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第97話:一ノ瀬保奈美

――緊張で胸がつぶれそうだった。

けれど、大統領はにっこりと笑って、私の花束を受け取ってくれた。

その瞬間、ふわりと両腕が伸びてきて、軽く抱きしめられる。


「……っ!」


驚きで息が止まりそうになったけど、その温かさに全身が震えた。

本当に優しくて、安心できて、ただただ嬉しかった。


(……よかった。ちゃんと渡せた……)


涙が出そうになるのを必死にこらえ、舞台を降りて直也さんのもとへ戻った。


※※※


そこには、少し泣き顔の亜紀さんと玲奈さん。

そして会社の偉い方々――社長さんや支社長さんまでが、立ち上がって私に拍手を送ってくれていた。


「えっ……そ、そんな……」

耳まで真っ赤になって、思わず俯いてしまう。

だって私は、ただ花束を渡しただけなのに。


でも、その時。


「保奈美、堂々としてたし、可愛かったぞ」


直也さんが、いつもの落ち着いた声でそう言ってくれた。

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり温かくなった。

あの大統領を前にしても堂々としていられたなんて……褒めてもらえるなんて。


「……ありがとうございます」

消え入りそうな声で答えながら、視線を上げる。


――その時、思い出したのだ。


花束を渡した直後、大統領が振り返って、ほんの一瞬だけ直也さんの方へサムアップをしていたことを。

近くにいた人しか気づかない、小さな仕草。

でも、確かに直也さんに向けられていた。


(……大統領は、直也さんこそ“本当の立役者”だって、そう伝えてたんだ……)


私は胸の奥がいっぱいになって、改めて誇らしく思った。

私の大切な人は、こんなにもすごい人なんだって。


でも――拍手を浴びるたびに、やっぱり私は恥ずかしくて。

「や、やめてください……!」と小さく両手を振ると、みんなが温かく笑ってくれた。


そんな光景の中、私は胸の奥でそっとつぶやいた。


(……大統領の優しさも嬉しかったけど、やっぱり一番嬉しいのは直也さんに褒めてもらえたことだな)


頬をほんのり染めながら、私はそう思っていた。


――式典が終わり、私たちが控え室に戻った直後のことだった。


スマホが、いきなり爆発したみたいに震え始めた。

「ピコンッ!」「ピコンピコンッ!」

通知の音が止まらない。


「え……?」

画面を覗いた瞬間、目が丸くなった。


【おい!ニュース見たよ!!】


【ちょ、朝の速報ニュースで映っていたんだけど!?】


【花束渡してたの保奈美じゃん!?!?】


【プリンセスすぎワロタ】


【世界デビューおめでとう】


一瞬で、クラスのグループチャットが炎上していた。

どうやら日本は朝。ちょうどテレビのワイドショーやニュース番組で、式典の様子が生中継されていたのだ。


「ひゃあっ……!」

思わず両手でスマホを落としそうになる。


(う、うそ……!?もう放送されちゃったの!?)


【動画保存した!】


【“Japanese Highschool Girl presents bouquet”ってテロップ出てたぞw】


【美人すぎてクラスの保奈美と一致しません】


【保奈美、実は王女だったの??】


「ち、違うからぁぁぁ!!」

思わず控え室のソファでジタバタしてしまった。


でもチャットは止まらない。

個別にも【どこにいるの!?】【隣にいた人だれ?超イケメン!!】と質問攻め。

既読がみるみる積み重なり、返信する余裕なんて全然なかった。


※※※


「ふふっ……やっぱり来たわね」

亜紀さんが横から画面を覗き込み、楽しそうに笑った。


「日本の朝のトップニュースですからね」

玲奈さんも落ち着いた口調で言うけれど、口元がにやけていた。


私は顔を真っ赤にして、スマホを抱え込んだ。

「うぅ……恥ずかしい……どうしよう……」


だけど心の奥では――。

ほんの少しだけ、誇らしかった。


(……だって。お義兄さんに“可愛かった”って言ってもらえたんだもん)


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