Ep.03 唐揚げは作れません
弟が正式に離婚した。
葵が小学校へ入学する数日前のことだった。
別れの日、葵は家から出てこず、羽瑠はギャン泣きしたらしい。
事前に説明はしていたそうだが、やはり現実味がなかったのだろう。
「数日したら帰ってくる」と、最初は本気でそう思っていたようなので。
私は仕事が落ち着いたこともあり、有休を使って実家に帰省することにした。
因みに離婚してから一週間後のことである。
「今日のご飯はなに~?」
「魚の煮つけと漬物。ご飯と油揚げと豆腐のお味噌汁」
帰省してからやったことは“食育”である。
母はまだ現役で働いており、家事まで手が回り切っていなかったのだ。
なので食事の準備はすべて私が担当することになった。
なお、献立の決定権は私に一任されている。
「からあげたべたい!!」
「残念だったな!私は揚げ物はしないんだ」
「作って!食べたい!!」
地団太を踏みながら我を通そうとする羽瑠を一瞥。
「何が楽しくて唐揚げ作らなければいけないんだ?油の処理が大変だろうが」
「ママなら作ってくれたのに………」
「残念ながら私はママじゃない。だから作れない。よって諦めろ」
「……………じゃあハンバーグ」
「宿題と明日の準備をばっちりとしたら考えてやる」
「わかった!」
ぱぁぁぁぁぁという効果音が付くくらいの笑顔で宿題に取り掛かった。
――ママのことはいいのかよ。