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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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針雨


 十数年前から、地球では新たな天災が出現した。日本ではそれを「針雨」と呼んでいる。


「雨」とはいったが、針が雨のように降ってくるというわけではない。むしろ、そちらの方がまだ良かっただろう。 


 ある日突然、空から巨大な「針」が降り落ちてくる。それが針雨の正体だった。


 大きさはだいたい東京タワーぐらい。落下の衝撃はかなりのもので、一本突き刺さるだけで街一つが壊滅するほどだった。


 そして針は約一週間で空に返っていく。原因についてはまだ分かっていない。一部では神の怒りとも言われている。


 だが人間もただやられているわけではない。世界中の科学者が結託して、天気予報と同じように、針雨の「降針確率」を予測することに成功した。


 長年の統計の結果、針が突き刺さる場所には法則性があるということが判明した。


 その中の一つが、東京だった。


 東京人は東京を離れ出す。科学者の研究通り、それから何度も針は東京を襲った。数年後、東京はもう、人が住めるような場所ではなくなっていた。 


 だが、人類の生存率は一気に上がった。十年後、いまだに「針」は落ちてくるが、人々はもう慣れてしまい、新たな首都大阪を中心に、昔の雰囲気を取り戻しつつあった。


「きゃっきゃ……」


 深夜、寝ている起きているに関わらず、誰もがその「声」を聞いた。


 それからすぐに、地球に針が何本も突き刺さってきた。東京だけではない。今度は本当に、何の規則性もないほど、無限にだった。


 世界を一斉に襲う最大最凶の大惨事。そんな中、そんな時だからこそ、ある者は針雨の正体に気づき、最後にその者はこう言った。


 地球は大きな――。





「こら! 何してるの!」


「遊んでた」


「ダメでしょ勝手に……あーあ、ボロボロ……気に入っていたのに……!」


「大丈夫だよママ。ちょっと小さいけど、隣に白いのあったよ」


「もう、仕方ないわね。今回は許してあげる。でも、もう二度と遊んじゃダメだからね」


「はーい」


「じゃあお母さんはこれから仕事に戻るから、邪魔しないでね」


 母は息子にそう言って、新たな「針刺し」に、一本ずつ針を刺していった――。

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