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サンドロック  作者: 中田 春
灰色のシンデレラ
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リカ、さらに地下へッ!!!!


 この不思議な芳香は、ろ過剤の匂いらしい。


 どうどうと絶えることのない激しい水流は

 これから最終処理場でキレイになった後で

 俺たちの元へ再分配されると聞く。


 今、俺とソーニャが歩いているのは【第一期・上水道跡地】を

 最先端技術で改修して生まれ変わった【第三期・新上水道】という、

 『超』ホットな最新スポットだそうな。

 すべては前を歩く美少女から聞いた話である。



 携帯用の小型ペンライトを手に、

 ソーニャは先ほどから歩みを、ピタリピタリと止める。

 その場に深くかがみ込み

 つるりとした質感のコンクリート壁を丁寧に触っては、

 また少しだけ歩いて壁際を探る。


 どうやら大きく丸く空けられた壁の空洞を熱心に調べているようだ。

 構内に備え付けられた青色の〈通常照明〉が等間隔に

 灯っているものの、水道全体は薄暗い。

 小さなペンライトの光だけがまるで生き物のように素早く上下する。



「さっきから、なにをしている?」

「目印を探しています」

「ココはお前の家じゃないのか? それとも庭か、玄関か?」

「リカ、どれも正解です。でもこれは本当に、とっても大切な作業なの。もしも間違えて“別の扉”を開いてしまったら、もう二度と戻ってこられない。私の家族に“そうなってしまった子”が実際に居ます」


 そうなってしまった子――


 なんだか表現が穏やかじゃない。

 ソーニャの家のおとなりさんは、社交的ではないらしい。

 貧民地区・二番街(ベータ・ストリート)ではよくあることだ。



「とても悲しい出来事でした。二度と“あんなこと”は起こってほしくない」



 ああそんな気がする。

 詳しいことは知らないが、なぜか想像できるんだ。

 水に流しちゃいけない話ってあるよな。

 きっと最終処理場だって、ろ過できない。



 表札と住所が合うかどうか入念に確かめた後で、

 ソーニャと俺は『穴』に落ちた。




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