リカ、かなり興奮する!! 今回の報酬は、ちょっと…スゴイぞ。
バサバサと、まるで『魂』を揺さぶる心地よい音で我に返る。
赤い。
炎のように紅い。
その存在は、今ではやはり珍しい。
トリだ。
「あなたの羽をもらっていくね」
そう言ってソーニャは膝を折ると
地面に無造作に置かれたトリカゴの中にそっと手を伸ばし、
落ちている真っ赤な一枚の羽を拾い上げる。
「イイ子ね」
それが『怪物の羽』なんだろう。
「リカ、紹介します」
大きなテーブルの向こうには
のそのそと動く大きな影がある。
そこに居たボサボサ頭の大男はソーニャと俺など
気にもしないといった風に、かがみ込んで作業に没頭する。
ソーニャも、それが当たり前のように言葉を続けた。
「“ムン”です」
汗のにじんだ半袖シャツ。
擦り切れた丈の短いジーンズを履いた大男は、ちらりとも振り向かない。
口が利けないのだろうか?
さっきの双子の片方も、そんなカンジだった。
貧民地区・二番街出身者に限り、そういうヤツは多い。
「ソイツが“怪物”の正体か」
「いいえ。“怪物”なんて、本当は存在しないんですよ。リカ、見てください。とってもキレイでしょう? これが『怪物の羽』です」
先ほど拾い上げた、
抜け落ちた一枚のトリの羽をソーニャは俺に見せる。
「“ヒクイドリ”です。燃え盛る地中のマグマを食べて、体が真っ赤になってしまったこの子は、もう自由に飛べません。でも、その代わりに強靭な足と、鋭い爪を手に入れた」
確かに。
手のひらには絶対に乗せたくないタイプだ。
「私たちと同じです」
ソーニャはヒクイドリの羽をテーブルにそっと置くと、
かがんだままピクリともしない大男の傍に寄った。
「気を悪くしないでくださいリカ、“ムン”は無口なんです。ずっとココに居ます」
「お前の家族は、コイツを知らないのか?」
「そうですね……私とルチと、シュウの三人だけ」
「この場所を知っているのも三人だけか?」
「はい。“ムン”がイヤがります。静かなほうがいいから」
静か?
コレのどこが静かだ?
真逆だ。ココは“うるさすぎる”。
俺の真横には“大型の発電装置”があって
絶え間ない空気の振動と、耳をつんざく稼働音が神経を逆なでする。
それに異常に暑い。
きっと天井に吊り下げられているアレも、
スタンド式のアレもすべて〈陽光照明〉だ。
〈陽光照明〉とは俺たちの頭上にある〈人工太陽〉の“小型”版。
一般に普及する〈通常照明〉とは比べ物にならないくらい
高価なぜいたく品だ。未だに俺は、どんな効能があるのか知らない。
“熱”を発するか否か――ただそれだけの違いと思っている。
こんなところにずっと居られるヤツの気がしれない。
俺はもうひとつだけ質問した。
「“ソイツ”は大人なのか?」
するとソーニャは少しだけ考えて、「違う」とハッキリ言った。