後悔しない選択を
「 ぅ うぁ〜 」
「 あら、かわいいわね なんて言っているのかしら 」
この世に生を受けて1週間 私は赤子としての生活に慣れつつあった
初めの頃は戸惑いや、赤子ゆえに何もできないことへの恥じらいなどもあったが
「 あら、おしっこしてる 今オムツ変えてあげますからねぇ〜 」
「 あうあおぅ 」
思い返せば、前回の生でも最後はこんな感じだった
肉体が衰え、自らの意思では用を足すことすらできなかった
なにも感じないわけではないが、それでもあの頃よりか少しは気が楽だ
なにせ、あの頃とは違い 今はこれからがあるのだから
「 はーい これで綺麗になりましたよ〜 よかったね〜 」
「 あぅ 」
オムツを変えてもらいスッキリしたことで、私は最近行っていることに取り掛かる それは
"魔力"の操作だ
魔力 それはこの世に存在する全てのものが持つ特別なエネルギーであり、そして、すべてを変え得る可能性を持った奇跡の力だ
魔法を扱えるというだけで優遇される。それほど特別な力なのだ。
そして、ここまで言えばうすうす勘付いているだろう
魔法は 誰もが扱うことができる力ではない
魔力にはいくつもの属性が存在するが、生物は適性を持った属性の魔力しか扱うことができないうえに、扱える魔法も魔力の属性に依存してしまう
そして、人間が魔法を扱うのが難しい1番の理由として 人間のほとんどは"無属性"に対して適性が発現してしまうと言うことだ
無属性の魔力はある意味特別で、どんな魔法でも相性関係なく発動させることができると言う性質はある が、発動できても本来の百〜数百分の一程度の威力になってしまうという大きすぎるデメリットが存在する。
ただでさえ扱うのが難しい魔法、それを発動させたとしてもほとんど効果なしになってしまうのだ
一部例外として、本来の適性以外の魔力を扱う方法もあるが、それは今はいいだろう
以前の生で、私の適性は例に漏れず無属性だった
おそらく今回の生でも私の適性は無属性だろう
なら、魔力の操作を覚えるのは意味がないのか?と考えてしまうかもしれないがそんなことはない
ほとんどの人間が無属性であるため、無属性の魔法も数えきれないほど開発されている。そのほとんどは大したことのないものばかりだが、中には有用なものもある
それに、早いうちから魔力の操作を覚える大きなメリットがある
これはこの世界においてあまり知られていないことだが、魔力は使うほどに扱うことのできる魔力量が増加する
これは前回の生で偶然読んだ論文に記されていたことで、驚くべきことだが、残念なことに増加する量はわずからしい
だが、ある条件を満たすことでその増加量は劇的に増加する
そしてその条件を知って、当時の私は後悔した
その条件というのが、7歳未満であるということ
幼く未熟な身体、その身体は少しのことでも大きな影響を受ける。そんな肉体で魔力を扱えば、身体は当然大きく変化する 魔力を扱うのに適した肉体へ
そして、肉体の成長が最も活発なのはちょうど今 この赤子の肉体
その論文に書かれていた内容によると、魔力をその肉体に保持できる量の要素は2つ
1つ目は、肉体と魔力の親和性 それが高いほどに肉体での魔力保持量が増加する これは魔力を扱うことで徐々に高まるものらしい
そして2つ目は、身体の体積 親和性がほとんど同じ人間でも身長が10cmも違えば魔力量にハッキリと差が出るらしい
以上のことから、肉体の変化が激しく、その肉体の成長が早い段階で魔力を扱えば、理論上は最も効率的に魔力を増加させることができるのだ
そのため、ここ最近はずっと魔力の操作に取り組んでいる。
そしてこれは、魔力を操作しようとして自分自身で気づいたことだが、この肉体、魔力やそれ以外のなにかを感知しやすいのだ
産まれたばかりで、なんと言えばいいのだろうか、この世界と自分自身の境界が曖昧とでも言えばいいのだろうか
世界を満ちる魔力、自身の身体にある魔力 そのどちらにも境界などなく、混ざり、溶け合い、融合するように自身の身体を包み込んでいる
前回の生では感知に1ヶ月近くかかった魔力も、初めから感知できた。魔力の操作も、経験があるとはいえ驚くほどスムーズだ
なんの因果か与えられた2周目の人生 今度は悔いのないように生きていきたい
そう思う




