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変え難い未来

 さらに月日は流れ、私は12歳となった

 身長はずいぶんと伸び、魔力の保持量もさらに倍以上に増えた

 おそらくだが、この街で私よりも魔力を保持しているものはいない そのレベルだ

 だが、正直これでは足りない


「 ミレ 準備はもうできたの?もうすぐ出るわよ 」

「 ああ、母さん。できてるよ。すぐにいく 」


 家の外に出た私は、街の風景を眺める


 もうすぐ…起こってしまうのか


 前回起こった 惨劇と記憶を重ねながら


 当時、12歳だった少年の私は、この街に何かが起こるなんて考えてすらいなかった

 それが起こった日でさえ、よく透き通った晴れやかな空でただ遊ぶことしか考えていなかった

 おそらく、街のみんなそうだったのだろう。いつも通り穏やかな日々が流れると思っていた。

 だから、突如やってきた魔物の軍勢に滅ぼされてしまったのだ


 この街のはるか北には、魔物が大量に生息する大陸 魔大陸が存在する

 名称はついているがそこに明確な境界はなく、日々魔物と人類での争いが起こっており、戦場が実質的な境界線ではあった

 なぜ、前回でこの街が滅ぼされたのか 境界から遠く離れたこの街が滅んだのはなぜなのか

 答えは簡単だ "魔王" が現れたのだ


 この街に至るまでのすべての街を、すべての人間を、その一切合切を滅ぼし、誰1人として生かさなかった

 情報が伝わらないように

 前回の生で私が逃げることができたのは、正直奇跡としか言いようがない

 たまたま異変に気づいた冒険者がいて、その冒険者がこの街で起ころうとしていた事件を未然に防ぐ能力を持っていた 

 それによって時間が生まれ、私たちは逃げることができた もしその冒険者がいなければ、おそらく前回の人類は滅んでいただろう これは、誇張抜きの本気で言っている それほどまでに、"魔王" は圧倒的だった なにせ、私が老衰で亡くなった時点でも生きており、それまでに国は複数滅ぼされ、勇者は何十人と殺されているのだ


 そんな存在に対し、凡人の域を出ない私ができることなどなにもない なにもないが、私以外ならなにかできるかもしれない

 滅ぶと分かっていたとしても、行動を何も起こさないほど割り切れたりはしない


 とても小さいことだが、10歳に上がった頃から手紙を送っている いろんな方面に対し、毎月1通

 大抵の人はただの子供のイタズラだと考えるだろう なにせ、根拠があるわけでもなく、まだいない魔王の話など誰が信じるだろうか 

 それでも、誰か1人でも行動してくれれば、そう思い 新聞社 冒険者ギルド 北の領土を守る伯爵家 さらには、王族にまで手紙を出した

 信ぴょう性を持たせるために新たな力 無属性魔法についてや、未来で起ころうとしていること、まだ世間では発表されていないことなどについてさまざまなことを書いた

 そしてそれは、もしかしたら届いたのかもしれない


 その証拠に、今私たちはこれから来る魔物から 避難 をしている


 これは前回ではなかったことだ

 前回では何の前触れもなく街が爆発し、燃え上がり、空から飛来した魔物に住人は惨殺された

 その後なぜか魔王軍の猛攻が止まっている隙に私は逃げたから生きていたが、それでも生き残った人間は1割にも満たなかっただろう

 本当に運が良かっただけなのだ

 だが、今回は違う 確実に、何かが変わっている。

 だからこそ、


「 母さん 」

「 ?どうしたの? 」

「 もし魔物が出たら俺が母さんを守るよ 」

「 あら、嬉しいこと言ってくれるわね。たぶん大丈夫だと思うけど、その時は守ってね 」


 今度は、母さんを死なせない


 避難する方角は南 ここから2週間ほど移動した場所に存在する大都市 ミレーネ

 そこは私が今住んでおり、未来でも滅びることのなかった国の1つ 聖王国 ミレヨ の首都だ

 兵士や、神官、魔法使いまでもがたくさんいる 王族を守る騎士団もある そこまで行けば安全だろう


 新聞になっていないので今どうなのかは分からないが、避難をしているということは1つ隣の街が滅びた、もしくは魔王軍と戦っている最中なのだろう


 犠牲になってしまった方達に恨まれたとしても、しょうがないかもしれない

 せめて、その犠牲が無かったことにならないよう未来のために動こう


 そう、心に決めた






 戦場跡地


「 これは一体、どういうことだ 」


 死体と瓦礫の山でできた台座に腰を下ろしたソレは、不機嫌そうに言葉を発した

 それに対して、答えるものはいない ソレの配下もまた、死体の山に加わっていたからだ


「 何十年も前から計画してきた"人類掃討作戦"に問題はなかったはずだ。少なくとも、ここ十数年の小競り合いで計った人類のレベルなら問題なく余裕を持って滅ぼすことができたはず。だが、 」


 ここ数日の戦闘を思い返す


「 人類は魔力をあんなにも扱う種族であったか? 」


 今までに見たことのない、刀身へと魔力を宿らせた斬撃、今までには考えられなかった俊敏性や、怪力を持った戦士たち。

 今回の殲滅において厄介だったのは魔法使いではなく、大した魔力の保持量もない戦士たちだった

 それに、


「 どうやって知ったか知らないが、攻めてくるのが分かっているかのように防御を固めていた。魔王様が滅ぼせと命じなければ防御が甘くなるまで数年待ってもいいぐらいには層も厚かった。一体、どうなっている 」


 厄介な戦士は皆殺しにした。いくつかは逃したが、街の住民も始末した。連絡手段も絶ったが、あの感じ、何かしらこちらの情報を得る手段があるのかもしれない

 …どうする?このまま進軍を続けるか?人類の思わぬ反撃に大きく数を失った兵で



「 …ちっ、仕方ない。」




 ミレの選択が、行動が正しかったのか それは、誰にも分からない

 これから起こる惨劇に、これから失われる多くの命に、変えてしまった未来は戻らない

 ミレに先があるのなら、その先で後悔がなかったのか それすら分からない

 なにせ、未来を変えてしまったのだ

 今度の生は、老衰で終えることができる保証ももはやないのだから



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