば、キラキラした青春を送ることができる。
「一年以内に、『キラキラ』をためることができなかったら、魔法は解けるからね」
キラキラ……。人間が持つ、楽しいや嬉しいといった気持ちから表れる感情。魔女たちはその煌めきを求めて、人間の願いを叶えている。
「大丈夫、絶対にキラッとできるわ!」
かくしてニナの青春が始まった。
美少女となったニナに死角はなかった。入学して一ヶ月で五人もの男子に告白され、クラスの上位グループの輪にも入ることができた。
さらに、もともと勉強もできたことから、中間テストでは七位になった。
夏休み前には彼氏もでき、デートも何度もした。
順風満帆。誰もが羨むような青春をニナは送り続ける。
「本当最高……!」
ニナは自分を変えてくれた魔法使いに、何度も感謝した。
だが、なにやら物足りない部分もあった。ニナはそれを求めて青春を満喫した。
そしてあっというまに一年後。カナエと約束した日がやってきた。
「カナエさん、久しぶり。はいどうぞ」
ニナはカナエにため込んだ「キラキラ」を与えようとする。
「…………」
だがカナエ、ニナの姿を見て落胆した。
「ど、どうしたの?」
「全然、たまっていないわ」
魔女の持つ魔眼で見たニナのキラキラは、パーセンテージで表すなら十パーセントくらいだった。
「そんな、嘘よ……! わ、わたし、あんなに楽しんだのに……!」
認めたくない。恐怖を覚えたニナは、必死に弁明する。
「……失敗だったかな」
「ち、違うのカナエさん! わ、私は本当に――!」
「無理しなくていいよ。……ごめんね」
パチンとカナエは指を鳴らす。そしてニナの魔法は解けた。
また、地味な一人きりのぼっちな生活が始まる……。
だけどニナ、不思議とそれが嫌ではなかった。
失って初めて分かることもある。
「……すごい」
元に戻ることで、ニナの「キラキラ」は、一気に高まった。




