あなたの人生に後悔はあるか
ここは…
目が覚めた とでも言うべきだろうか
私が気づいた時には、何もない白い空間にいた
なぜだろうか ここがどこだか私は知っている気がする 以前もここを通ったような
…そうだ! ここは
「ようこそ 転生の間へ」
突然どこかからか声をかけられる だが、そこに対する驚きはなかった 以前にも、私が バラム・ミレ として生を受ける前にもこの経験をしている
そして、それと同時になぜ私がここにいるのか 思い出した
「私は死んだのですね 神様」
私は、死んだのだ
なんてことはない、というと語弊があるかもしれないが、あの世界では珍しい 老衰 それが私の死因だ
色々なことがあった人生だった いつ死んでもおかしくない人生だったが、それでも老衰で死ねたのなら私は幸福だったのだろう
さて、では
「なぜ私は、即座に転生されないのですか?」
ここには以前にも来たことがあると言ったが、それは一度ではない もう何十回、何百回とこの場所を通ってさまざまな生を受けた
だが、そのどの記憶においても、こんな風にこの場所に留まっていたことはなく、むしろ追い出されるように即座に転生したような記憶がある
私は、なにか転生させてはならないようなことをしたのだろうか
「バラム・ミレ あなたの人生に後悔はありますか?」
おそらく私の心のうちなど分かっているはずだろうに、それは私に問いかける
後悔…
「後悔ばかりの人生だった」
歳を重ねるごとに後悔も一緒に積み重なっていく人生だった あの時こうしていればと何度も考えたことか
だが、それは誰にとっても同じではないだろうか
後悔なく生き抜くことなど誰にもできないだろう
「もしやり直すことができるならば、あなたはやり直したいですか?」
「…できるのなら」
「分かりました。では バラム・ミレ あなたには人生を1からやり直していただきます」
「!?」
声が告げた瞬間、私の足元に初めて見る陣が現れた
「これはっ! 一体どういう 」
私の声に、それは答えない
「今度の人生では、後悔のないよう生き抜いてください」
なにがなんだか分からないまま光に包まれる
私は一体どうなるのだ!?
突然暗闇が訪れる
ここはどこだ。私は死んだ後どうなったのだ もしやここが、死後の世界なのか?
見わたす限りの闇 自らの感覚もハッキリとしない世界の中 そんな中で
なにか、聴こえる
遠く、はるか遠くで 自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした
声のする方へ行かなくては!
強い衝動に突き動かされ、声のする方へと進めているのかも分からないまま ただひたすら声のする方へ向かう
すると、だんだんと世界に光が差してくる
ついには、色がついた
! ここは
目に映る景色に私は驚いた これは、死ぬ直前に見る走馬灯なのだろうかとも考えた
「おめでとうございます奥様!元気な男の子ですよ!」
訳がわからぬまま私はこの世界で2度目の産声をあげた
どういうわけか、死んだ私は再び私として生まれ直したようだ