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太陽系戦争 (The Battle of Solar)  作者: 古加海 孝文
第一章 他人(ヒト)の造りしモノ
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第一章 他人(ヒト)の造りしモノ(11)

二〇六二年八月 種子島宇宙センター発射台近く


「今度の打ち上げは三機ですか。奴らは一体いくつ打ち上げるつもりなんですかね。今週だけで十五機打ち上げていますよ」

「それは、この種子島だけの話だ。他の宇宙施設でも、同じように打ち上げられているらしい。少なくとも、一週間で五十機は打ち上げているはずだ」

 今世紀初頭に起きた東日本大震災の後、ある程度の復興が終わってから沿岸部にロケット発射施設が複数建造された。今はそれらがフル稼働している。緯度的には本来打ち上げに適さない場所だが、居住施設を事実上作れなかった事と、近隣の漁業復興が遅れたため、再開発の一環として作られた発射基地。しかし、後から作られただけあって設備は最新だと聞いている。一つ異なるとすれば、種子島(ここ)と違い比較的小型の発射台である事。それでも、静止軌道に五トンの衛星を打ち上げるだけの能力を有するロケットを打ち上げ可能だ。

 緑の迷彩服に身を包み、周囲の森と溶け込むようにして、私ともう一人がいる。

 ほぼ完全に迷彩されているので、かなりの至近距離でなければ見つける事は出来ないだろう。対赤外線処理された服を着用しているので、そう簡単には赤外線探査をしても見つからないと信じたい。階級章や国籍を表すような物はない。英語で話していなければ、英語圏の者である事は分からないはずだ。それに、ここに近づく者はいないはず。何より、立ち入り禁止地区の中の森だ。ただし、見つかれば命の保証はない。例え同盟国といえども。対赤外線迷彩の他に、光学迷彩も行っているが、通用しているのか不安になる。

「しかも、基本エンジンのHⅣCに補助個体ロケットのSRB―DⅢを八つも搭載させている。HⅣC三基での静止軌道への積載能力が二十トンとされる。さらにSRB―DⅢを八つだから、軌道への運搬能力で言えば三十トンを超えるはずだ」

 おそらくそれ以上だろう。公式にはHⅣCのメインエンジンは三基、LE―10と発表されているが、発射の瞬間と航跡を観測する限りエンジンは四つ。赤外線センサーでも、これを裏付けている。

 この国の国民にも、メディア放送される際はエンジンが三基のロケットしか撮影していない。国民にすら非公開ということは、軍事的な意味合いが強いと考えるのが筋だ。そして、それは同盟国の我が国にすら秘匿されている。

 ただ、もしかしたら、エンジンはさらに中央にもう一基あるかもしれない。そこから推測すると、静止軌道に最低でも四十トンは打ち上げられるのではないかと思う。静止軌道でなければ、百トンを超えるかもしれない。公式発表はないので、想像するしかないのが歯がゆい。それに、私はロケットの専門家ではない。偵察が任務であり、正直ロケットについてはここに来る際に囓った程度だ。

 付け足せば、資源有効利用という名目で、二段目以降は全て宇宙空間で回収。軌道上に何隻もの回収船がいるという。

 日本の宇宙ステーション「みちびき」は、少なくとも主要な外観はほぼ完成しているし、今さらそこまで積極的に回収する理由がない。

 我が国アメリカでも、二段目は投棄して大気圏で燃やしている。他に何か理由があると考えるのが自然だ。わざわざ二段目を回収するメリットに、何かあるのだろうか?

「やはり、宇宙艦隊計画でしょうか?」

「だろうな。我々アメリカが保有しているように、日本(ここ)も保有するだろう。ただ、これだけ大量の打ち上げとなると、我々を超える能力を持つかもしれない」

 原因はいくつかある。その主たる原因は中国とロシアだ。

 この二カ国と日本は、今でこそ表面上は穏やかだが、実際は現在もまだ一触即発にある。第二次大戦以降、直接の戦争こそしていないものの領土問題などを抱えたままだ。それに、台湾海峡沖の事もある。

「我々を超える艦隊ですか。正直ゾッとしますね。この国は何を考えているのでしょうか? 我が国と以前この国は戦争をしましたが、また歴史を繰り返すのでしょうか?」

「それを判断するために、我々が監視し、それを上層部に報告する。だからこそ、我々は監視を続けなければならない」

 しかし、一週間も監視を続けたまま。明日には交代要員が来るとはいえ、見ているだけというのも歯がゆい。

 大体我々は、威力偵察を行い、場合によっては敵地奪還を任務にする部隊だ。確かに監視も重要な任務だが、この程度なら他の部隊でもなんとかなると思う。

「まあいいさ。我々は、与えられた任務を行うのみだ」

 そう言って、周囲に溶け込みながら双眼鏡に目を戻した。

毎回ご覧頂き有り難うございます。

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今後ともよろしくお願いします。

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