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手のひらをかざし


生まれた、ふっと力の抜ける腕にもうひとふんばりの力を入れて生まれた赤ちゃんを抱っこする。

あぁ、生まれてきてくれてありがとう。

温かい光がフッと胸に生まれたかのような、抱えていた不安が一気に流れ出て入ったかのような、兎に角何か良く分からない気持でユイは一杯になった。


お母さんになるって、こうゆうことなんだなぁ・・


ユイは愛しいわが子を抱いてしみじみ思った。


エイルがそーっと扉の向こうから顔を出した。ユイはあまりにも情けない行動をとるのでつい笑う。

っと、睨んでるから目をそらしとこうっと


「ユイ、赤ちゃん男の子なんだって?おめでとう」

「ありがとう、エイルさん」


カーミルは、ソファーで横になっていた。疲れたらしい。お産婦さんじゃないのによくしてくれたと思うよ、うん。


「名前どうするの?」

「まだ決めてないの、トリューに決めてもらおうかなって」

「なるほど、ていうか生きてるのあいつ?」

「・・・・さぁ」


あの日アーネットの加勢にいってくる、といった日から帰ってこない。ココ家じゃないけど・・

東雲国の末っ子さん・・名前なんていうんだろう?とにかく末っ子さんに匿ってもらっているとは聞いたけど・・。


「大丈夫かなぁ?」

「聞いた話によれば怪我しまくってるって、アーネットに関しては酷いけどアンタの旦那についてはまぁ、軽症ですってよ」

「そうなんだ?アーネットさん大丈夫かな」

「大丈夫だぁよー」


タルタンが赤ちゃんに「いない、いない、ばぁ」をしながら言った。


「ウィンター家の中で一番タフなんだよー」

「そうなんだ、良かった・・のかな?」

「そうだよ、もとはジョエルのせいなんだから」

「ジョエル、あたしの命狙ってる人?」

「そうだよー」


タルタンはコクコク頷いた。


「ふぁぁーこら、ユイ様お疲れなのですから会話は後になさい」

「あいよーじゃあまた」

「うん」


ユイは一眠りをすることにした。

眠りは深く深く、深いところまで落ちていく。



『素晴しいね、赤子が生まれたら死ぬと言われたのにもかかわらず、赤子を産み落とすとはねぇ』


・・悪魔?


『お前今目が覚めたら死ぬよ、お前の旦那も赤子を見ることなく死ぬだろうよ』


・・何故トリューも?


『アイツも俺と契約したのさ、ずっと昔に』


・・昔に?


『ストネットがお前を誤って連れてきたときにお前は旦那とであったろ?』


うん


『アイツも、のろいというものが見える力を持っていた、その力を対価に俺に契約を持ち出した。『ユイを助けてくれ』ってさ、だからストネットの力の及ばないようにしてもとの世界に戻した』


でも私は戻ってきた。


『その対価の期限切れさ、ストネットは毎日悪魔に恨みと祈りを捧げるからもう一度連れてきてやった』


え、アタシ連れてきたのあなただったの?


『間接的にはな、ついポロッとそのことを旦那に話したら、今度はユイが死なないようにしてくれと言い出した。でも対価なんてもう持ってないだろう?ってなったら差し出せるものは』


・・命


『ご名答』


トリュー・・あたしのために。なんて馬鹿な・・


『人間ってのは馬鹿なぐらいが丁度いいのさ。悪魔にとってはね』


・・死なないように、あたしに力を与えたの?


『そうだよ、現に今も生きてるだろ?力使い果たしてなきゃまだまだ生きれたさ』


・・・・。


『ショック?』


・・当たり前じゃないか、でも・・うん


『?』


未来を教えてくれてありがとう。今後のことを決めることができたよ。


『あ?』


目が覚めたらすぐ死ぬってことでしょう?だったらエイルさんたちを遠ざけないとね


『ふーん、ツッまんねー女』


悪かったね


『せいぜいお別れでもすればー?んじゃねー』


チカ・・


「まぶしい」


目が覚める。どうやら一日が経ったらしい。


「エイルさん。カーミルさん、タルタン」

「ん?」


珈琲片手にエイルはやってきた。


「カーミルなら帰ったわよ?仕事が忙しいのでってさ」

「そうなんだ、あ、お願いあるんだけどいいかな?」

「ん?」


赤ちゃんを抱き起こしエイルの腕に渡す。


「ちょっと赤ちゃんにいいっていう温泉があるらしいからいってきてくれない?ハイ、地図」

「今から?」

「うん、すぐのほうがいいって・・お願いできるかな?」

「いいけど」


良かった。


「タルタンはさ、何か果物沢山買ってきてくれない?」

「いいけどよーその間一人になるよー?ユイ」

「大丈夫」


できるだけ自然に微笑む。いや、何故だろう


「後はお願いね」



全く、恐怖を感じない






・・・・。


誰も居ない家の中をユイは一人で掃除した。意味は無いただなんとなく。部屋が寂しいので部屋に飾る花を摘みに庭に出た。

綺麗な花々が沢山咲いていた。


「ワー綺麗、けっこうとっちゃったけどいいかな?」


・・と


「ユイ・ティテスはお前か」

「・・・・ジョエルさん?」


赤い刃を片手に無常に見下した目を向ける女性。

カーミル七姉妹らしく桃色の髪の毛の色をしていた。


「答えろ」

「はい」


ユイは微笑んだ。


「私がユイです」


ジョエルの刃が動いた。

血が飛び散る。意識が薄らいだ。


「サヨウナラ、ユイ」


ジョエルの去っていく足が見える。

他は何も見えない。


あぁ


赤ちゃん、あたしの赤ちゃん。


どうか、生きて・・元気に・・そして平和と幸せの中で人生を過ごしてください・・。



手の平が自ずと空に向かって伸びる。

あぁ、いつだって空っぽだったこの手には、誰にも奪われない私の記憶が軌跡があるんだ。

それだけで、本当にあたしは・・


あたしは・・


あたし・・


・・。






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