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溶けない雪  作者: Ao
4/19

出会い 4

キーンコーンカーンコーン〜


「ねぇ!朝どうしたの?!」


 HRが終わるやいなや、クラスメイトの加奈子が私の席にニヤニヤしながら近寄ってきた。加奈子とは入学時に席が近く、自然に話すようになった。地元も違うし部活も違うが、話が合うし、いい距離感でいてくれるから一緒にいて心地がいい。


「朝?あー、ちょっと寝坊して遅れた〜、ははっ」

「そーじゃなくてぇ!サッキーと一緒に来てたじゃん!」

「あー…それ…」


 どうやら見られていた。廊下側の席からは丸見えだっただろうから当然だ。しかしきっと繋がれていた手は見えていなかったはず。あまり根掘り葉掘り聞かれても、上手い返し方が分からない。彼がどんな人なのか何も分からない状態だから、ここはお茶を濁すのが1番無難だろう、と私は考えていた。


「朝バス停で一緒だっただけだよ。隣のクラスだったんだねぇ。」

「えー!元々知ってたっけ?」

「いや、知らない…。向こうから話しかけてくれてさ。すごいコミュニケーション力のある人だなぁって思ったよ!てか、加奈子はサッキーのこと知ってるんだ?」

「地元一緒だもーん!でも、サッキーって自分から人に話しかけるタイプじゃないはずなんだけどなぁ」

「え?そうなの?」

「うん。どっちかっていうと、男子とわちゃわちゃ仲良くて、女子とはそんなに?」

「へぇ…」


 加奈子が話すサッキーの話は、私が受けた印象とはかなり違った。あんな勢いで話しかけてきて、バスで隣の席に座って、それから、、、


「でもまぁ、ほどほどの距離感にしておきなよ?」

「え?」

「あんまり真面目なタイプじゃないと思うからさ。私もそんな詳しいわけじゃないけど…」

「なにそれ、めちゃくちゃ気になるじゃん!え、不良…とか?」

「あー違う違う!学校遅刻魔だし、髪長いとか、結構先生から怒られてるっぽいからさ」


 ますますよく分からなかった。遅刻魔というのはそうなのだろうけれども、先生から注意されている姿は見かけたこともない。中学の頃の話だろうか。


(あんまり、人から聞いた話で決めつけたくはないなぁ)


 この時の私はまだ、自分の目で見て、直接話したことを信じたいと考える人間だった。いや、それ自体はきっと悪いことじゃないのだが、その考えが極端だったのだ。自分で感じた印象と周りの印象が違うなら、周りの話は完全に無視してしまう程に、自分の経験したことのほうを信じてしまう。しかしそれはきっと、私が相手の立場だったらとか、そんな崇高な考えを持っていた訳ではなく、もっと暗い想いからきていた。


(でもまぁ、とりあえず忘れよう。縁があればまた話すこともあるだろうし。)


 私自身、積極的にこの出来事を、彼のことを心に残さないようにしようと思った。


「それよりさ!数学の宿題やってきた?今日加奈子当たる日じゃない?」

「げっ!」








キーンコーンカーンコーン


「おはよー!」

「あ!加奈子おはよー!」


 あれから数日が過ぎた。天気はすっかり良くなり、毎朝気持ちのいい風を感じながら自転車通学をしている。いつもの平穏な日常を生きてる感じがする。

 あの日からサッキーと登下校で鉢合わせることはなかった。隣のクラスなのだが見かけることも数える程だった。


「はははっ…」


(あ…サッキーだ…)


「それでさ〜!こいつ昨日ッ…」

「なんだよ!言うなよ〜!」

「ははははっ」


 廊下ですれ違う時に、目で追ってる自分がいる。でも目は合わない。


(…なーんだ。)


 私は少しがっかりしていた。あの朝に起きたことは、まるで物語の始まりのようだったのに、そこで終わってしまった。

 

(…連絡先くらい、交換しておけば良かった。)


 彼のことを目で追ってしまう。探してしまう。もっと話してみたい。知りたい。恋愛として惹かれているのか分からない。だからこそ、確かめたいのかもしれない。

 しかし、もう自分から声をかけるには時間が経ちすぎている。不自然だし、そもそも何て声をかければいいんだ。


(やっぱり、縁はなかったのかな。)


 そんなことを毎日考えていたが、とうとうチャンスがやってきた。

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