Ep.02 姉ちゃんと弟と、ちょっと重い話
「姉ちゃん。俺、離婚することになった」
「弟よ。それは昼寝から叩き起こされた私に言う言葉なのか?」
年末に帰省。
その後に年末年始の料理を準備しつつ、ようやっと激戦が終わった二日の午後。
己の部屋で昼寝をしていたところに叩き起こされて言われた第一声がこれであった。
「離婚の原因は聞かないでいてやる。子供の親権はどちらが取るつもりだ?」
寝起きの頭を押さえつつ、目の前に立つ弟を見る。
平然としているところから既に決定していることを言っているのだろう。
「2人とも俺が引き取る」
「義妹はそれを許したのか?後、私たちの両親にそれは伝えているんだろうな?」
「最初は下の子だけを連れて行くって言われたけど、状況的に無理だって言ったら諦めてくれた」
ある程度だが、弟と義妹の状況は知っていた。
知っていたとしても、出来ることは限られていた。
夫婦の問題でもあり、介入を差し控えていたのが良くなかったのだろうか。
「妥当だな。で、両親には?」
「姉ちゃんの前に言った」
「そうか。で、子供達には説明をするんだろうな?」
「するつもりはないよ」
その返しに切れそうになった。
だが、下に両親や親戚の人たちがいることを思い出し一度口を閉ざす。
「子供に何も説明せずに母親と別れさせるつもりか?何を考えている?」
睨みつけると弟が僅かにばつの悪そうな顔をした。
「子供だと思って甘く見るな。既に物心がついている上に状況判断もある程度できるんだぞ?もし聞かれたら何と答えるつもりだ。母親は長い旅行でも言っているとでもいうつもりか?馬鹿にしすぎだろ」
「じゃあどうすればいいんだよ」
「正直に話せ。理解できるまで何度も。泣き叫ぼうが何だろうがお前の気持ちとこれからをきちんと話せ」
言外に誠意を見せろと。
子供は大人と比べると経験はない。だが、その分柔軟に、残酷に世界を見ることができる。
だからこそ大人として示すべき誠意は必要となるのだ。
「決して嘘はつくな。それは子供たちの信頼と信用への裏切りだ」
「………わかった」
納得のいかないような口調だったが、目線で黙らせた。
「それでこの話を知っているのは?」
「お父さんとお母さん。姉ちゃん。向こうの両親」
「よし。じゃあ私は聞かなかったことにした方がいいな」
「何で?」
「ばあちゃんに聞かれたときの予防線」
何せ祖母はお喋りが大好きだ。
絶対に言うなと。内緒の話だと言っても話さずにはいられない。
その話した内容は数日内に井戸端会議に上がり、巡り巡って子供たちの耳に入ることになるだろう。
それでは弟の決意も、子供たちの心も守れない。
だから祖母には話さない方がいい。そして私もまた知らないことにしておけばそれが真実だと気づかれる可能性を潰すことができる。
そのため私は知らない振りを演じるのだ。
「子供との面会日とか話し合って決めておけよ。養育費とか金額の面も含めてな」
「わかった」