表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンドロック  作者: 中田 春
灰色のシンデレラ
9/115

リカ、かなり興奮する!! 今回の報酬は、ちょっと…スゴイぞ。



 バサバサと、まるで『魂』を揺さぶる心地よい音で我に返る。



 赤い。

 炎のように(あか)い。

 その存在は、今ではやはり珍しい。


 トリだ。


「あなたの羽をもらっていくね」


 そう言ってソーニャは膝を折ると

 地面に無造作に置かれたトリカゴの中にそっと手を伸ばし、

 落ちている真っ赤な一枚の羽を拾い上げる。


「イイ子ね」


 それが『怪物の羽』なんだろう。



「リカ、紹介します」



 大きなテーブルの向こうには

 のそのそと動く大きな影がある。

 そこに居たボサボサ頭の大男はソーニャと俺など

 気にもしないといった風に、かがみ込んで作業に没頭する。

 ソーニャも、それが当たり前のように言葉を続けた。



「“ムン”です」



 汗のにじんだ半袖シャツ。

 擦り切れた丈の短いジーンズを履いた大男は、ちらりとも振り向かない。

 口が利けないのだろうか?

 さっきの双子の片方も、そんなカンジだった。

 貧民地区・二番街(ベータ・ストリート)出身者に限り、そういうヤツは多い。



「ソイツが“怪物”の正体か」

「いいえ。“怪物”なんて、本当は存在しないんですよ。リカ、見てください。とってもキレイでしょう? これが『怪物の羽』です」



 先ほど拾い上げた、

 抜け落ちた一枚のトリの羽をソーニャは俺に見せる。



「“ヒクイドリ”です。燃え盛る地中のマグマを食べて、体が真っ赤になってしまったこの子は、もう自由に飛べません。でも、その代わりに強靭な足と、鋭い爪を手に入れた」



 確かに。

 手のひらには絶対に乗せたくないタイプだ。


「私たちと同じです」


 ソーニャはヒクイドリの羽をテーブルにそっと置くと、

 かがんだままピクリともしない大男の傍に寄った。



「気を悪くしないでくださいリカ、“ムン”は無口なんです。ずっとココに居ます」

「お前の家族は、コイツを知らないのか?」

「そうですね……私とルチと、シュウの三人だけ」

「この場所を知っているのも三人だけか?」

「はい。“ムン”がイヤがります。静かなほうがいいから」



 静か? 

 コレのどこが静かだ?


 真逆だ。ココは“うるさすぎる”。

 俺の真横には“大型の発電装置”があって

 絶え間ない空気の振動と、耳をつんざく稼働音が神経を逆なでする。

 それに異常に暑い。

 きっと天井に吊り下げられているアレも、

 スタンド式のアレもすべて〈陽光(ようこう)照明〉だ。

 

 〈陽光照明〉とは俺たちの頭上にある〈人工太陽〉の“小型”版。

 一般に普及する〈通常(つうじょう)照明〉とは比べ物にならないくらい

 高価なぜいたく品だ。未だに俺は、どんな効能があるのか知らない。


 “熱”を発するか否か――ただそれだけの違いと思っている。

 こんなところにずっと居られるヤツの気がしれない。

 俺はもうひとつだけ質問した。



「“ソイツ”は大人なのか?」



 するとソーニャは少しだけ考えて、「違う」とハッキリ言った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ