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サンドロック  作者: 中田 春
灰色のシンデレラ
50/115

リカ、(フッ※楽)『超』ワルイ顔になってるよッ!!!!


 内装の高級感は演出だ。

 サラッと見積もったところ

 金貨を惜しげもなく消費したのはレンガを積んだ店の入り口だけ。

 まるでジョークのような“張りぼての城”の制作方法は

 型に流し込んで固めたコンクリート材をひとつひとつ組み合わせて

 ごく短時間で一気に完成させる。

 だから高度なテクニックは一切不要。

 マニュアル通りに組み立てれば、誰でも工作可能な手軽さがウリ。



 たぶんもっとも合計金額が高かったのは、

 つなぎの強力接着剤の代金だ。



 もちろんジョークだ。



「お話し中、失礼いたします」



 和やかなムードは毛ほどもない。

 男にとっては夢のような

 最高のエンターテイメント性に溢れるはずの異空間は

 なぜか殺伐とした雰囲気が支配していた。



 ふたりの間に座る(座らされている)

 金髪ショートカットの細身の女が、既に泣きそうだ。


「お食事をお持ちしました。チンしたダブルチーズ・ハンバーガーです」


 被ったシルクハットの下から

 その男たちをそっと覗く。



 黒服の稼ぎ頭“ビーデ=ロイヤー”

 【グリディア市役所】職員“ダグラス=シーバ”



 ようやく稼ぎ頭(エース)とご対面か。



「そこに置け」



 “ビーデ=ロイヤー”は目線で

 シャレた脚付きのガラステーブルを示す。

 テーブルの上には中身が半分の高級ワインと

 マスタードとケチャップがほんの少しだけ残る皿と

 簡単には持てそうにない大口のワイングラスがふたつ。

 ヤツらが口を付けたワイングラスは今の空気を如実に示すように

 距離が微妙に空いている。



()げ」



 ヤツがイラついているのは誰の目にも明らかだ。

 紳士的とはほど遠い乱暴な動作で

 大口のワイングラスが

 となりの金髪ショートカットの女に向けられる。



「こっちもだ」



 そッちの“食いしん坊”は久しぶり。

 沈みこむ巨体を面倒そうにソファーから起こすと

 大口のワイングラスの脚をグイと掴み、食いしん坊も女に向ける。



 泣きたくなる気持ちがよく分かる。

 板挟み状態の彼女の心境は、今すぐココから逃げ出したい気持ちで

 いっぱいだろう。このふたりの相手は辞退したい。



 ヘルプが必要だな。


「新しい“オンナ”を用意しました」


 そっと耳打ち。


 ダブルチーズ・ハンバーガーをテーブルに置いた後で

 空いた皿をスマートに回収し、ビーデ=ロイヤーの後ろに回る。


「お連れしてよろしいでしょうか?」


 黒いシルクハットとサングラスに隠れた俺の顔を

 数秒そこからジロジロしたビーデ=ロイヤーは

 となりで泣きそうな女を見る。

 たった今、顔立ちを把握したような素振りだ。

 この場に彼女が居ることはヤツにとって

 それほど重要ではないのだろう。


 やがてワイングラスを置き、ビーデ=ロイヤーは黙ってうなずいた。



「入れ」



 俺の号令の数秒後――

 丁寧な仕事の木製フレームが巡らされる

 アンティークな部屋のドアがゆっくりと動く。



 こういう時の俺は、“スゴクワルイ顔”をするそうだ。




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