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画竜点睛!

※勢いとノリ、それと2、3年前の短編残ってたのでせっかくなのでUPりました。


 世の中、生まれ変わって異世界!

なる話があるのを知ったのは、友人がきっかけだった。

友人曰く、ハーレム、美形、チート、面白い!

と鼻息荒く教えてくれたストーリーだが、なるほど、確かにそんな副産物的なものを持って生まれたら、とても楽しいに違いないと思った。人生経験値がないのとあるのとでは、容易に物事を進める格差があるだろうし、人生彩り豊かになるのは間違いなかった。

 ……と思ってた時期が、私にもありました。


 私もまた、例に漏れず、その転生トリップを承ってしまったようだ。


 気付けば、私は生まれ変わりを遂げ、見たこともない聞いたことのない、魔法や剣の溢れる世界に誕生してしまったらしい。

 ……らしい、と予測でしかないのは、私がいまだ赤ん坊であったから。

なんとはなしに、そんなものなんだろう、と推測している。

 ただの赤子がどれだけのことができるか。

美形の両親を眼福に、私はこれからの人生を馳せた。

 チート。

ありかも。

これからの実り豊かな人生を思い描いたとき、不肖私も、少なからず面白い生き方ができるかもしれないと、ニヤニヤ妄想していた友人を思い出していた。友人よ、元気に哺乳瓶、今日も飲み干してるぞ! 羨ましいか、ふはははは。


 ……なんて思ってた赤子も、いましたっけ。

ええ。

まぁ、そううまい具合に、人生って進まないもので。


 立て鏡がある。

そこに映っているのは、顔面偏差値が低すぎる女が佇んでいた。

いや、もう、この世の終わりじゃねーか、ってぐらいの岸壁顔が、しかめっ面して見詰めている。じっとり。こっちみんな。いや、私か。美形な両親に似ているのは、父の髪と母の目の色だけ。

 それも、前世と同じ黒だ。あまり変わり映えがしない。

 ……否、顔面偏差値を含めると、前世よりも容姿レベルはダウンしている。

 どういうこったよ。おい。神様よ、って悪態つきたくもなる。

おまけに付け加えると、少々動いただけで、筋肉が素晴らしくつきやすい肉体。

私の肉体力は、半端ない。

ムキムキ過ぎた。大の男一人ぐらい、お姫様だっこしたことがあるぐらいである。

この素晴らしい筋肉っぷり。服を身に着けたら気づきにくいが、触るとぱっつんぱっつん、鉄の塊を触っているがごとしである。

 ……といっても、悪いばかりじゃない。人助けには役立ったことがあるのだ。

まぁ、すごく、微妙な顔をされたことは、よく覚えている。周囲の反応もな!


 ということで、現在、就職活動中である。


 「我が娘よ、結婚という就職は……ごふっ」

 「嫌ですわ、お父様。

  そんなけったいなもの、あるはずもないじゃあありませんか」

 「ぐふっ……」

 「あらあら、お父様が大変なことになっていてよ」


 母上様が、そういいながら、崩れ落ちる父の背中をさすっている。


 「あ、いけない……、ついつい、四連撃が決まってしまいましたか……、

  失敬、お父様!」

 「……ほ、本当に失敬だな、我が娘よ……」


 はぁ、と嘆息しつつ、復活した父は、すっと立ち上がって、それでもまだ、背中への打撃が骨に染みるのか、少し前かがみになりつつソファにゆっくりと座る。隣に、母も連れ添って。

 居間に、静寂が戻る。


 「未だ、仕事を探しているのか……」


 頷くと、はぁ、と。母様のため息が響く。


 「とはいえ、難しいと思いますわ。

  どこぞの女子が、その唸る腕力に物言わせ、世界中の魔物を倒しつくし、

  果ては魔王、覇王、蛇帝王、邪悪王、魔帝……、

  ひとりでボッコボコにしてきたということですし……」

 「その勢いで、美形だっていう魔王のひとりでも担いで婿にすりゃいいのに、

  ごふん、ごふん、

  いやいや、違うぞ、我が娘よ、独り言だぞっ」

 「……はぁ、いいですよ、その通りですし」


 実際、チートにかまけて、やりすぎてしまった。


 「おかげで、恨まれまくってるし……」


 想像すればよかったのだ。

思わず天井を仰ぎ見た。


 「世界中暴れまわっていたので、気付きもしませんでしたが……、

  その国、その文化に根付く、王という存在。邪悪だとばかり思っていた、

  敵対国家ばかりでしたので、殴ることしか思っていませんでしたが、

  よくよく考えてみると、秩序を破壊するだけのアホでしたね、私……」

 「そうだな」


 遠慮なく同意するお父様にいらっとしたが、黙認する。

事実だしな。


 「あの馬鹿王に言われるがまま……、してやられました」


 キンキラした眩しい王子様然とした顔を思い出し、苦みを覚えた。


 「今からでも殴りに行こうか……」

 「そ、それはやめてくれ、一応、貴族なんだから、うち」

 「そうねぇ、お城を破壊するのはやめたほうがいいわ、賠償が大変よ」


 三者三様の言葉を紡いで、互いにはぁ、と。嘆息した。


 「とにかく、お父様。

  私のおかげで、この国が大きくなったのは事実です」

 「そうだな……」

 「そうねぇ」

 「お母様、何か褒美とかもらいにいったほうがいいですよね」

 「それもそうね」

 「お、おい……、またカチコミとかいうものをやるんじゃないだろうな」


 一応大臣なんだけど、という父の弱弱しい声は聞こえないふりをした。


 「ならば、お父様、私に仕事を!」

 「う、うーん……」

 「お父様!」

 「うーん」

 「前にカチコミに行ったら、

  破戒神の称号を厭味ったらしく貰ってしまいましたが、

  これ以上、あの馬鹿王になめられたくないのです。

  自信満々でご褒美貰えるかと思ったら、それだけだったし」

 「まぁ、我が国王陛下は、ケチだからな」

 「くそっ……やっぱり、カチコミに……」

 「やめてあげてください、我が娘よ……。

  あの王は、一筋縄ではいかないお方だ……」

 「それと、お父様の胃の負担を考えてあげて、ね?」

 「お母様……」


 くっ。

仕方ない……。

盛大に舌打ちして、顔を伏せた。

 ――――場所は変わって、王城。


 「あ、チェックメイト」

 「うああああ!」


そこには、キンキラ王子がジョブチェンジして国王になったケチん坊な王様と、魔王がチェスをしていた。

なんでも異国の文化大好き! な魔王推薦の勝負事、 とのことだが、説明を受けた国王は良く分からずとも、とりあえず勝利した。

 血の涙を流しながら、ハンカチを歯噛みしているのは美形と噂された魔王である。

確かに、彼は漆黒の闇を溶かしたような綺麗な髪を背中に垂らし、人間も容易にタラす容貌をしていた。実際、女を何人も侍らし、親御さんに娘を連れて帰ってきてくれ! と騎士駐屯所に苦情殺到の諸悪である。


 「くそ、なんで人間ごときに負けるのだ、余は、余は魔王だぞ……!」

 「初心者に負けるとは。ざまぁねぇな」

 「ぐぐぐ」


 そんな魔王、頬が真っ赤に腫れ上がっていた。

首には魔封じ。普通の人間と大した変わり映えのしない存在と成り果てていた。


 「そんなんだから、うちのメスゴリラに負けんだよ」

 「し、仕方なかろう!

  あ、あんな化け物、初代魔王の全盛期でも勝てる否かだった!」

 「……んなカッコ悪く人に指差すな」


 ぺし、っと払った国王。

キンキラ、と言われた通り、金髪で綺麗な緑の目をした王子様然とした姿で、彼の絵姿は一枚プレミアついて売れると巷の物産展では評判であった。


 「ううう、それでもって、人間の王に勝負を挑んだのに!

  どうして! 余が負けるのだ!」

 「弱ぇえからだろ」

 「身も蓋もない!」


 アホくさ、と大きく欠伸をしながら、国王はしゃきっと立ち上がる。

頭上には綺麗な星空が点滅していた。


 「さ、これにて一件落着!

  あのメスゴリラが破壊しつくした魔王城の弁済、チャラな」

 「うおおおお」

 「泣いても何も出ねぇから」


 じゃーな、なんて気軽に手を振って、騎士ががっちりと魔王を羽交い絞めにする。

余は魔王だぞー!

 なんて遠吠えを背景に、国王は葉巻をくわえて一服。


 「ふぅ……」


 魔王からの初めての勝利に酔いしれていた。

いや、酔っぱらっていないけど。


 「さぁて、これであのメスゴリラ、

  大人しくしてくれりゃーなぁ……。

  いい加減、嫁に貰ってやるのに」


 想像していた以上に、メスゴリラはふてぶてしく暴れまわってくれた。

お蔭で販路は広がり、平和条約締結に忙しい。

 うちには最終兵器メスゴリラがいるんだぞ!

 たったこれだけで、隣国敵国は竦み上がった。


 「……愛してる、って囁いたら、

  あのメスゴリラが怒髪天ついて殴ってくるのは目に見えてるしなぁ……」


 参った参った、なんて言いながらも。国王の口角は、上がりっぱなしである。


 「……もう少し、泳がしておくか」


 よし、と決めた国王。

葉巻を仕舞い込み、次なる策謀を練り上げるのであった。


主人公メス

ぶさいくな顔になって生まれた筋肉もりもりメスゴリラ。

悲しい。何故こうなったのか。切ない。

大の男をお姫様だっこしたことがあるぐらい、気合の入った力持ち。

強い。チート能力はあるのに、容姿は黄昏ている。


優しい国王陛下

王子時代、メスゴリラにお姫様だっこされた黒歴史のある人。

ギャグ要因でもあり、メスゴリラの幼馴染みでもあり、

理解者でもあるが、利用者でもある。婚約者が主人公だったりするが、

お姫様抱っこを根に持っているので、絶対に言わない。

箝口令まで敷いているという徹底ぶり。

仕事の斡旋と称し、国の軍事力として最大活用し続けている。


追記。

大臣の家には婚約者であることは内緒である。王の権限で機密事項という徹底ぶり。そのためメスゴリラが鼻息荒く婿を担いできても王の承認が得られないので結婚できません。教会に担いでも駄目です。司祭様の了承が得られません。猊下に婿殿(仮)を見せても「無理。スポンサー(王)様のご機嫌が……」などと言われごにょごにょされます。知らぬは大臣家ばかりなり。ちなみに、大臣家は代々マスコット的扱いを受けている伝統的な貴族家です。先祖にゴリラ的人類猿が誕生して王家に可愛がられていたんでしょう、多分。


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