虹を求めて次元を超える
幼い頃に初めて見た「虹」は、タイキの心に大きな感動をもたらした。
自分も虹を作りたい。タイキは虹の原理を調べ、水道ホースを使って、小さくも綺麗な虹を作ることに成功した。
こんなにも素晴らしく、美しいものを作れたたことに、タイキは感動した。
それからタイキは晴れの日には何度もホースで虹を作った。
次第に、タイキはもっと大きな、本物のような虹を作りたいと思い始めた。
タイキは発想を変え、雨を作る方法を考えてみることにした。タイキは勉強に勉強を重ね、大学を卒業する頃に、ようやくそれがあまりにも非現実的な方法であると悟った。
しょせんただの人間が、自然現象が作り出す神秘的な虹を作り出すには、水道の蛇口を開くぐらいの方法しかない。タイキは夢を諦めかけた。
「にじならつくれるよ」
そんな時だった。タイキの姉の娘、姪っ子が、そんなことを言った。姪はタイキの目の前で、あっという間に「虹」を作り出した。
「ね、つくれるでしょ?」
目をキラキラさせて、姪はタイキに虹をプレゼントする。
「……ありがとう」
プレゼントされた虹を見て、タイキの中の怨念に近い思いは、スーッと消え去った。
その虹は、お世辞にも美しくない、ホースで作るよりも、とても小さな虹だった。だが、タイキが今まで見てきた虹の中で、最も輝いていた。
「おじちゃんもつくろうよ!」
「うん、作ろうか」
諦めかけていた夢は、再びタイキの中で火をともす。
タイキは無邪気な姪に感銘を受け、これからは「二次の世界」に夢を求めていくことにしたーー。