愚かさ 4
家から10分程歩いたところにあるアパート。駐車場には車がちらほら停められている。建物隅の階段を登って3階へ行き、1番手前の304号室の前でインターホンを鳴らす。しばらくして中から足音が聞こえ、ガチャッと扉が少し開く。
「勝手に入って良いって言ってるじゃん。」
「それは何か嫌なの。」
「ふーん。」
男は気怠そうに出迎え、奥の部屋に戻っていった。私もその後に続き、男が座るソファに体育座りで並ぶ。男は私のことなんか気にせずTVゲームを再開した。
「で、今日はどうした。」
「…ん。うーん…。」
私は私の中のもやもやとした気持ちを、うまく言葉に出来ずにいた。
「…俺夜バイトだから。」
「あ、そうなんだ。ごめん、急に来て。」
「ん。ま、それはいいよ。」
そう言って男はゲームの中断してタバコに火をつけた。特に会話をしなくても、この場所は居心地がいい。
「涼介さんって、今彼女いるの?」
「んあ?別にいないよ。」
「いたことはある?」
「そりゃいたことはあるさ。」
「なんで別れたの?」
「えー。言わない。」
「やっぱそういうものなの?」
「なにが?」
「別れた理由とか、他人に言わないとかさ。」
「知らん。」
涼介さんは9歳年上の大学生。体格もかなり大きいし、髭もたまに生やしてるから同級生とは違い、私の中では大人の人という枠にいる。
「俺そろそろ準備するわー。」
「あ、じゃあ帰る…。」
「ん。」
立ち上がった私の腕を掴んで引き寄せる。無理矢理されたキスはタバコの味がして少し苦い。強張る私とは違って、彼の柔らかい舌先が口の中を掻き回す。ぎゅっと抱きしめられて抵抗も出来ない。
「んぅっ…」
唇も体も解放されたら、何事もなかったかのように彼は言う。
「よーし、シャワー浴びるか。」
「じゃあ帰るね。」
「はいよ。」
部屋を出て自宅へと向かう。いつもこの部屋から帰る時には考える。
(ほんと、私も私で、馬鹿だよなぁ…)
自分の行いが愚かだと自覚してる。でも、やめられない。今は。