幸せ
真っ暗。
目を開けると何も無い空間が広がっていた。平衡に立っているのかも疑わしい。
『導師は天才最年少の神の子ですからね』
『あの歳で神の声が聞こえるらしいですな・・それはどの国のものよりも秀でている』
『我々の誇りだ』
大人の声が聞こえる、何人もの声・・すべてストネットを賛美する声
『最近景気がよくない・・それどころか治安も悪い』
『近頃は戦争ばかりで・・神に祈りはとどいていないのだろうか』
この空間の色が闇が・・濃くなった。
ストネットの力が衰退していく頃かな・・?
『導師は最近神の声が聞こえないと言う』
『もしや、ただの人の子と化したのか・・?』
『そういえば聞いたか?人質交換でつれてこられた姫が選んだ騎士が戦争に勝利をもたらしたらしい』
『おぉ、そういえば彼女は向こうでは聖女の地位についていたらしいな』
『わが国の聖女になってもらおう』
声が止んだ。
いや、小さい声で何かが聞こえる。
『導師はいかがする?』
『捨て置け、力の無い導師など、ただの子どもだ』
ストネット・・貴方が力を望んだ理由が良く分かったよ。
貴方は、見て欲しかったんだね。自分を・・
「貴女に何が分かる」
「ストネット・・」
何も無い空間に虚ろな目をしたストネットが現れた。
「なんの力も無いくせに、へらへらと楽しそうに笑って・・幸せそうな顔をして。貴女に何が分かるというのですか」
「わかるよ・・凄く分かる。・・アタシのことを『幸せそう』と言ってくれてありがとう」
「何故礼を言うのですか・・?」
うつむき加減だったストネットが顔を上げ、力なくユイを見た。
ユイは微笑んだ。
「私はどうやら不幸な生まれ……いや、かわいそうな境遇にあるらしい」
ユイは突如話し出した。
「父親は男色に走りオカマになったし、母親は叔父さんとできて外国に行っちゃったし、お姉ちゃんには彼氏を寝取られしかもアタシの学校の電話で『あたしは止めるって』勝手に行っちゃってあたしは退学になっちゃったてたし、お兄さんには家出したままだし、家はもう借金まみれだし、父方の祖父母はすでに他界してるし、母方の祖父母は縁切ったらしい……お友達はなんかいつの間にか仲悪くなってバラバラ・・先生はきっと私のこと嫌悪していたと思う、だって私にだけプリント回ってこないことがあったし・・」
「なんですか・・それ」
ユイは微笑んだ。
「あたしの人生だけど?続き言おうか?幸せの思い出のビー玉探したら異世界に飛んじゃって、初恋の人に会えたと思ったら色々拉致監禁殺されそうにはなるし・・っていうか死んじゃったし。はは」
苦笑いをするがストネットからは何の反応も無い、でも話は聞いているようだ。意外そうなのだろう。目が少し開いている。
「でもこんなアタシを貴方は幸せそうって言ったよね。それはきっと私が夢が叶ったってことだよ」
アタシの夢、どんな小さなものでもいい、どんなに他の人から見てちっぽけなものでもいい
「幸せになりたい。ソレがあたしの望み」
ありがとう。教えてくれて。気づかなければ逃げていってしまうものだから。
「なにが・・ありがとうだ!!なにが貴方の気持が分かるだ!!」
「うわ!?」
ストネットがユイに襲い掛かると首を絞めた。
「うぅ・・」
「偽善者め!貴女も苦しんだ身なら分かるでしょう!?いかにこの世界が憎いか!『使える』『使えない』で物事を測るものは、所詮人間なんですよ!!その人間を変えなければ・・いつまでたっても私は」
「誰にも見向き去れないって?」
「!?」
ユイはストネットの身体を蹴飛ばした。
ズズズズ・・ストネットの皮膚にすべての色を混ぜたような禍々しい渦が現れた。
「力を求めて、神になっても・・誰もあなたを見向きしない!」
【黙れ、人間などに・・何の力も無い人間なんぞに目をかけられたくなど無いわぁあああああああ】
赤褐色の腕が伸びてユイを捕まえようとうごめくがユイは早く駆け出した。
「言葉で説得しても、駄目みたいだね・・すこし反省してもらおうか!!」
剣を持ち直す。
【神たる私に・・傷を付けれると思うのかぁぁああ!!愚かなぁあああああああああああ】
「破ァァああああああああああああ!!」
【あああああああああああああああああああああああ】




