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【序】 その産声は音も無く響く

 この物語はテンションが高くて困るという方がちょっと落ち着くときに使用される事を推奨します。嘘です。


 気落ちしてるときには読まない方がいいかもしれません。これは本当。

 

 更新は遅い可能性....大。


 以上を踏まえ,暇つぶしにどうぞ。






 体が重い。ここに至るまでの戦闘でもはや満身創痍。しかし,ここで戦いを終える訳には行かない。何故なら目の前にこの旅の目標がいるのだから。

 疲労で手が震えるのを意思の力でねじ伏せながら,味方の作ってくれた隙を無駄にしないように敵に最後の一閃を振り下ろした。

 敵。『魔王』と呼ばれた存在が夥しい血を吹き出す。その血は黒く,その存在が人以外の者であった事とその存在がもはや死を免れない事を確信させた。


 「はぁ・・・,はぁ。ついに・・・ついにやった。」 

 思わずため息ともつかない言葉を口に出すと同時に体が崩れ落ち膝をつく。

 「何故,何故この俺が殺されねばならぬ!」

 夥しい血で血溜まりを作りながらもさすがは魔王。まだ,意識を保っていた。

 「お前がこの世で殺戮を繰り返すからだ!お前のせいで何人の人が死んだと思っている!お前はこの世に存在してはいけないんだ!」

 ここに来るまでに多くの村々が田畑を焼かれ,すみかを奪われ,最悪殺される光景を見て来た。その罪を悔いながら死ぬが良い!

 「・・・存在が罪か。ならば人間も同罪だ!何故なら我を生み出したのも人間なのだからな!自分で自分の種族を殺せるのは人間だけだ。自身の過ちに気づかぬか,勇者!お前は利用されている!俺と同様に!」

 その慟哭は悲哀と憐憫に満ちていたが勇者はそれに気づかない。

 「命乞いとは見苦しいな!魔王ともあろう者がそのような言葉で俺を惑わし,助かろうとするとは!もういい,悔い改める時間をやろうと思ったが無駄なようだ。一息にとどめを刺す!」

 勇者は最後の力を振り絞り,全身の魔力を手に込め,魔王に向けて放った。勇者の手から放たれた光弾は魔王の体にぶつかると徐々にそれを消し飛ばしていった。

 「ふっ・・,これが結末か・・・。もう良い,後は自力でなんとかするがいい,人間。どうせ人が滅びるのも時間の問題だ。せいぜい達成感に浸るが良い!はっはっっはっはは・・・」

 こうして『魔王』はこの世から消えた。



 「・・・終わった。何もかも。これでやっと・・・」

 剣を杖になんとか立っていると後ろに気配がする。この気配は知っている。俺の剣の師匠であり,この世界での二人目の父親のように感じている。

 「シュウ。良くやったな・・・。」

 その言葉に思わず涙ぐみそうになるのをこらえていると,師匠は突然,剣を横に振り抜いた。その突然の攻撃に反射的に剣を斜めに立て,師匠の剣をそらす。しかし逸らしきれずに剣先が左目を裂く。

 一瞬の内に歓喜、驚愕という感情の波に飲まれ、その後にやって来たのは激痛だった。

 「ぐぁぁああああああ!」

 その声が自分のものとは信じられないくらいの絶叫。痛みで頭が割れそうだ。しかし、その痛みこそが今の状況を信じられない己を現実へと引き戻す最後の綱であった。

 「何故!何故です師匠!あぁ、痛い、痛いよ師匠!」

 「お前は死なねばならぬ。そのためだけに私はお前に同行したのだ。」

 その目には憎しみが写っていた。出会ってこのかた、そのような目で見られたことはなかった。

 「う、嘘ですよね、ゼオス師匠?あんたは俺に剣を教えてくれたじゃないか。俺に魔王を倒せって。それが俺の使命でそうすれば皆幸せになれるって。」

 左目からは血を右目からは涙を流しながら懇願するように少年はたずねた。その姿はとても勇者とは言えない姿であった。

 「嘘ではない。魔王を討ち、ここで死ぬことがお前の使命だ。その位してもらわなければ娘が浮かばれぬ。」

 男の手は震えており、剣のグリップが悲鳴を上げるように軋む。

 「む、娘?」

 「そうだ。お前をこの世界へ召喚する際に生贄になった可愛い我がいとし子だ。何故あのやさしい子がこのような男ために死なねばならぬ。」

 「生贄?」

 もはや視界すらかすんできており、オウム返しに言葉を重ねる。

 「異世界召喚には依り代が必要なのだ。その依り代には処女で心清らかな者が選ばれる。そこで召喚が成功すると同時に依り代はその者の運命を予言する。今回の依り代は娘で『この者、魔王を撃つがその後魔王となり、セントレア王国に災いを齎す。』と予言したのだ!そして勇者には依り代の血を与えて初めてこの世界になじむ。お前が勇者でさえなければ娘は死なずにすんだのだ!」

 勇者は目を見開き、口をだらしなく開け自分の師匠を見る。信じられないものを見るように見る。

 「・・・『今回』?これまで何人の人間が呼ばれた!勇者じゃなかった人間はどうした!」

 勇者こと、佐々木秀の体の奥からじわじわとあるものがこみ上げてくる。あえて名前をつけるなら『嫌悪感』であろうか。

 「人数など知るものか!勇者で無ければ用は無い。依り代の血を与えなければ三日で次元の差に耐え切れず消滅する。」

 勇者はこみ上げてきたものを外へ吐き出した。もう吐くものがなくなると胃液をはき始める。まるで自分に与えられたモノを外へ出そうとするように。


 「・・・お前ら,許さん!許さんぞ!人の命をなんだと思っていやがる!」

 体の奥から力が湧き出てくる。これは・・・怒りだ。剣を横に構え,己の師匠を正面に捉える。その目には師匠しか映っていなかった。

 「くらえぇえ!」

 勇者はゼオスに向かって走り出す。ゼオスまであと数歩という所で足を縫い付けられた。思わず下を見るとそれは矢だと知れた。

 「ミュラー,貴様!お前まで裏切るのか!」 

 銀色の髪を後ろに縛った男がニヤつきながら勇者を見ていた。

 「いやいや,報酬を倍額にするって言われたらどちらを選ぶかは分かるだろ?俺は傭兵なんだ,友情も金で買えるんだよ。」

 勇者はミュラーを睨みつけながら空いた左手で矢を抜き取った。抜き取る瞬間,苦悶の表情に染まる。その隙にゼオスが迫る。これをしゃがむ事でよける。これは足が動かないので下に避けるしか無かった苦肉の策であった。そして下からゼオスに剣を突き上げる。しかし,突き出した筈の剣は視界から消えた,右手ごと。

 「ぐぁあああィいいいいいっつううう!」

 勇者シュウの右手から大量の血が噴き出す。適切な止血を行わなければ死に至るであろう。シュウは右手の傷口を筋肉の収縮のみで無理矢理止血する。

 「やれやれ,よくまだそうのような芸当が出来ますね。やはり君は化け物ですよ。」

 暗闇が支配するこの城にあって輝きを放つ男はあきれたように呟く。

 「お前まで俺を裏切るのか!アレイスタァァァァ!」

 「君は危険な存在だ。君は生きているだけでこの世に混乱をもたらす。予言に関わらず僕はそう判断するね。」 

 「なら何故俺を召還したぁぁぁ。」

 「魔王を消す必要があったからさ。しかし,人間では敵う者はいなかったのでね。召還することにした。」

 「その過程で何人もの人間を犠牲にしたというのか!」

 「あぁ,彼らの犠牲は大変いい練習になったよ。おかげで召還の際に条件を指定できるようになった。」

 「条件?」

 「ああ,ごく簡単な条件しか設定できなかったけどね。それはね『思い込みが激しい奴』ってことなんだ。」

 「なん・・・だって?」

 「だから『思い込みが激しい奴』だって。君は『あなたは勇者です。悪い魔王をやっつけてくれ,見ず知らずの僕たちのために。もう元の世界には帰せないけどごめんね?でも困ってるんだ。もしかしたら死ぬかもしれないくらい危険だけどやってくれないか?』って言われて特攻してくれる奴なんてそうそういない。相当思い込みの激しい奴じゃないとね。」

 妙に芝居がかった動作でアレイスターは滔々と語った。

 「じゃっじゃあ魔王が悪いってのは嘘だったのか!」

 「嘘じゃないさ。ただ少し誇張して話したり,ここまでの道中,わざわざ魔物の被害の大きかった所を通って来たりはしたけどね。大変だったんだよ?それにしても君,途中で気づくでしょう,普通。それに僕,転移魔法使えるんだから国境までひとっ飛びで行けるのに行かなかった理由を『魔力の温存』ってだけで信じちゃうんだから君って本当に『理想的な勇者』だったよ。」 

 アレイスターは肩をすくめ首を振る。しかし,シュウはもう聞いていなかった。頭の中には一つの言葉しか思い浮かばなかった。

 「・・だ.」

 「ウ・だ」

 「ウソだ.」

 「ウソだ,ウソだ,ウソだ,ウソだ,ウソだぁぁぁ!こんなの現実なんかじゃない!」

 勇者の慟哭を聞いても誰も『嘘だ』とは言ってはくれなかった。叫び終わり下がっていた顔を上げると勇者の視界の端に一人の少女の姿が映った。


 「姫様!」 

 勇者の目には希望の光が射していた。その目は神を前にした敬虔な信者のようだった。しかしその目の先にいる者は小さく『ヒッ!』悲鳴を上げただけだった。

 「姫様!ここにいる反逆者どもを抹殺するご命令を!私の命はおそらく尽きますが出来うる限り道連れにする所存!どうかご許可を!」

 勇者は在りし日の誓いを思い出していた。共に良き国を作ろうという誓いを。しかし勇者の叫びに姫はただ首を振るばかりで何も答えようとしない。

 「姫は何もおっしゃらないよ。」 

 「何だと?貴様!姫に何をした!」

 「何も?ただ姫様にはある魔法をかけさせてもらっただけさ。」

 「魔法?」

 「姫が君に何かを伝えようとすると彼女のかわいい弟が見るも無惨な姿になる魔法さ。何そう難しい魔法じゃない。姫と王子は血縁関係にあるから連動魔法は簡単だ。」

 「下種が!」

 「僕だってこんな事をしたくはなかったさ。でも一応王族だから真実を告げたら怒っちゃってさぁ。いくら国の為に必要だっていっても聞かないし,終いには『私はこんな卑劣な事を許せません!勇者殿には真実をお話しします!』なんて王族にはあるまじき発言をするからさぁ。まったく割り切れってね。メンタリティが子供なんだから。だから王にも見放される。」

 「ま,まさか。王もご存知なのか?」

 「もちろんさ。勇者召還なんて国家事業,陛下がご存じない訳ないだろう?」

 その言葉を聞くや否や,勇者の方が小刻みに揺れ始めた。

 「はっ」

 「ははっ」

 「はははっは」

 「ははははっはは」

 「ははははははっはははぁあああ!」

 勇者の口角が左右に大きくつり上がり,その笑い声は城中を響かせた。

 「ついに狂ったか。」 

 「もう,もういい・・・。」

 そうして勇者はおもむろに剣を自身の心の臓に突き刺し,勇者の鼓動は永遠に停止した。


 「なに!」

 「どういうことだ!おい,こいつが自分で死んでも報酬は保証してくれんだろうな!」

 「予想していた展開で一番下らない展開になりましたね。絶望して自殺,ですか。」

 「そんな嘘,嘘でしょう?」

 姫が口に手を当てておののく。

 「何が『嘘』ですか。全部本当ですよ。貴方が彼よりも弟を選んだ事もね。しかし貴方も変な人ですね。人柱である勇者,病弱な王子。大切にする価値など無い者たちをかばうなんて。そんなだから王にも見放されるのです。しかし,安心してください。そんな貴方にも利用価値はあります。本国に帰ったら婚姻です,私と。」

 姫がびくっと体を震わせる。

 「王族との婚姻すれば王位継承権が発生しますからね。何,魔王討伐の功で資格は十分満たせます。」

 「・・・誰が貴方なんかと!」

 姫は鬼のような形相で睨みつける。

 「ふふふ,勇者召還の真実を知っている私を抱き込む事も込みで陛下は了承するさ!陛下はそういう計算の出来るお方だよ。」


 勇者の心臓は止まっていた。しかし,意識はあった。

(あぁ,死ぬのか俺は。) 

 そう考えた矢先,剣の柄が脈打つ。

 『お前は死ぬ気か。でも俺は死なねぇ!』

 魔王を切り裂いた剣が通常のままでいられるだろうか?否!しかも,ここに至る道中数百種,数万の魔物の血を浴びてきた剣である。もはや魔剣と化していたのである。

 剣は徐々に勇者の体に沈んでいき,最後にはすべて取り込まれた。


 四人が勇者から意識を逸らしたのはほんの30秒ほどであったろう。四人が再び勇者の存在を思い出した頃には勇者の体は起き上がっていた。

 「な,まだ立ち上がるというのか!」

 皆の顔に恐怖に染まる。それはそうだ心臓を貫かれた筈の人間が起き上がったのだから。

 切られた勇者の左目は煙をたてながら再生し,消し飛ばされた右腕の傷口から黒々とした太い腕が生えていた。

 皆が悲鳴を上げるよりも速く,アレイスターが光弾を放つ。アレイスターは感じていた。今全力で奴を打ち据えなければ勝機が無いと。この男には珍しく直感で行動した。そしてその判断は正しかったのである。その高速詠唱は既存の魔法技術の常識を遥かに凌駕していた。おそらく跡形も残らないだろうとその場にいた誰もが確信していた。しかし,それも煙の中に黒い陰を見つけるまでであった。

 煙が晴れるとだんだん現れるその姿に皆,目を見開いた。その姿はどんな物より醜悪であったから。

 右腕だけが黒く,やけに太い血管が浮き出ている。頭には三本の角が生え,膨張に耐えきれずにはじけた靴の下から露になった鋭い爪を備えた巨大な足。金色の左目がギョロギョロとせわしなく動く。

 誰かが呟いた。『・・・化け物』と。


 「どっちが化け物だよ。お前ら『人間』の方がよほど化け物だ。」

 皆,動けなかった。目の前の存在の威圧感が尋常でなかったからである。目が合った瞬間に生物としての格の違いを思い知らされる。

 「う,うわあぁっぁあ!」

 まず動き出したのはパニックに陥ったミュラーであった。ミュラーが名人芸の強弓を放つ。それも連射である。そこに矢の残りなど気にする様子など無かった。

 しかしすべてかざした右手の前にあらわれた見えない障壁に阻まれ体に届く事は無かった。最後の矢を放ったときにはミュラーの目の前にはすでに『化け物』がいた。化け物の巨大な手がミュラーの体を乱暴に掴み,壁際に押し付けた。

 「な,なあ。助けてくれよ。俺たち,友達だろ?」

 ミュラーの口の右端がヒクヒクと上下する。

 「あぁ,友達だ。」

 ミュラーの顔に歓喜が浮かぶ。

 「金より価値のない・・な!」

 ミュラーの体はただの肉片へと変わった。その血肉が降る中,音も無く『化け物』の後ろまで移動したゼオスが上段から袈裟懸けに斬りつける。その剣が『化け物』に食い込む。

しかし,剣は途中で止まり抜けなかった。

 「さすが師匠,気配の消し方が相変わらずお上手だ。」

 『化け物』が何事も無かったかのように首だけで振り向くと剣をあきらめ距離を取るとその剣を自分の肩口から抜き取った『化け物』がそれに迫り,横に剣を振り抜いた。ゼオスの首が天井高く飛び上がっていく光景はもはや滑稽であった。

 近づく靴音に振り返るとそこには微笑む姫がいた。

 「なんだ,ユーリア=セントレア。わざわざ殺されにきたか。まぁ,あんな鬼畜の花嫁になるなんざごめんか。」

 くつくつと『化け物』は笑う。彼は何を笑ったのだろうか。愚かな姫をか,こんな自分をか。そんな彼にただ彼女は首を振るだけであった。

 「・・・最後にも何も言ってくれないんだな,貴方は。」

 そうして無言のまま彼女の心臓を貫いた。彼女を貫通した腕で彼女の体を支え,左手で彼女の顔に触れようとすると彼女の背中から光の剣が出てきて『化け物』の体の中央を貫いた。

 「ははははは。やはり僕は天才だ。こんな所で布石が生きるとは!貴方が彼女に惚れるようにしむけた甲斐がありましたよ!隙を作るのに利用させていただきました。それではさようなら。」

 アレイスターが離れると光の剣はその輝きを増していった。『化け物』はユーリア姫の体を放り投げて遠ざけると光の剣は爆発した。

 「やったか!」

 アレイスターが爆煙が晴れて見た物は胸に大きな穴の空いた『化け物』だった。

 「くっくっくっっく。さすが僕だ。内側からの攻撃には弱いという予想がズバリ当たった。」

 『化け物』の体はゆっくりと地面に倒れ伏した。

 アレイスターは『化け物』が倒れるのを確認すると姫の死体に近づいた。

 「っち!囮にしか役に立たなかったな。これじゃあ,再生魔法も意味が無い。きれいな死体が出来上がるだけだ。ま,手柄を独り占めってことで良しとするか。」

 姫の体を足蹴にするとその場から転移魔法で移動した。


 化け物は瀕死であった。しかし,まだ死んではいなかった。化け物はもう意識が無く本能だけが体を支配していた。

 

 カラダ

 ニク

 チ

 タリナイ

 ムダ

 ハブク

 チイサク

 マダ

 タリナイ

 オギナウ

 クウ

 クウ

 クウ

 ノム

 チカクニ

 アル

 クウ

 クウ 


 化け物はずりずりと腕で体を引きずって目的の物を食べ尽くし,それでも足りなかったので城中の食える物をすべて食べた。


 それからどれほどの時が経ったか,化け物は目を覚ました。時間帯は夜で朽ちた城の隙間から月の光が差し込み思わず目を細める。

 「俺は・・・。」

 その声は幼く,自分の声で無いように感じたが確かに自分の発した筈の言葉であると不思議感じた。

 手を見ると鋭い爪をした小さい手が見えた。

 「なんだこれは?」

 それは赤い糸であった。それが髪の毛である事に気づく頃にはだいぶ時間が経っていた。

 「赤い・・・髪の毛?」

 それはこの世界では一つしか考えられない。セントレア王国の王族の証。王家の赤。震える手で赤い糸を探るとそこには元の世界でも写真でしか見た事の無い頭蓋骨があった。

 「うわああ!」

 頭蓋骨を思わず放り出し,手足を動かして高速で遠ざかる。そして自分の歯の奥に引っかかる異物に気づいた。

 それを手でほじくると,ひしゃげた金属が出てきた。

 「なんでこんな物が?」

 その金属は変形していたがどうやらリングのようでその裏にはこう書かれていた。

 『ユーリア=セントレア』

 化け物は声無き悲鳴を上げた。右目片方から涙が堰を切ったように溢れ出ていた。その小さな体から魔力が溢れ大気を震わす。

 化け物の人間であった頃の名残である黒い髪はショックでみるみる白く染まり,右目はみるみる金色に浸食された。こうして化け物は完全に『魔族』になった。


 ーセントレア国史書ー


神聖歴675年 勇者召還

   681年 勇者,魔王を討つもその身に浴びた魔王の血により乱心,

        同道した『英雄』アレイスターの手によって討ちとられる.


   690年 第一王子,病没

   693年 第二王子.自殺

   696年 コンラート=セントレア国王陛下,崩御

     同年 国王陛下の遺言により,皇太子不在のため『英雄』アレイスター,即位

   699年 北の魔境から強大な魔力波動を感知,新たな『魔王』の誕生

   700年 アレイスター=セントレア陛下,北の防壁に派兵。

     同年 アレイスター=セントレア陛下,体調不良の為,表に出る事が減る


 










見切り発車もいい所です^^


出て来た人物,二人を残して全滅させてしまいました。


貴重な文字数を使って殺してしまった。


なんてこった。

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