025
エンバータウンの端、表通りから外れたひっそりとした裏路地にその店はあった。
「ここが…奴隷商…」
「いらっしゃい ヒッヒ…奴隷をお探しですか?」
出迎えたのは怪しげな店員…他に気配もないので店主だろうか。
「はい 一人奴隷が欲しくて来たのですが…」
「おぉ 当商会をよくぞお尋ねくださいました えぇ 奴隷商といえばグリムリッジ! 皆声を揃えて
唱えますが ここも負けちゃアいませんよ」
店主が熱のこもった声で言う
何か並々ならぬ思いがあるようだ。
「そ そうなんですね それで 奴隷たちはどんなのが…」
「おっと そうでした ささっ こちらへとどうぞ」
石造りの店の奥の 重々しい鉄扉のカギを開き 中へと通される。
牢が並んでおり そこには獣人や小人族、人間族等色々な人が首輪に重しを括りつけられ
座り込んでいるものや寝転んでいる者 壁へブツブツと独り言を言っている者等いるが
皆共通しているのは 目に絶望の色が浮かんでいることだった。
「こちらなんてどうです? 元貴族でちょーっと性格に難はありますが 見てくれは悪くありません」
そこに居たのは部屋の隅で座り込んでこちらを睨んでいる女性だった。
「えーっと…この方は いくらするんですか?」
「へっへ こいつはね お客さん始めててでしょ? ちょーっと割引させてもらって お値段二百万ガルドのとこを180万ガルドでどうです?」
なんと そんな値段とてもじゃないが…いや とてもとても無理な話だ。
「す すみません そんな値段は払えないのですが…」
「ありゃ そうですか ではこちらはどうでしょう」
次に主人は屈強そうな獣人?の房を見せてくれた
「この獣人は元は野盗でしてね 力自慢で肉体労働にはもってこいの奴隷でさぁ」
「う~~~ん ちなみにこちらのお値段は…?」
「へぇ 90万ガルドです」
思わず天井を仰ぐ 無理だろ~~~~~~~~っ
「すみません 買えそうにないです」
「あちゃ~ ご予算を聞いた方がよかったですね お幾らほどで?」
僕は予算を素直に店主に教えた。
そうすると店主は渋い顔になり
「んんんんんんんんんんん… あい 分かりやした その予算でしたら…こちらです」
店主はそう呟くと、更に奥の牢へと案内をした。
そこに居たのはやせ細った、包帯にぐるぐるに巻かれた…恐らく女性
病気なのか 少し臭う…糞尿のニオイも混じっているようだ
「そいつぁ もう病気が回っちまってましてねぇ あとどれくらい生きていられるか…そいつでしたら
5000ガルドでいいですよ」
「・・・う」
時折何かうめき声は聞こえてくるが ほとんど発声もおぼつかない様子だ。
「かかった病気も分かんなくてですね~ 治療の目途も立たなくて 処分寸前なんでさぁ」
包帯の隙間から見える皮膚はかさつき 斑点模様のアザも浮かんでいるようだ
健康状態は最悪と言えるだろう。
「で どうしますか? そっちの予算じゃ他にはウチで買える商品はありやせんね~」
「買います」
「まぁ そうでしょうね さすがにウチももう明日明後日には処分を……って え!? 買う!?」
「はい」
「はぁー… いやいいんですけどね ウチとしちゃあ 処分する手間も省けるんで ただまぁ
本当に長くはないですぜ?」
「えぇ だったら尚更早く お会計を」
「あぁー はい それならもう何も言いやせんが 奴隷契約を済ませやしょう」
「奴隷契約?」
「えぇ 奴隷とその主人は奴隷商人のスキルによって契約を交わします。 交わした契約は絶対服従。 束縛する力は商人の力量にもよりやすが、まぁ あっしでしたら主人への攻撃を防ぐぐらいは可能です。 極めると 主人の命令によって命を落とす行動でもやり抜く服従が可能らしいですが…」
「いや もういいです 契約を済ませましょう」
あまり奴隷スキルについてそれ以上詳しくなりたくなかった。
記憶はない自分だが、そういう行為をいいことだと思う性分ではないようだった。




