中々変えるの難しい
「先輩」
「なんだ? 今忙しいんだが」
「それは先輩がパソコン前で、左手を股間部分に当てているのを見ればわかります」
「じゃあなんだ? 俺のを見たいのか?」
「セクハラで訴えますよ。あたしが聞いているのは、どうして先輩はあたしがここにいるにも関わらず、まったく動じないかってことです」
「そりゃおまえ、俺が鋼の心を持っているからだよ」
「意味がわかりません。いいからさっさとその卑猥な画面を消してください。私がいるのに不愉快です」
「つれないねえ。お前だってこういうの好きだろ?」
「否定はしませんが、それが今ここでやるという理由にはつながりません」
「そりゃそうか。まあいいや。ほいっと……で、何のようだ?」
「それはひょっとしてギャグですか? 今日が、約束の日です」
「約束……ああ、そうだったな。――あのさ、改めて聞くけど……」
「『本当に俺でいいのか』といった問いなら無駄ですよ。あたしはすべてを受け入れた上で、先輩が好きなんです。どんな障害もぶち壊すつもりです」
「……そうだよな。わかったよ。じゃあ、俺の答えを言うぞ。…………オーケーだ」
「本当ですか!?」
「に、二度も同じようなこと言わせるな! 俺だってかなり恥ずかしいんだよ! ど、どうした?」
「すいません……あまりの嬉しさに眼が洪水を起こしてしまいました」
「そ、そっか……その、まあ今後、よろしくな」
「――はい、お願いします! それで先輩……これからは名前で呼び合いましょうね!」
「わかったよ。……その、ミナコ……」
「はい、サクヤさん!」
「うっ……久しぶりに名前呼ばれた……」
「良い名前じゃないですか、さ・く・やさん?」
「――ああ、やっぱやめてくれ! 鳥肌が立ってきた! いつも通り先輩って呼んでくれ!」
「そんな!」
「代わりに、俺が出来る範囲でなら言うこと聞いてやるからさ」
「え、本当ですか! それじゃあ……」
「な、なんだ? 俺にできることじゃないとダメだぞ?」
「大丈夫ですよ先輩! あたしのお願いはとても簡単なものです。それは――」
「……マジで?」
「はい。それだけです」
「それだけって……ガキの頃からずっとこうなんだが……」
「駄目です! 先輩には似合いません」
「……くっ、分かったよ」
「あ、付け加えると、ちょっとダルそうな感じで言ってほしいです」
「田舎のおばあちゃんみたいにか?」
「いえ、あれほどじゃないです。文字化するとカタカナになるような感じでお願いします」
「めんどくせえな……まあいいよ。それでミナコ、まずはさ……アタシとデートしないか?」
「喜んで!」




