第一章 遭遇
初投稿です!!
お見苦しい限りの作品ですが、読んでいただけると幸いです(^^)
第一章 遭遇
夢って何ですか?
退屈。
不意にそんな言葉が頭の中に浮かんだ。
顔を窓の方に向け、空を見る。
窓から見えたものは、さまざまな形の雲がゆっくりと漂っていくという普段と変わり映えしないものだった。
…退屈。
同じ言葉が再び頭をよぎった。
教室の窓際の列、一番後ろからひとつ前の席、何をしていてもばれたことがない。
ふいに、黒板の方に目を向けると先生が一生懸命にアメリカの独立について話している。
なぜこんなことをしているのだろう。
学生だから机に向かって勉強してなくてはいけないのか?…。
自分の疑問に答えを出したところで俺は立ち上がった。
「どうした?叶崎。」
俺が席を立ったのに気付き、先生が問いかけてきた。
メンドくせぇ。
そう思いながら、
「気分が悪いんで早退します。」
と一言答え、先生が何か言ってるのを無視して教室を出た。
さて、これからどうしようか。
…川でも見に行くか。
心の中でそう自問自答し、歩き出した。
学校を出てすぐのT字路を右に曲がり、商店街に出た。真昼間、普通なら主婦などが買い物をしていてもおかしくない時間帯。
しかし、この商店街には歩いている人は片手で数えるほどしかいない。
まぁ、仕方ないか。近くにデパートあるし。
…いつもこの道を通ると思うけど、何でこの商店街の人は客もいないのに店を出しているのだろう。
…。
あー、そういえば昔聞いたなぁー。
なんて言ってたかなぁー。
思い出そうと頭をフル回転させていると目的地に着いた。
川にはきれいな水が流れていて、ちらほら魚の姿も見える。
だからとって感動も何もないんだけど。
そんなことを思っていると、近くで遊んでいたのか、小さな男の子が「僕大きくなったらサッカー選手になるのが夢なんだよ!」と母親に言っているのが聞こえてきた。
その一言でここに来るまで思い出そうとしていたことの答えを思い出した。
そうだ、夢だからと言っていたのだ。
夢が叶えられるのはほんの一握りの人だけだというのに。
いや、叶ったとしても確実に幸せになれるというわけではないというのに。
あ~あ。Dremer(夢見る人)って大変だなぁ~。
夢なんて、クダラナイ、イミガナイ、ワカラナイ。
そんなものを思い描いてどうするっていうんだ。
それならいっそ……死んだ方がマシだ。
………退屈だな。またしてもそんなことを思った。
帰ろう。
再び覚えたその気持ちは素直に俺の足を自宅へと向かわせた。
「ただいま。」
家に入ると同時にそうつぶやく。
って何やってんだ俺。俺は一人暮らしじゃないか。
自分の行動を嘲笑していると、奥から
「おかえり~。」
という男の声が聞こえてきた。
「・・・・・・・・。」
予想外の出来事に思考も身体も正常に機能していなかった。
そして我に返り考える。ちょっと待った。
俺は一人暮らし、そこは確実だ。
彼女もいないしさっき聞こえてきた声は男のものだったしその線はない。
ということは、泥棒または不法侵入者のどちらか…。
しかし、普通泥棒が返事をするはずがないよな。
だとすると…。
状況を整理して玄関に置いてあった傘をとる。
とにかく捕まえなくては…。
腹をくくって、
「誰だテメェッ!!」
と声を荒げながら突入する。
そして落胆した。
いや落胆と言うのも可笑しいか。
しかし、身の危険を予感して出てきたのが呑気にお茶を飲んでいる男だったのだから、間違えてはいないのかもしれない。
しかも、「あっ!お邪魔してまっす。お茶飲みます?用意しますけど。」
とか聞いてくるし。
何はともあれとりあえず捕獲することにした。
「で?お前は何なんだ?」
先ほど捕まえた怪しい男に問いかける。
すると丁寧に、「初めまして!俺は世々来徒っていいまッス!16歳ッス。よろしくネ!!」
と自己紹介してきた。
「そういうこと聞いてんじゃねぇんだよ!このコソ泥野郎!!」
そうすかさずツッコむと、男は驚いたような顔をした。
その表情を見て、やっぱり泥棒か。
などと思った。だが、
「いや~、あなた思ったより馬鹿ッスね。何か泥棒に取られる物でも持ってるつもりだったんスか?なんて言うか~、自信過剰?」
どうやら驚いたのはそっちだったらしい。
しかし、今そんなことはどーでもいい。
とりあえずコイツは今、俺の怒りのスイッチを押したのだ。
そして数分後。
男はベランダに吊られていた。
「ちょッ!やめてッ!!降ろしてッ!!!」
男が喚く。しかしそんなことは想定内だ。
「じゃあ先ほどの俺への侮辱の言葉をすべて取り消せ。」
一応チャンスを与えてみた。
しかし、
「え~?だってさっきのはほんとの事だし。ってかアレでキレるとかどんだけ短気なんすかw、器小っせえー。プライド高っけぇー。
どーせそんなんだから一度も彼女いた事ないんでしょwww」
とか言っている。
さすがに仏の顔も三度までってヤツだ。
いや、二回しか侮辱されてないけどね。
とにかく限界だった。
「ねぇ、今すぐ降りたいか?」
笑顔で聞いてみた。
「そりゃもちッス。」
予想通りの答えが返ってくる。
「じゃあちょっと待ってて。」
そう言って台所からほうちょを持ち出し、男を吊るしている縄、もとい、命綱を切り始めた。
「ちょっ!待って!それ危ない!」
さすがに何をしようとしたのか分かったのか男が止めに入る。
しかし俺は手を止めずに切り続けた。
ここで止めれば男は確かに謝っただろう。
だが俺の怒りは限界値をとっくに超えていた。
そして紐の寿命が残り少しというところでわざと
「Good Bye!」
と極上スマイルで別れを告げた。
「あぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」
そうして男は落ちていった。
アーメン。
クリスチャンでもないし、落とした張本人だというのに心の中でそう唱え、ようやく邪魔者を排除した俺は寝ようとベッドに倒れこんだ。
その時、玄関のドアが開いた。
そこには先ほど落ちて行った男が縛られたままの形で血だらけになって立っていた。
「酷いッスよ!落とすなんて!」
開口一番男はそう訴えてきた。
そんな事はどうでもいい。
俺の部屋は二階にあり、受け身も取れないような奴が落ちたら普通死ぬはずなんだが…。
ってかそのつもりで落としたし。
「よく生きてたな~。」
無意識のうちにそんな言葉が口から出ていた。
「よく生きてたなじゃないッスよ!死ぬとこだったんすよ俺!?ってか、小説じゃなかったら死んでますよ!?あっ!普通は死ぬので良い子はマネしないでネ!」
「誰に話してんだよ!!」
「いやそれは読んでる読者様に、」
「やめろ!それは言うな!!」
男の世界観をぶっ壊しかねない発言に突っ込んでおいた。
「まぁ、それは置いといて、酷いもんッスよ。話も聞かないで落とすなんて。あんたの命にも関わってることだっていうのに。」
そう、ブツブツと不満を述べていた男の言葉に引っかかった。
俺の命に関わる?
「どういうことだ。」
不法侵入者の言うことなんて馬鹿馬鹿しいと思いつつも、気が付けば俺は再び男を問いただしていた。
その質問を待っていたのか、
「あっ!やっと聞く気になってくれたんスか?」
と、言って、水を得た魚のように語りだした。
「事の発端は三か月前ッス。いきなり俺の身体が透け初めたんスよ。」
「ちょっと待て!いやいやいや!有り得ない。有り得ないって!人体が透ける?どこの三流SF小説の設定だよ。」
「ココの三流SF小説ッス!」
「だからそういうことは言うな!!」
再び世界観をぶっ壊しかねない発言を止める。
「でも俺が言った、透けるってことはほんとっスよ。」
と、男が口を尖らせながら抗議してくる。
このまま俺が否定し続けていたら話が進みそうもないな。
そう思い、納得したふりをし、話の先を促す。
そしてまた男が話し出した。
「まぁ、信じられなくても仕方ないッス。ッ!!そうだ!今、何時っスか?」
と急な質問に驚き、まさか門限があるんで帰りますなんて言わないよな。
などとも思いながら、「三時四十二分」と自分の腕時計を見て答える。「じゃあそろそろ三十分くらい経ちますね~。あっ!後ろ向いててください!」そう言われ、意味が分からないまま男の言う通り後ろを向いた。
そして数分後。
「もういいッスよ!」
という男に声を掛けられ、
「いったい何がしたいんだ?」
と質問をしながら向き直ると、先程まで話していた男の首から上が消えていて、血だらけな服だけが目の前に座っていた。
「うわぁっ!」
突然目の前に広がったホラーな光景に思わず悲鳴を漏らす。
すると、
「大丈夫ッスか?」
と、目の前から心配そうな男の声が聞こえてきた。