カタコト
「ついに完成したぞ!」
長年の研究と開発によって、ついにユウジは世紀の大発明(だと思っている)を作り上げた。
「名前は……『ラン』でいいな。さあ、起動だ!」
ユウジは「ラン」をセットし、ボタンをポチッと押す。それと同時に、ランは口を開いた。
『アナタハダレデスカ?』
「はっはは! 第一声がそれか! おちゃめな奴だな!」
ランの思わぬ発言に、ユウジは腹を抱えて笑った。
「ならば俺もそれに乗ろう! 俺の名はユウジ! ある意味お前の開発者だ!」
ユウジは笑顔でランにそう言った。
「……」
ランは無言で頭を下げた。
「ふわぁ」
『オツカレデスカ?』
「ああ、ここ一週間、まともに眠っていなかったからな」
ユウジは装置を開発した達成感もあり、すぐにでも眠ることができそうだった。
『ベッドマデハコビマス』
「え?」
ランはユウジを抱っこし、ベッドまで運び出す。だが、ユウジの研究室にベッドはなかった。
『カッテキマス』
「いやもうそんな金ないだろ? いやいらんけど」
『ジャア、ツクリマス』
ランは部屋を見回し、ガラクタを上手いこと組み合わせ、ベッドを作った。ユウジはそこに寝転がってみる。ちょっとやそっとじゃ壊れそうになかった。
「おーこれはいい!」
ユウジはさっそく眠りについた。ぐっすりと、気持ちよく眠れた。
それからランは、開発者へのユウジへ恩を返そうと、一週間身の回りの世話をし続けた。最初こそは悪いと思ったが、慣れてしまうと、ユウジはこの生活がずっと続けばいいと思ってしまった。
『オワカレデス』
だが、楽しい時は必ず終わりは来る。ランはユウジに別れの挨拶を告げた。
「え……あーそうか」
予測はついていたが、こんなにも早くだとは思わなかった。いや、それだけ開発に時間がかかったとも言える。ユウジは心にぽっかりと穴が空いたような気分になった。
『サイゴニキカセテクダサイ。ユウジハワタシヲ、ドウオモッテイマスカ?』
「どうって……そりゃまあ……」
『ワタシノコトガ、スキナンデスカ?』
「ん、まあ……そんなこともないこともないかな……」
真っ赤に染まる顔をそらしながら、ユウジは小さな声で答えた。そもそも、好きじゃなきゃわざわざ作ったりしない。
「でも、今の俺の技術じゃ、これが限界だったなあ……」
だが、実際にできたのは、思っていたのとは少し違った。
「もっと時間があれば、改良もできるんだが……」
『イイエ、ソノヒツヨウハ、アリマセン』
「え?」
『ワタシモバカジャアリマセン。アナタガツクッテクレテイルアイダに、ミニツイタコトガアリマス』
そう言って、ランは喉にあるスイッチを押し、電源をオフにした。
「ユウジ……」
だが、ランは口を開いた。ランはユウジを見据え、「ラン」に頼らず、こう言った。
「私のためにありがとう。とても、大好きです」
流暢な、綺麗で力強い日本語で、ランはユウジに告白した。