第33話:エドワード・トリウミ
――その瞬間、アタシは悟ったのよ〜。
目の前に座るこの女の子……ただ者じゃないわって。
名前はホナミちゃん。まだ幼さを残した顔立ちなのに、瞳の奥に透き通った芯がある。ハリウッドの女優たちを何百人と手がけてきたアタシの直感が、強烈にビビビッと鳴ったの。
「さぁ〜、アナタを最高のダイヤモンドに磨き上げてあげるわよ!」
鏡越しににっこり笑ってみせると、ホナミちゃんは戸惑いながら小さく頷いた。
あぁ、この素直さ。伸びしろしかないじゃないの!
まずはシャンプー台へ。
「リラックスしてね〜、頭皮の血行を促すマッサージも兼ねてるから」
ハリウッドセレブだって骨抜きにするアタシのゴッドハンド。指先でリズムを刻みながら、余分な緊張を溶かしていく。ホナミちゃんの肩からふっと力が抜けていくのが分かる。
「ほら、ここ。耳の後ろから首筋にかけてのリンパを流すとね、顔のむくみが取れるのよ。お家でも出来るから覚えておきなさい」
「は、はい……!」
素直で可愛い返事。教え甲斐があるったらないわ。
ドライヤーを当てながら、次はカット。
柔らかい髪質を活かして、ナチュラルだけど華やぐようなレイヤーを。
「顔まわりの毛束はね、こうやって少しだけ前に落とすの。そうすると自然な小顔効果が出るのよ。鏡見てごらんなさい、ほら!」
「わ、本当だ……」
無邪気に驚くその声に、アタシのテンションも爆上がり。
そしてメイク。
「さぁ〜、ここからが勝負よ!」
ハリウッド女優たちがレッドカーペットに立つときにアタシがやる“必殺テク”。
まずはベース。厚塗りせず、光を操る。頬骨の下にシェーディングを入れて、鼻筋にはほんのりハイライト。ナチュラルなのに、ぐっと立体感が出る。
「ほら、ファンデーションはね、全部隠そうとしちゃダメ。肌の“呼吸”を残すの。そうすると透明感が増すのよ」
アイメイクはブラウンベースで自然に、でもまつ毛のラインを丁寧に埋める。
「目元はね、“盛る”んじゃなくて“際立たせる”。日本人の瞳は宝石みたいに綺麗なんだから」
リップはローズベージュ。清楚なのに華がある。
仕上げに艶を少し重ねて――ほら、鏡の中の彼女はもう、別人。
「……えっ!?」
ホナミちゃんが小さく息を呑んだ。
そうよ、自分でも気づいたのね。この変化に。
アタシは腰に手を当てて、わざと大げさに言ってやった。
「アナタ、ハリウッドデビュー間違いなしよ! 私が推薦すれば、明日にでもエージェントが群がってくるわ!」
「ええっ!? そ、そんなこと……」
顔を真っ赤にして両手を振るその仕草。あぁもう、可愛すぎるじゃないのよ!
外のラウンジでは連れの三人が待っているのね。
でも見せてあげないわ。
「完成まではお楽しみ〜!」
プロの仕事に途中経過はないの。仕上がってからこそ真の驚きがあるんだから。
アタシは最後にヘアアイロンをくるりと走らせ、柔らかなウェーブを描いた髪を肩に落とした。
光を受けて、まるで女神のオーラ。
「――出来たわよ」
鏡に映るその姿は、もはや少女ではないわ〜。
ダイヤモンドの原石が、今ダイヤモンドの輝きを発揮しはじめたのよ。
アタシ自身、胸が熱くなったわ。
「ホナミちゃん……アンタ、ほんとに素敵よ!」




