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第44話:一ノ瀬直也

「……ねぇ直也くん。保奈美ちゃんペンダントなんて、してたっけ?」

隣から、冷え冷えした声。


振り向くと、亜紀さんがにっこり笑っていた。目は笑ってない。

「ペンダントってね。“永遠の絆”を意味するんだって。ずっと一緒にいたいって。ねぇ? 直也くん?」


「……ぐっ」


とどめを刺すように玲奈が追撃する。

「しかも肌に直接触れるアクセサリーは、“特別な相手”って意味合いらしいですよ。“独占欲”“束縛”ってニュアンスも含まれるとか」

さらりと淡々とした口調。だが目が鋭い。


「ち、違う。誤解です。オレはそんな――」


「誤解?」

亜紀さんがすかさず首を傾げる。

「“永遠の絆”って意味合いは事実よ? 直也くんがプレゼントに込めたメッセージは何だったのかしら」


「そ、それは……守ってやりたいっていう――」


「はい、出ました“守ってやりたい”」

玲奈がすかさずメモでも取る勢いで突っ込む。

「それってつまり、“お前はオレのもの”ってやつですよね?」


「いやだからそういうんじゃ――」


「ふぅん……」

亜紀さんがじっと見つめてきた。

「でももし、私にプレゼントしてくれるなら全然構わないけど?」


「……は?」


「むしろ束縛して欲しいまである」

平然とそう言い放つ亜紀さん。


「ちょっ……」


玲奈まで腕を組んで頷く。

「私も構いませんよ? 独占したいとか、永遠の絆とか、全部受け止めますけど」


「……二人とも、楽しんでるでしょ」


二人は同時にニッコリ。

「「さぁ、どうでしょうね?」」


オレは頭を抱えた。

義妹ちゃんはチャットで炎上お祭り、隣では亜紀と玲奈がネチネチと追い詰めてくる。


――なんなんだこの地獄の板挟みは。


ただ一つ分かったことがある。

「ペンダントを贈る」という行為が、これほどまでに重い意味を背負っているとは……完全に想定外だった。


その時――。


「直也さん!」

義妹ちゃんがぱっと駆け寄ってきた。

スマホを胸の前にぎゅっと抱きしめ、目を輝かせている。


「すごいです! 友達がみんな大騒ぎで……『奇跡のツーショット!』って! それに――」


一呼吸おいて、ペンダントを指でそっと触れながら、にこっと笑った。

「直也さんが贈ってくださったペンダント……すごく似合ってるって、みんなが褒めてくれました。私もそう思います。すごく大切にしますね!」


……ぐっ。

心臓をわしづかみにされたみたいに、息が詰まる。


「に、似合ってるよ。本当に……似合ってるし……可愛いよ」

やっとのことでそう言葉を返すと、義妹ちゃんはさらに頬を赤くして、無邪気に笑った。


「ありがとう! 直也さん……」


背後から、ねっとりとした声。

「……“永遠の絆”だもんねぇ」

亜紀さん。


「“独占欲”もセットですよ」

玲奈。


もうダメだ。どこを向いても退路がない。


ただ一つ言えるのは――。

義妹ちゃんの笑顔とペンダントの輝きで、全ての疲れとストレスが一瞬で吹き飛んでしまったということだった。


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