第四章 監視対象 (19)
更新再開しました。
しばらく時間が空く事もあると思いますが、今後ともよろしくお願いします。
二〇六五年七月二一日 みちびき標準時十時
宇宙ステーションみちびき航宙自衛軍大会議室
航宙自衛軍の大会議室もそうだが、事情を知る部署はどこも大騒ぎとなっていた。
それは既に箝口令でどうにかなる物ではなく、尾ひれが付いた噂まで出ている始末であり、ステーションに限って一部限定ではあるが、情報公開が行われることになるほどであった。
『しかし、映画やアニメに出てきた物とよく似た宇宙船がこれほどとは・・・・・・。それに艦載機まで確認されたのだろう?』
TV電話越しに、地上にいる幕僚本部と航宙自衛軍の大会議室にいる主要メンバーとで会議が行われているが、既にアメリカ側も脅威度の判定こそ異なってはいるが、情報が伝わっているために極秘の回線で通信は行っていない。とはいえ通常の方法では傍受不可能な方式で通信を行っており、通信回線を乗っ取りでもしない限りはこの会議の情報が他に漏れることもあり得ない。
「確認が出来ただけでも、日本のアニメや漫画に登場する宇宙船及びその艦載機が合計二一七種類。その他に海外の物まで含めますと、種類だけで四〇〇を超えます。数となると最低でも二〇〇〇。艦載機はこれに含まれておりません。そもそも距離的な問題で拡大が難しく、正確な数を把握できませんが」
渡辺義人中将は、さらに側に居た太田百合少将から資料を受け取ると、思わずその手が止まる。
「追加情報で、確定情報です。全長の異なる宇宙戦艦ヤマトと思われる艦が、最低でも八は確認されました。細部に微妙な違いがあるそうです。また同アニメに登場したアンドロメダ級と思われる艦は、五〇を超えます。ガンダム系ではホワイトベースと思われる形状の物が六、マゼラン級が二〇以上、サラミス級は数の判別が難しいようですが、少なく見積もって一〇〇はあるかと。しかも日に日に数が増えているとのことです。さらにスターウォーズのスターデストロイヤー級と思われる艦が五〇以上で・・・・・・この数字は間違いないのか?」
「間違いなら宜しいのですが」
太田は首を左右に振って答える事しか出来なかった。
「銀河英雄伝説という物に出てくる艦艇が、最低でも一〇〇〇以上。それぞれに搭載可能な艦載機等については、現在調査が行われているそうです。規模から推定するに、艦載機が最低でも・・・・・・一万? 何の冗談だ?」
再度太田を渡辺が見るが、真剣な顔をしているだけで、既にそこに答えが出ていた。
「とにかく現状では、我々が想定していた数の数百倍はあります。到底我々で何とかなるような数ではありません」
『資料はこちらに届き次第、こちらでも調べさせる。その手の事に詳しそうな者も多いだろうからな。それでだ。数に限りがある以上、我々もある程度数を用意せざるを得ない。しかし乗員の数は限られている。そこでだ。以前に伝えてあるD計画を発動させる』
画面越しに阿部聡統合幕僚長が言うと、渡辺を含む数人が唸る。
「しかしそれでは・・・・・・民間人を地上に降ろすのですか?」
『いや、それはまだだ。しかしそう遠くない時期に、避難させる必要があるかもしれない。地上が無理な場合は、月だ』
「月の受け入れ人数には限りがあります。それに前回の反乱」
『その件は別に考えよう。今は出来る事をしてもらうしかない。とにかく物資は可能な限りそちらにも送るし、人員もできるだけ早く送るように手配はする。それから、みちびきに第三種警戒態勢を軍だけで行って欲しい。特に通信系の再確認だ。我々に擬態しているのかどうなのかは分からないが、判別がすぐに出来ない以上は通信系だけでも確実にしたい。軍の限られた人員だけで行うリスクはあるが、軌道監視は地上からも行っている。周回軌道警備については、数を減らして構わない。総理にもそれは確認済みだ』
「分かりました。では、民間用ドックと港の七割を、我々が優先使用する事をすぐに伝えます。他にもやる事が増えましたが、相手が分かりませんので仕方ありませんね」
『そういう事だ。君らにばかり負担をかけてしまうが、我々では正直手出しが出来ない。何より相手が何をしたいのかも正直不明だ。しかし最悪の事態は想定して欲しい』
「それは自衛隊・・・・・・自衛軍に入った時から覚悟しています」
『無理ばかり言って済まない。また何かあればこちらからも連絡する』
そこで通信が切れる。同時に会議室に静寂が訪れた。
「君たち。これからは休みを返上してもらう事になりそうだ。D計画については、知らない者が大半だろう。資料が準備でき次第、すぐに配布する。まずはこのみちびきに『余計な物』がないか調べる事が先決だ。船外活動時間を守りつつ、すぐに作業に取り掛かってもらいたい」
渡辺の声で、全員が頷いた。
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