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伊藤計劃以後の世界

作者: オダ

 一日目。

 虐殺器官を読んだ。

 

 二日目。

 METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTSを読んだ。

 

 三日目。

 The Indifference Engineを読んだ。

 

 四日目。

 ハーモニーを読んだ。

 

 三十九日目。

 ありがとうございました。さようなら。

 

 以上で今回公表された「遺体発見現場から回収されたタブレット型端末の中に残っていたワードファイル」は終わっている。公表内容によれば、このファイル以外のデータは完全に消去されていた。

 三日前に発見された遺体の死因は餓死。発見当時、遺体は湯の張られていないユニットバスのバスタブ内で体育座りのような姿勢で収まっていた。


 体育座り、体育座りときた、次はなんだろうな。布団にへばりついて蛆が湧いたやつなんざもう見飽きたし、死体一歩手前の餓鬼みてえなのを見つけて更生施設にぶち込むのもうんざりだ。だってのに、もう嫌気が差してしょうがねえのに呼び出しはひっきりなしにかかってくる。こんなんじゃそろそろこっちに死人が出てもおかしくねえ。現に二課のあいつは三日前から職場に来てねえ。くそが、伊藤計劃読んだからってなんで死ぬんだ。おかしいだろ。どいつもこいつも似たり寄ったりのもん書き残して、遺書のつもりか。ありがとーなんて残せば満足なのかよ、それじゃただの馬鹿だろうが。そもそもお前らにとって伊藤計劃の本はそういうもんだってのか。ならしょうがねえ。勝手に死んでろ。こうしてくだ巻いてるときでも耳の中では呼び出し音が鳴ってる。はろーはろー御用はなぁに。上司の怒声、今日やることは済ましたはずだからサボりじゃねえよ。また怒声、新しい死体、今度は首つり、伊藤計劃は関係なかった、なんだそりゃ、今更そんなわかり切ったこと。怒声、早く行け、へいへい行きます行きます。今日も元気に死体の後処理させていただきます。呼び出し音のあとは怒鳴り声しか流さなくなったもんのスイッチを切って、ジャケットを羽織ったらつまんねえ仕事をするために部屋を出る。出勤だ。と思ったけど、現場へ行く前にダウナー入ってる二課のあいつもちょっと説教がてら捕まえていくか。


 お前のしょうもない悩みは根っこの理由から間違ってるんだって、蹴り飛ばしながら教えてやる。

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