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作者とおかしなシリーズ

作者とおかしなダイストーリー


 前作こちらです↓

 http://ncode.syosetu.com/n7349d/

(『作者とおかしなストーリー』読了約14分)



 ダイス=サイコロを振ってエンドに向かう物語。何故にダイスなのか? それは、作者が最近ハマッているからである。

 前作からの第2弾。作者と主人公が漫才をしながらストーリーを作り上げていく。

 そして今回、実際に作者がダイスを振るので結末(エンド)の行方は作者にも わからないという。


 さあ主人公よ、王子を救いに行ってみようか。




――というわけで、今回は主人公の 女 版。だからといって『3』はオカマで行こう! とかは無いからね。

「ちょっとちょっと作者! 早く話を進めてよ。一体、私は誰」

――そうだね主人公。ええと。それじゃあゴンザレス・シマ子さん。

「嫌よ。鈴木京子でいいわ。適当」

――わー。随分 冷静キャラだな今回。おかげで話の進行がスムーズで。

「ゴチャゴチャうるさいのよ。次は? 年は15でいい? ちょうど それぐらいがいいんじゃないの」

――受験生の逃避行的な年齢という事で。

「そこまでは考えてないわよ。鈴木京子、15歳。スレンダー美女でいいわ」

――綺麗なオネエサンは好きですか?

「誰に言ってるの。見るだけならね。付き合うなら器量を見た方が いいんじゃない」

――毒を吐きますね、おたく。ウウン、シビれるう。

「(無視)ダイスを振る、って言ってたけど。6面体かしら?」

――イエッサ。しかし眼光鋭く細かいですね主人公。助かりますですよ。前回の主人公は鈍いわへタレだわハト臭いわでもう面倒が大変。

「どうでもいいわ次行きましょ。舞台設定の説明をしてくれるかしら」



――それではルールを説明しましょう。

――こちらで用意しますのは1から6の数字が書かれたダイスが一つ。

――1〜3は白。

――4〜6は黒。

――これから、城へ捕らわれの王子様を救いに行く道中。各地点で振ったダイスの出目の結果に従って頂きます。

「ふうん? でも所詮、作者の権限でストーリーが作られていくんじゃないわけ」

――ええまあ、そうです。でもですね、実際に作者もダイスを振るんですよ。

「どういう事かしら?」

――白というのはハッピー、黒というのはバッドを意味します。もしエンディングでバッドの目を作者が出してしまったら、この物語の結末はバッド・エンディングで とってもダークに終わるという事です。いきなり王子がマフィアに撃たれる事もあるという事です。前触れもなく無理矢理に。ズドンギュン、くたばれと。

「ひどっ」

――全部の出目が小さければスムーズにハッピーで終わりますよ。いきなり石油を掘り当てたりとか。

「王子で石油王。最強ね」

――そしてこのストーリーも『ダイ』ではなく短く『ショウストーリー』に なっちゃいますねー。

「ダジャレ? オヤジギャグ注意」

――“おかしな”が狂った方に ならないように頑張りますね。ククク。

「それじゃ始めるわよ作者(無視)」



 向かうは森の中。“聖魔の森”と呼ばれ、人は滅多に近づかない。森全体に魔力が かけられ、気の弱い者は それにヤラれてしまう。聖者と悪魔が魔力の回復などで立ち寄る場所。

 その森を抜けないと城へは辿り着けないという。


――さて。行ってみます? 行くならダイスを振って下さいな。この後の展開が白か黒か。

「振るのね。ダイスは何処」

――あなたの思い出のワインの中に。

「ふざけてないで早く おっしゃい」

――ううんツレナイ。じゃあその手の枕の中。

「私いつから枕を持ってたのよ。って何で枕なんか」

――いつでも寝られるようにとの配慮だったんですけどね。

「いらない いらない。とにかく この中ね」

――気をつけて下さいね。魔物と金の亡者どもが狙ってます。純金製なんで。

「どっちが? 枕が? ダイスが?」

――えーと。あなたの服装が。金のローブ。

「ちょっと! うっとうしいから止めて!」

――まあ、いいから とっとと振って下さい。白か黒か。

「全く……ソレ、っと」


 鈴木京子はダイスを振った。すなわち実際に作者も振る。コロコロと……転がり、ピタリと落ち着いたダイスの出目は『6』だった。


――バーッドッ!

「うっわ……どうなんの」

――オヤ、地響きが。「何?」


 ドドドドド。森の奥から何かが集団で近づいて来る。

 やがて音は大きく、そのもの達の正体は明らかになっていった。

 その正体とは。


――牛。

「牛ぃっ!?」


 モオォオオーッ。

 砂埃を数メートルもの高さにも舞い上げ、並列に何列も並んだ牛達が京子に迫って来る。

 近づく。京子に向かって直進して来た。

 ドドドドド。

 京子は巻き込まれていく。「いやああああっ!」

 しかし幸運か、牛達は皆、京子をかわして森の外へ外へと駆けて行ってしまった。

 モモオ〜ッ。


――見事だ。「言ってる場合か!」

――ああそうか。金のローブが いい防御効果を。「そんなバカな」

――今夜は牛鍋にする? 「好きにしなさいよ!」


 かくして、牛の群れは過ぎ去り、四つんばいになって息の調子を整える京子。「はあはあ……」


――まあ、無事で何より。

「バッドなのに生きてる……私、死ぬかと思ったのに」

――きっとバッドなのは牛達が向かった先の村の人達。

「何ーッ!?」

――いや もしくは村人に狩られて肉になった牛達の方かも。

「村人最強っ」

――見に行きたい?

「結構ですっ」

――せっかく腹ごしらえが できるかもなのに。「遠慮するっ」

――じゃあ森の中に入って下さいね。ダイス振りましたから。「はぁ〜……もう」


 森の中へと歩を進める京子。小鳥達は何事も無かったかのように可愛い声で鳴き、木々や葉の隙間からは朝の光が差しこめてくる。

「今、朝だったんだ。清々しいはずだったのに」

 すると、一人の少女が木のウロの側でシクシクと座り込んで泣いていた。

「アラ。どうしたのかしら?」


――話しかけてみますか? 話しかけるならダイスを。素通りなら振りません。

「うーん。放って行っちゃおうかしら」

――非道ですね。地獄に堕ちて下さい。「何で そこまで言われなきゃいけないわけっ」

――どうしますか? それでもあなたはダイスを振るのを拒みますかオーイエー、クソヤロウ。

「何でアーメン口調なのよ……仕方ない、振るわ」

――はい。頑張って。

「ソレっ」


 コロコロコロ……。少女の足元まで転がって、出た目は『3』。


――オヤでは まともな展開を。


 京子は少女に話しかけた。「もしもし。どうしたの?」

 少女は伏せていた顔を上げ京子を見た。とても可愛いクリクリした大きな目と、ほの赤い ほっぺたを見せる。


――危うく穴の開いた目に血まみれの ほっぺたと ご対面でしたね。あーヨカッタ。

「ほんと……で、どうしたのかしら? こんな所に座り込んで」

 少女は答えた。

「おじいさんが病気になってしまったの。薬草を採りに来たけど、足をくじいてしまって……」

 見ると、少女の側には少しの野草が入った手提げのカゴが。京子は それを見て優しく少女の肩に触れる。

「もう大丈夫よ。おうちまで送っていってあげる」

 そしてニッコリと笑いかけた。


――笑顔の大安売り。「失礼ね」

――嘘うそ。意外な一面。さすが白の展開。それでは。

「ん? 何?」

――急展開。魔物登場。「はあぁ!?」

――ダイス振って下さ〜い。「全くもおぉ!」

――コンコロリン♪


 作者、調子にのって2階からダイス投げ。「目薬じゃあるまいし……」

 出た目は……ダダダダダ(1階まで走る音)。「面倒臭い事するからよ もう」


――はーはー。『6』ですね。グハゴフッガハッ。「だ、大丈夫 作者……ゲゲッ!」

――く、黒どうぞ。



 何も無い所から突然に黒い煙が発生し、それは2メートル以上の高さになって煙の中から悪魔は姿を現す。

「悪魔ああっ!?」

――そう。魔物は魔物でも悪魔系。「系、って」

 その者は人の形を成していた。「人間!?」

 ジャジャーン。



「おじいさん!」



 少女が目を丸くして指をさし叫ぶ。

「何ですってえ!?」

――バッドですから。

 姿を現した老人はユラリと上体を前後左右に揺らし、目は虚ろで血走り顔は血色無く青白く、歯をむき出し、おぼつかない足取りで一歩一歩と京子達に近づいて来る。

 肩には黒いボンヤリとした小さな影が。


――作者からヒント。肩にのってるのが悪魔。

「ヒントっていうか まんまじゃないのっ」

――じゃあ頑張って倒して下さいね。

「って、どうやってやっつけるのよ! ダイスは無いの、ダイス! 何で肝心な時に」

――振りたいんですかあ? 「振るわよ! 早く!」


 コロコロコロ。出目は『6』。


「嫌あああああッ!」

――ツキ無いですねー。死んでも知りませんよ。「知るかあッ!」

――せっかくのチャンスも空しく、作者が出しかけていたスピリチュアルの粉は風に飛ばされサヨウナラ。

「何よソレ、用意してたものって」

――スピリチュアルの粉。ふりかけると改心して天国へ昇れるようになるんですけどね。

「天国って。悪魔はいいけど おじいさんも行ってしまうんじゃ」

――それじゃある意味バッドで よかったですね。まあそれはそれとして。この後はバッドね。

「きゃああああ!」


 おじいさんの攻撃!

「キシャーッ!」

 老人は奇声を上げながら、持っていた幼い孫の総一郎で京子に襲いかかる。

「武器が孫かいっ」

 まるで野球のバッドのように両足を閉じて持って逆さ吊りだった。「ヒドいぃ!!」

――バッドですから。

 サッと、おじいさんの攻撃を横へと受け流す京子。

「総ちゃん!」

 足をくじいて立ち上がれない少女は また叫び、手をついてでも立ち上がろうと必死に努めていた。しかし立つ事は できずにいた。

「そうか……! 孫、って事は要するに あの子の弟……?」

 京子は激しく怒りを覚える。

 老人に とり憑く悪魔を睨み「作者! ダイスを!」と作者を呼んだ。

――アラご指名? どうしました?

「ダイスを! あいつを やっつけるわ! ってか、孫! 孫!! 何とかして!」

――そうですね。こんな展開、クレームが きそうですし。対応センター作らないと。

「いいから先にダイス!」

――はいはい。ではでは、ホレ、っと。


 コロコロコ……ロ。


「出目は何!?」

――京子は願った。白よ出ろ、と。全財産 身ぐるみ着ぐるみ はがされ晒され裸踊りも構わないから出ろ、と。「思ってない思ってない」


 出目は……。


――『1』。白ですよ、おめでとう。

「よっしゃあああッ!」

 京子、ガッツポーズをして展開を見守る。


 京子の すぐ側に、白い煙が突如出現した。「!?」

 煙の中から現れたのは……。



「やあ。初めましてキョウコ」



 甘いマスクと声でクスリと笑う謎のイケメン。好奇な、いや、高貴なオーラを全身から放つ。

 テオトナルド国 第一王子・カール=デ=二パルソン。年は17。

 捕らえられていたはずの王子が、颯爽(さっそう)と登場する。

「えええええっ!?」

 京子と少女、あまりの驚きとオーラの強さに身を数歩退き後ずさる。

 カール王子はバサリと白のマントを翻し、手に持つ由緒正しき聖剣スピリチュアル・ソードを腰から抜きとり、目の前の敵へと体勢をとった。

「スピリチュアルが はやっているの?」

 そう言いながら京子は肩をすくめた。

 鋭く光る剣先が、そのものの斬れ味を示している。

 王子は自信と余裕たっぷりに悪魔と老人と孫に向かって言った。

「おのれ邪なる者。わたしの剣で本来いるべき所へと還してやろう」


 作者が吠える。

――ヒュウ。カッコイ〜! 実際居たら後ろから蹴飛ばしたーい。

「何て事を。それより王子様、何故ココに。捕らわれていたのでは?」

 京子は不思議に思って王子に問いを投げかける。

「ああそうだね。幻の洋菓子・アーモンドシェルという素晴らしい産物の虜になってしまっていてね。危うく実務を忘れて城から外へ出られなくなる所だったよ。呼び出してくれて ありがとうレディ達」

 パチリと、ウィンクを投げかけた。

 それを受け、京子は ともかく少女は腰くだけた。「ウフン」そして「アハン」と。


 グガアァァァッ!!


 存在を忘れないでと、悪魔もとい老人は吠える。

 頼りない足取りでヨタヨタと、王子に近づいていく。

「天に召されよ!」

 王子のスピリチュアル・ソードが振り下ろされる! ザシュッ!


「ヴギャアアァァァアアッ!!」


 バサバサバサ! と周囲の鳥達が地鳴りのような呻き声に驚き、一斉に飛び立つ。同じく小動物も小さな足で集団となって逃げ出し駆け去る。

 長い悪魔の断末魔の叫びは、存在を薄くし影を失っていく。

 そして光と空気に溶け込むかのように消えた。

 数個のオーブが祝いのようにクルクルと宙に舞い遊んでいる。


――おお〜。ファンタジィ。

「感動してないで話を進めて作者」

――ちえ〜。この感動を一人でも多くの人に……ってまあいいか。じゃあラスト・ダイス!

「はっ!? ダイス振るの、こんな時に!?」

――王子も見つかったし、そろそろ終わりで。

「ああそっか。何だ つまんない」

――つまんない言いましたね。ウフフフフ。

「ちょっ……ま、まあいいわ。それじゃ最後よ!」

 半ばヤケクソでダイスを振る京子と、テレビで殺人事件を見ながらダイスを振る作者。

――モグモグモグ。じゃがりこ じゃがりこ。出目は『2』。白だよ、おめでとう。あ、おかみさんが殺された。

「ちょっと! そっちのテレビは関係ないでしょ! こっちに集中しなさい!」

――はーい。えーと、白だから。ホホイのホイ。

「え? 何が?」


 京子、少女、王子、それから悪魔と分離を果たせた老人と、地に倒れている孫。

 彼らの周りに そよ風が吹いた。


 空にはプカプカと陽気な雲が浮かび澄んだ青の空が京子達の上に広がって、遠くから暖かく乾いた空気を運んで来た。

 最初に そよ風だと思った風は段々と強くなって。しかし優しい風となって、京子達を くすぐるように包んでいく。野花の香りのような匂いを含み、それも徐々に濃くなって、少女がクシュンと くしゃみをした。


「気持ちのいい風だね。心が休んでいくようだ……」


 王子が微笑むと、遠くの妖精がフフフと、返事のように森中に こだました。

 見ると、正気に戻った老人と孫の総一郎が目を覚まして起き上がった。「何じゃココは」

 老人、正座する格好で まばたきを何度も何度も繰り返す。

「あれえ、ボク……どうしたんだろう?」

 隣に居た孫もポカンと尻をつきながら前を見ている。

「おじいさん! 総一郎!」

 家族、感動の再会。

 痛めた足を引きずりながらも、一生懸命に駆け寄り、抱き合って喜んだ。

――メデタシメデタシ。実は さっきのスピリチュアルの粉が飛んで返ってきたんだけどね。

「そっか。よかったよかった」

「ええ。そうね」

 王子と京子、再会の光景を前に互いに微笑みあった。


 これにて一件落着である。……




 ……




 ……なあんだ つまんない、ハッピーエンドかよと思いの、そこのあなた。

 一つお詫びをしよう。

 京子と同時に作者もダイスを振ると言った。それは本当である。


 しかし一度だけ結果に嘘をついた。


 孫が こん棒になってしまった後のダイス。王子が現れるか否かの時だ。

 出目は1では無く『4』。死だ。

 本来なら王子など現れず、京子達に未来は無かっただろう。


 それでも あなたはバッドエンドを お望みか。望むのか?




 ……イエス?

 ……しょーがないなあ。ザシュッ(ぐはっ)。



《END》




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― 新着の感想 ―
[一言] またまた、斬新なアイディア、恐れ入ります。 読みやすかったです。てか、テレビ観ながら小説執筆とは、さすがのスキルです
[一言] さっそく見させていただきました。 1話に続いて、2話目もあゆみかんワールド(?)全開でしたねww 大いに吹かして頂きましたよ。 さて、 3話目も期待してますwww
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