ワインのジャケ買い
ワインをジャケ買いした話。
『ジャケ買い』という言葉も、久しく聞いていない気がする。
要するに中身をよく知らないまま、パッケージや表紙のデザインに惹かれて購入することだ。
ダウンロード販売がまだ主流ではなかった頃、TSUTAYAでCDを探したり、ゲオでゲームを探したりしていた。
その際、デザインの良いものがあるとつい手に取ってしまい、そのままレジへ運んでしまう。それがジャケ買いだ。
自分の知らない新たなジャンルに出会える、素敵な選び方だと思う。
そういえば最近も小説のジャケ買いをしたし、振り返ってみると私は意外と日常的にジャケ買いをしている気がする。
今回はそんな私のジャケ買い遍歴の中から、少し珍しい「ワインをジャケ買いした話」をしようと思う。
皆さんは、ワインをどこで購入されるだろうか。
スーパーや酒屋はもちろん、最近は家電量販店なども品揃えが豊富で、選ぶだけでも楽しかったりする。
しかし、知らない銘柄のお酒を買うのはなかなか勇気がいるものだ。
金額的にも決して安いものではないし、万が一好みの味ではなかった時のショックが大きい。
料理に使えなくもないが、ボトル一本分となると使い切るのも一苦労だ。
そんな悩みを抱えていた頃、タイミングよく友人がワインの試飲会に招待してくれた。
それ以来、私は試飲会の場でしかワインを買わなくなってしまった。もともと浴びるほど飲む方でもないため、たまに開催される試飲会のサイクルが丁度良いのだ。
試飲会はだいたいホテルのパーティールームのような場所で開かれ、成金風の人から身なりの綺麗な人まで、実に様々な人々が集う。
友人が懇意にしているワイン問屋の主催で予約制となっており、時間通りに訪れると席へ案内され、いつもの担当さんが様々な銘柄を紹介してくれるという流れだ。
友人はワイン好きで知識も豊富だが、私はさっぱり詳しくない。
そのため、いつも友人や担当さんに一から教えてもらっている。
毎回、赤ワイン5種、白ワイン5種、ロゼや甘口5種ほどを試飲させてもらい、気に入ったものがあれば注文する。
以前はおちょこほどの小さなカップだったが、最近は規制も緩和され、ワイングラスで提供されるようになったのが地味に嬉しい。
「これが重めのワイン」「これがミネラル感強め」「これはまだ香りが開いていないもの」など、飲み比べることで知覚が整理され、理解が深まっていく。
1種類だけ出されても比較対象がないため、味の評価がしづらいからだろう。
友人の顔を立てて毎回数本は購入するのだが、私が専ら貴腐ワインばかり選ぶため、担当さんにはすっかり「甘口好きな客」として認識されているようだ。
そんなある日、普段の私ならまず選ばないような「重めの赤ワイン」がグラスに注がれた。
いつも通り物見遊山で味見をして、本命は最後に甘いヤツを頼もう――そう高を括っていたのだが、ここで話が変わった。
担当さんが手にしていたボトルに、思わず目が釘付けになったのだ。
深い色のガラスに描かれているのは、夜の海を進む一隻の船と、その航跡。そして上に広がる緻密な星座盤。
よく見ると、紙のラベルが貼られているわけではない。
尋ねてみると、ボトルに直接グラフィックが彫り込まれているのだという。
触らせてもらうと細やかな立体感があり、所有欲とコレクション心を猛烈に刺激してくる。
ワインのジャケ買いが成立した瞬間であった(ちなみに味も非常に飲みやすく美味だった)。
素敵な出会いをしたそのワインも、今ではすっかり空となり、部屋の片隅で静かに佇んでいる。
近いうちに格好の良いワインラックでも探してきて、部屋のインテリアとして飾ろうかと画策中である。
ご拝読いただきありがとうございました!
ちなみに本文で紹介した「ジャケ買いしたワイン」は、『Navigator Red Wine of Napa Valley 2020』というナパ・ヴァレー(アメリカ)の赤ワインです。
ボトルに直接彫られた彫刻のデザインが本当に美しく、飲み終わった後も飾っておきたくなる素晴らしいボトルでした。
また、私が試飲会でよく購入する「貴腐ワイン」というのは、特殊な菌の作用でぶどうの水分が抜け、甘みが極限まで濃縮された極甘口のワインです。
本当にブドウだけから作られたのか疑いたくなるほど、本当に蜂蜜の様に甘く、飲みすぎたら糖尿病まっしぐらです。
主にドイツの最高峰である「トロッケンベーレンアウスレーゼ」を好んで買っているのですが、近年は地球温暖化の影響で適切な貴腐ぶどうが育ちにくくなり
生産量が激減して非常に希少になっているのだとか……。
自然の奇跡が生み出す「極上の蜂蜜」のような味わいは、やはり格別です。
皆さんも「見た目や名前だけで選んだら当たりだった」というジャケ買いの思い出はありますでしょうか?ぜひ感想欄などで教えていただけると嬉しいです。




