何をあげようか
相変わらずの吹雪が、洞窟の外を吹き荒れています。
それを子守唄にして眠っていた白狼は、ふと、もふもふと背中に乗る二つの重みに気が付いてピンと耳を立てました。
もそりと体を起こし、くるりと振り返ります。
そして、白狼は目を丸くしました。
「……童や。何をやっておるかの? ぬしは」
背中に乗ったのは、子猫と小ウサギ。
小ウサギをひっぱり上げたのは子猫です。
「喰らうために獲って来たのだぞ、そやつは」
狼の牙で傷つけられたウサギを、子猫はずっとなめていました。
まだ小さいから、食べられないから、血でもなめていたのかと思いきや。
「獲物を心配するなどと。なんとまあ、ふがいない童よ……」
白狼は呆れてしまいました。
並べた前足の間に顔を乗せ、大きくため息をつきます。
「人の里の獣とは、こんなにも情けないものなのかえ」
それとも、人里の獣だから、人の食べ物しか知らぬのだろうか。
「仕方ない、人里は好まぬが……行って来るとしようかの」
白狼がそう言った途端、子猫がころころと喉を鳴らしました
どうやら白狼の行き先が、子猫にもわかったらしいのです。
「やれやれ、ほんに人里の物しか食べられぬのか。難儀よのう、待っておれ」
と、洞窟の隅の枯れ草を集め、そこに猫とウサギを降ろします。
そして、白狼は外に駆け出しました。
みるみるうちに、その巨体が仔狼にまで縮みます。
むっくりした足にも関わらず、その走る速さは突風のよう。
そうして白狼が村につくや否や、村人が大声をあげました。
小さな子狼の姿でも、その目で、神様だと理解できたからです。