表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
17/100

いたずら


 いたずらだと言っても、さすがにこの歳になると信じてもらえなかった。


 純粋だからこそ、子供は許され、不純であるからこそ、大人は許されない。


 けど、いちおう言わせてもらうが、私にそういった気持ちは一切なかった。



「笑わせよう」



 私がミナコに対して思ったのは、本当にそれだけだった。

 そもそもそれはいたずらと呼ぶにはあまりにもちんけなもので、私はただミナコの持ち物を使って、あることをしただけだ。


「どう?」

 私は部屋に戻ってきたミナコに、いたずらを見せる。ミナコは呆然と立ち尽くし、笑うどころか涙を浮かべた。

 突然のことに、私はいたずらをやめ、ミナコに謝って部屋を出た。

 なぜミナコが突然泣き出したのか、私はもう一人の親友、ケイコに尋ねた。


「そんなんで元気になるわけないでしょ」

 一部始終説明した私に、ケイコは呆れた声を出した。

「じゃあどの程度のいたずらなら許されたの?」

「そもそもいい歳した大人が、『いたずら』するっていう考え自体間違っているのよ。そもそもなんでいたずらすることを前提に考えたの? もっと他のやり方で慰めればいいじゃない」

 至極最もな意見だった。たしかにその通りだ。



「……昔を思い出してほしかったの」



 いつの間にか、私はいたずらをした理由をそう答えていた。

「昔やったいたずらと同じことをすれば、楽しかった頃の記憶を、思い出してくれるんじゃないかと考えたの。いわば、いたずらは手段なの」

「……それ、マジで?」

 ケイコは眼を丸くして聞き返す。

「ええ。ケイコだって刺激的な記憶は忘れないでしょ? それと同じ――」

「そうじゃなくて……えっと、昔そのいたずらはできた?」

「え、あーいや……失敗だったわ」

 苦々しい記憶がよみがえる。今こそミナコとは親友の間柄だが、あのいたずらを互いにやり合った時に、私だけが失敗したのを、ミナコに笑われたことをいまだに覚えている。 

「それで、今回は?」


「成功したわ。そしたら急に泣いちゃって……あっ」



 そこまで言って、私はなぜミナコが泣き出したのか理解した。



「……私、そんなつもりは――」

「うん、それは分かっているわ。……まあ、いいんじゃない?」

「一応、謝った方が――」

「火に油を注ぐことになるだけだと思うわ。ま、しばらく経てばショックも消えるでしょ。もしくはあんたが前みたいになるか」

「い・や・よ!」

「冗談よ。じゃ、ミナコのところに行ってくるわ。話だけ聞けば、あの娘もスッキリするでしょ」

 そう言って、ケイコはミナコの家に向かっていった。


「……まさかこんな風にこじれるなんて」


 

 何気ない、多分私たちの学校でしか流行っていなかった、「友達のスカートを履く」といういたずら。



 子供の頃、私が()()()()()()()()()()()()()()いたずらは、大人になってようやく成功させることができた。



 そしてそれは同時に、あの時に比べ()()()()()()()()ミナコには、大ダメージを与えることになってしまった。



 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ