リカ、(フッ※楽)『超』ワルイ顔になってるよッ!!!!
内装の高級感は演出だ。
サラッと見積もったところ
金貨を惜しげもなく消費したのはレンガを積んだ店の入り口だけ。
まるでジョークのような“張りぼての城”の制作方法は
型に流し込んで固めたコンクリート材をひとつひとつ組み合わせて
ごく短時間で一気に完成させる。
だから高度なテクニックは一切不要。
マニュアル通りに組み立てれば、誰でも工作可能な手軽さがウリ。
たぶんもっとも合計金額が高かったのは、
つなぎの強力接着剤の代金だ。
もちろんジョークだ。
「お話し中、失礼いたします」
和やかなムードは毛ほどもない。
男にとっては夢のような
最高のエンターテイメント性に溢れるはずの異空間は
なぜか殺伐とした雰囲気が支配していた。
ふたりの間に座る(座らされている)
金髪ショートカットの細身の女が、既に泣きそうだ。
「お食事をお持ちしました。チンしたダブルチーズ・ハンバーガーです」
被ったシルクハットの下から
その男たちをそっと覗く。
黒服の稼ぎ頭“ビーデ=ロイヤー”
【グリディア市役所】職員“ダグラス=シーバ”
ようやく稼ぎ頭とご対面か。
「そこに置け」
“ビーデ=ロイヤー”は目線で
シャレた脚付きのガラステーブルを示す。
テーブルの上には中身が半分の高級ワインと
マスタードとケチャップがほんの少しだけ残る皿と
簡単には持てそうにない大口のワイングラスがふたつ。
ヤツらが口を付けたワイングラスは今の空気を如実に示すように
距離が微妙に空いている。
「注げ」
ヤツがイラついているのは誰の目にも明らかだ。
紳士的とはほど遠い乱暴な動作で
大口のワイングラスが
となりの金髪ショートカットの女に向けられる。
「こっちもだ」
そッちの“食いしん坊”は久しぶり。
沈みこむ巨体を面倒そうにソファーから起こすと
大口のワイングラスの脚をグイと掴み、食いしん坊も女に向ける。
泣きたくなる気持ちがよく分かる。
板挟み状態の彼女の心境は、今すぐココから逃げ出したい気持ちで
いっぱいだろう。このふたりの相手は辞退したい。
ヘルプが必要だな。
「新しい“オンナ”を用意しました」
そっと耳打ち。
ダブルチーズ・ハンバーガーをテーブルに置いた後で
空いた皿をスマートに回収し、ビーデ=ロイヤーの後ろに回る。
「お連れしてよろしいでしょうか?」
黒いシルクハットとサングラスに隠れた俺の顔を
数秒そこからジロジロしたビーデ=ロイヤーは
となりで泣きそうな女を見る。
たった今、顔立ちを把握したような素振りだ。
この場に彼女が居ることはヤツにとって
それほど重要ではないのだろう。
やがてワイングラスを置き、ビーデ=ロイヤーは黙ってうなずいた。
「入れ」
俺の号令の数秒後――
丁寧な仕事の木製フレームが巡らされる
アンティークな部屋のドアがゆっくりと動く。
こういう時の俺は、“スゴクワルイ顔”をするそうだ。




