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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
26/100

中々変えるの難しい

「先輩」


「なんだ? 今忙しいんだが」


「それは先輩がパソコン前で、左手を股間部分に当てているのを見ればわかります」


「じゃあなんだ? 俺のを見たいのか?」


「セクハラで訴えますよ。あたしが聞いているのは、どうして先輩はあたしがここにいるにも関わらず、まったく動じないかってことです」


「そりゃおまえ、俺が鋼の心を持っているからだよ」


「意味がわかりません。いいからさっさとその卑猥な画面を消してください。私がいるのに不愉快です」


「つれないねえ。お前だってこういうの好きだろ?」


「否定はしませんが、それが今ここでやるという理由にはつながりません」


「そりゃそうか。まあいいや。ほいっと……で、何のようだ?」


「それはひょっとしてギャグですか? 今日が、約束の日です」


「約束……ああ、そうだったな。――あのさ、改めて聞くけど……」


「『本当に俺でいいのか』といった問いなら無駄ですよ。あたしはすべてを受け入れた上で、先輩が好きなんです。どんな障害もぶち壊すつもりです」


「……そうだよな。わかったよ。じゃあ、俺の答えを言うぞ。…………オーケーだ」


「本当ですか!?」


「に、二度も同じようなこと言わせるな! 俺だってかなり恥ずかしいんだよ! ど、どうした?」


「すいません……あまりの嬉しさに眼が洪水を起こしてしまいました」


「そ、そっか……その、まあ今後、よろしくな」


「――はい、お願いします! それで先輩……これからは名前で呼び合いましょうね!」


「わかったよ。……その、ミナコ……」


「はい、サクヤさん!」


「うっ……久しぶりに名前呼ばれた……」


「良い名前じゃないですか、さ・く・やさん?」


「――ああ、やっぱやめてくれ! 鳥肌が立ってきた! いつも通り先輩って呼んでくれ!」


「そんな!」


「代わりに、俺が出来る範囲でなら言うこと聞いてやるからさ」


「え、本当ですか! それじゃあ……」


「な、なんだ? 俺にできることじゃないとダメだぞ?」


「大丈夫ですよ先輩! あたしのお願いはとても簡単なものです。それは――」


「……マジで?」


「はい。それだけです」


「それだけって……ガキの頃からずっとこうなんだが……」


「駄目です! 先輩には似合いません」


「……くっ、分かったよ」


「あ、付け加えると、ちょっとダルそうな感じで言ってほしいです」


「田舎のおばあちゃんみたいにか?」


「いえ、あれほどじゃないです。文字化するとカタカナになるような感じでお願いします」


「めんどくせえな……まあいいよ。それでミナコ、まずはさ……()()()()()()()()()()()()


「喜んで!」



 


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