表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/105

第91話:宮本玲奈

――鏡の中に映った自分を見て、私は思わず息を呑んだ。


(……これ、私?)


ルイスの手が髪をすくい、仕上げのスプレーがふわりと舞った瞬間、そこに現れたのは――私が一度も見たことのない自分だった。

すっと通った輪郭、凛としたまなざし。

けれど怖いほど硬いわけじゃない。

どこか柔らかさを残しながら、「直也に安心感を与えたい」という私の願いそのものが形になっていた。


「Oh!Trust!これぞ“Trust”!」

ルイスが大仰に手を叩き、満足げに叫ぶ。


隣の亜紀さんもまた、目を丸くして鏡を見ていた。

強さと艶やかさを兼ね備えた表情。まさに“できる女”という言葉がそのまま絵になったような迫力。

彼女自身も思わず小さく笑い、「……すごい」と呟いていた。


「Yes!Power!これぞ“Power Woman”!」

ルイスは満足そうに両手を広げ、鏡越しにウィンクしてみせる。


――そして。


「さて……Last Princess!」

ルイスは一転して神妙な表情になり、保奈美ちゃんの前に立った。


彼女の柔らかな髪をすくい、指先でふわりと形を整えていく。

シルクのような黒髪が光を受け、天使の羽のように広がった。

まるで額縁に入った聖画のように、彼女が一段と光を放ち始めた瞬間――私も亜紀さんも、言葉を失った。


「……っ……」

保奈美ちゃん自身が鏡を見て、思わず口元を押さえる。


そこに映っていたのは、私たちが知っている“かわいい義妹”ではなかった。

それは――天から舞い降りた大天使。

どんなドレスも、どんな宝石も霞むような輝きを放つ存在。


ルイスが最後に、軽く肩へ手を置いた。

そして低く、しかし誇らしげに言った。


「You are… PRINCESS!」


その言葉に、保奈美ちゃんの瞳が揺れた。

緊張に縛られていた肩がほんの少し下がり、代わりに背筋が伸びる。

頬が赤くなりながらも、そこには確かに誇らしさが宿っていた。


(……そうだね。大統領に花束を渡すのは、まさしくプリンセスの役割だもの)


亜紀さんと私は、思わず目を見合わせ、同時に微笑んでしまった。

これなら大丈夫。

どれほど大きな舞台でも、彼女は堂々と立てる。


――残るは、プリンセスにふさわしいドレスの準備だけだ。

私たちの胸は、次の段取りに向けてさらに高鳴っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ