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紅ずきんさん

作者: 夏雪冬華

むかしむかし、あるところに

紅ずきんさんという女の子がおりました。


紅ずきんさんはいつも血のように真っ赤なずきんを被っていました。

見た目はかわいい女の子なのに、

ある時、紅ずきんさんのお家に強盗が入り、紅ずきんさんの家族は皆殺しにされてしまいました。

そのとき、運よく紅ずきんさんだけが生き残りましたが、強盗たちはみな逃げていった後でした。

ですが、まだ白いずきんを被っていたはずの紅ずきんさんもその後、行方が分からなくなってしまいました。

しばらくして、紅ずきんさんは帰ってきました。

そのときから、白いずきんだったのに、血のように真っ赤なずきんを被っていました。

後ろには大きな紅い袋を引きずっていましたが、袋にあいた小さな穴から、偶然、ぼとりとなにかが落ちました。

それをたまたま見てしまった村人でしたが、あまりの恐怖に口が聞けなくなってしまいました。

村人も村長も紅ずきんさんになにか言いたかったのですが、なぜか怖くてなにも言えずじまいでした。


それから、人々は畏敬の念を込め、彼女を紅ずきんちゃんではなく「さん」付けて呼ぶようになりました。


ある日のことです。

紅ずきんさんが出かけている間に、

村に狼たちが現れました。

狼たちは人々を襲い、金品を強奪し、娘たちを攫って行ってしまいました。


紅ずきんさんが村に帰ると、村は見る影もなく破壊つくされた後でした。

幸い、死人はでなかったものの、村人の多くは狼たちによって怪我を負わされてしまいました。


いつもはにこにこ可愛い笑顔の紅ずきんさんも、さすがにその惨状を見ては、笑ってはいられません。

すぐに村長のところに行きました。

憔悴しきった村長は紅ずきんの無事な姿にほっと安心しました。

なにせ村の娘たちは全員、狼たちに攫われてしまったのです。

ですが、娘たちのことが心配なのは変わりません。

早く助けないと、大変なことになってしまうでしょう。

村長はわらにもすがる思いで、紅ずきんになにがあったかを説明しました。

彼女なら、あるいは、なんとかしてくれると思ったのです。


強盗事件で家族を失った紅ずきんを、実の娘のようにかわいがってくれた村長や村人たちのことが大好きな紅ずきんにとって、村を襲った狼たちは許せませんでした。


さっそく紅ずきんは、手に武器を持ち、村を後にしました。

情けないことですが、みんな怪我をして他に動けるものがいなかったのです。


翌日、紅ずきんさんは無事な姿で帰ってきました、

娘たちもみんな元気です。

盗まれた金品も全部戻ってきました。

それと、狼の毛皮と、なにかの獣の肉もいくつか・・・

村人たちは大喜びで彼女らを迎えました。

しかし、その夜なにがあったのか、娘たちは誰一人として、語りたがりませんでした。

よほど、怖い思いをしたのだろうと、村人たちも無理に聞こうとはしませんでした。




それからしばらくして、村も徐々に元気を取り戻し、壊れた家屋も建て直し、以前の活気を取り戻しました。


再び、村に平和が訪れました。


ありがとう、紅ずきんさん。






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