盗賊「もぐら」
「おい、まだ着かないのか?」
バンダナを巻いた中年の男が声をあげる。
「そ、そうですね…」
きゃしゃな男がそれに答える。
「この辺の地中はさっぱりだな。」
中年の男はそういってタバコに火を付ける。
「や、やめてくださいよ。ここ、狭いんすから、火気厳禁っすよ。」
華奢な男はそう注意する。
彼らは有名な盗賊団である。と、いっても、有名なのには理由がある。
彼らの狙うものというのは、金持ちの持つ美術品が主である。金持ちの美術品といっても、不正なルートで、入手された歴史的にも価値のあるものだけ。それを盗み出し、そっと美術館の玄関においておくのだ。
彼らは、美術品の奪還と称し日々盗みを働いている。
「に、しても、地中からせめるってのはやっぱりつらいっすね」
華奢な男は何やら地上を見れるようなものに覗き込んで答える。
「ま、それが俺らのやり方だからな。」
火気厳禁と、言われたために、火のついてないタバコをくわえて中年の男は話す。
「ここら辺っすね」
「よし、いくか。」
「急速浮上!」
彼らの乗っている何かは地上に姿をみせる。
「さて、今夜もいただくとするか。」
「そうっすね」
今日も彼らは正義のために盗賊となる。