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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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つんのめり

 時期にしては残暑が残るくらい……まあ、九月の初めくらいだったと思う。俺は唐突に彼女が欲しくなった。


 彼女さえいればこれから始まる鬱屈した日常を楽しめるかもしれない。そんな自己満足的な考えから、俺は恋人を作ることを決意した。


 だがそんな簡単に彼女ができれば苦労はなく、俺はまず好きな女子を見つけるところから始めなければならなかった。


 その時……というより、俺は女子に対して恋愛感情を今まで持ったことがなかったので、いったいどういう気持ちが好きなのかということがいまいち分からなかった。


 心がドキッとしたらとはよく言うものの、だったら俺は宿題を忘れる度に怒りを顕にする担任のハゲ教師に、恋をしていることになる。つまり、「ドキ」からは恋愛感情を持っているかどうかは分からない。


 じゃあ他にどういうキッカケがあるか? 妹の所持する少女漫画をこっそり読んで見たところ、好きになった相手のことをずっと考えてしまうというのがあった。


 なるほど、たしかに好きになった相手ならば常に考えてしまうだろう。


 俺はそんな経験があったかどうかを思い出してみた。すると何人か、頭から離れない女子の顔が浮かんできた。


 一人目は戸村加奈子。戸村は俺がちょっとばかしからかっただけで、「死ね」という暴言を吐いてきた。


 二人目は向田向日葵。向田は寝ている俺の頭にシャーペンの先端をぶっ刺すという方法で俺を起こした。


 三人目は高曽夜桜。高曽は俺の消しゴムを借りたかったと思うと、返ってきた時には角が全部潰れてしまっていた。


 思い出す度に、三人のことばかり考えてしまう。三人は他にも、俺に対して色々とちょっかいを出してきた。


 三人とも、普通に「可愛い」ということもあり、野郎どもからは「羨ましい」と妬まれた。


 なるほど、たしかに美少女たちとスキンシップをする俺は、さながらそういったゲームの主人公のようなものだろう。正直言って、出会った当初は三人全員好きになるほどだった。


 ――が、それは「錯覚」。現実はゲームではない。



 今も俺は三人に特別な感情を持っている。だがそれは決して…………恋愛感情なんて呼べるものではなかった。



「……いじめじゃね?」



 冷静に考えた結果、俺の中に残されたのは、()()()()()()()()()()()()への、怒りだけだった。

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