愛スルー
二人は恋人同士だった。告白したのは男の方で、女はそれを了承した。
「俺なんかのどこがよかったんだ?」
付き合い始めてからはや三日、男は女にその理由を尋ねた。
「あなたじゃなければいけなかった」
その答えに、男は激しく喜んだ。自分たちは運命で結ばれるようになっていたと、本気で思っていた。
付き合い始めてから一ヶ月。男は女にキスを迫った。
「今は無理。でも、もう少しすれば、キス以上のこともさせてあげる」
甘美な女の声。男は興奮しながらも、もう少しだけ待つことにした。
「なあ、そろそろいいだろ?」
半年経った。だが二人の関係は一向に進んでいなかった。
「……いいわ、やりましょう」
女はしきりにスマホを確認し、今までの拒否反応が嘘のように、はっきりとそう言った。男は今まで溜め込んだものすべてをぶつけるように、一晩中女と共に愛しあった。
それからしばらくして、女は妊娠した。
「絶対に幸せにするよ!」
経営する会社も軌道に乗ってきた。男は絶対に女と生まれてくる子供に、そういった負担はかけさせないと誓った。
「うん、ありがとう……あたしたちを、幸せにしてね……」
女はお腹をさすり、男にそう言った。
――だがその眼は、男を捉えてはいなかった。




