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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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イメージ

 カレーはインド。ラーメンは中国。国によって様々な食物のイメージがある。


 それは人間に対しても同じようで、なぜか俺はみんなから「肉まん」というイメージを持たれている。


 一応言っておくが、俺は肉まんはあまり食べない。というか俺以外も寒い日にくらいしか肉まんなんて食べないだろう。


 さらには「肉まんみたいな体」をしているわけでもない。なのに俺のことを「肉まんくん」と呼ぶ者さえいる。


 どこの誰がこんなイメージを持たせたのかは分からないが、甚だ不愉快だ。


 俺はこの印象を変えるために、自ら別の食べ物のイメージを付けることにした。


 手始めに俺は好物のラーメンを食べることで「俺=ラーメン」にすることにした。俺は学校の昼食は必ずカップ麺を食べることにした。


「あれ? おかずの肉まんは?」


「それ肉まん味?」


 だがいくら俺がラーメンを食っても、みんな肉まんのことを忘れなかった。


 おそらく何を食べても「肉まん」と言い続けるだろう。俺は諦め、「肉まん」というイメージを受け入れることにした。


 だがそれはべつに「肉まんを食べる」というわけではない。ごく普通に生活を送ることで、肉まんという言葉そのものを、意識しないようにすることにした。


 その考えはみごと的中。一ヶ月経った頃には俺は周りから肉まん関連の話題を振られてもなんとも思わなくなっていた。


 ある日俺はクラスメイトに宿題を見せてくれたお礼だと、コンビニの肉まんを奢ってもらうことになった。


 どうせ食べるならピザまんや豚まんの方が良かったが、そのコンビニには肉まんしか置いていなかった。


 前までは食べるのに抵抗があった肉まんだが、今は平気だった。俺はイメージとか関係なく、肉まんを一口ほおばる。


「……………………」


 たった一口、それで俺の手は止まった。


 まずいとか、精神的に食べられかったからではない。その逆だった。


「う、うめえ……!」


 久しぶりに、たぶん五年ぶり位に食べた肉まんはめちゃくちゃ美味しかった。あっという間に肉まんは俺の手から消えていた。


「も、もう一個……!」


 さらには俺は自分の小遣いで残っていた肉まんを食べていく。


「はは、良い食べっぷり!」


 クラスメイトは茶化すが、()()()()()()どうでもよかった。


 その日からほとんど毎日、俺は肉まんを買っては食べ、たまに自分で作ってみたりもした。



「インド=カレー」、「中国=ラーメン」……。そのイメージは少なからず、「よく食べているから」もあると思う。


 卵が先か鶏が先か……。ただ順序が逆だっただけ。

 


 あの日以来、俺は()()()()()()()イメージ通りになった。



  


 

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