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広異世界の小さな話  作者: 元田 幸介
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目に見える

 記憶を失ったことに気づいたのは、しばらく経ってからだった。


 目を覚ました時、俺は真っ裸で、砂浜に立っていた。


 海の近くの家から服を盗み、俺はあてもなく歩き続けた。


 何百キロも歩き、俺は都会に出た。その間、俺は不思議と腹は減らず、水だけを飲んで過ごした。


 だが、都会に出ても、俺は自分がどこの誰なのかさっぱり分からなかった。身分証明書もなにもないので、警察にも行けなかった。


 仕方なく、俺は水を飲みながら、ぼーっと空を見上げて過ごした。


 すると不思議なことが起こった。はっと気づいた時、文字通り俺の視界は一変した。


 見えるものすべてに「名前」が表示されるようになったのだ。


「人」「人」「人」「ビル」「ビル」「コンビニ」「学校」


 イス、机、食べ物、建物はもちろん、人に対しても名前が表示された。



「ヤマダエミ」「トウサカアケミ」「オカダカケル」「株式会社『芳庵』」「イサワコーポレーション」「ラバーズマート」「招喜小学校」



 さらに見続けると、具体的な名前が表示された。おそらく、意識せずに見たものは「抽象的」に、じっと意識して見ると「具体的」に文字化けするのだろう。



 さらに言うならその文字化けは俺の知らないもの、人に対しても有効であった。


 なぜ自分にこのような力があるのかは分からない。ただ、この力を使って、いち早く解決しなければならないことがあった。


 それは自分の名前を知ること。名前さえ分かれば、あとはなんとでもなる。俺は覚悟を決めて、鏡を見た。


 鏡は逆さ文字になることなく、俺の頭上に名前を表示する。


「…………ああ、なるほど」


 その名前を見て、俺は納得する。自分に記憶がない理由こそ分からないが、自分が水だけで生命維持できる理由はなんとなくだが分かった。



 

「エミュルド星人 2897967号」



 最高に、活かした名前だった。

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