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溶けない雪  作者: Ao
16/19

愚かさ 1

 ベンチに座り直して、私たちはまた話し始めた。

 

「今度さぁ、バトミントンとかキャッチボールしたいなぁ。」

「奈緒持ってるの?てか出来るの?」

「うーん、持ってないけど、100均で買えるボールでいいんじゃない?」

「俺ん家にボールはあったかなぁ。」


 こういう何でもない話をずっとしていければいいな、と思っていた。何でもない、ただの友達。でも、今の要の状況も知りたい。


「そういえば、彼女さんは元気?」

「ん?あー…、別れたよ。」

「え…?!」


 予想外の返答だった。いや、予想とは違うけど私は少し喜んでいたかもしれない。私は顔から笑みが溢れていないか注意した。酷い性格だ。


「え、ど、どうして?喧嘩?」

「んー…、喧嘩じゃないけど…」

「じゃあ何?」

「…まぁ、いいじゃん!俺のことは!あんま聞くなよ〜。」

「えー、うーん…」


(また、線を引かれた。もっとこう人に話したくなるものじゃないの?大体彼女のせいにしたり、こんなことがあって〜ってエピソード語るものじゃないの?)


 私が知ってる失恋した人は、大体こうだった。私が出会った人たちの中でも、友達と喧嘩をしても理由を周りに話さない人は何人かいた。私はエピソードを聞きたいし、そこから学びたい。人は誰かに話すことで楽にもなるし、頭の中を整理できるものだと思う。でも話さない人は大抵その出来事に外野が入るのを嫌い、その出来事はお互いのものだ、と大切にしてる人たちだ。私からすれば、少々つまらない。

 これは私の性格が破綻しているからではないと思う。誰だって傷つきたくはないだろう。私だってそうだ。失敗したくない。相手から拒絶されるのが怖くて仕方ない。選択を間違えたくない。だから事前にいろんな話を聞いておけば、上手く立ち回れると思ってる。とにかく私は、酷く臆病なのだ。


(これ以上は、話聞くの無理かな。)


 きっと大した問題ではないのだろう。よくあるお別れの理由。ただ興味があるだけ。要をこんなふうにした出来事が知りたい。


「ま、何かあったら話聞くから!いつでも言ってよ!」

「ははっありがとっ!」


 家に帰ってからも、出来事について気になってはいたが、彼女がいないなら私の行動に制限をかけるものはない。


(要と、もっと話してみたい…)



ブブッブブッ


 リアンの通知が来て現実に引き戻された。気持ちの切り替えが出来ず私は少し高揚したままだったと思う。これからの楽しみがあるのはとても嬉しい。


 そこから1週間程は特に進展のない生活だった。とは言っても、要とは1日に何通かリアンでやり取りすることが続いていた。


澤木 要:数学の宿題が終わらん。


烏丸 奈緒:早くやらないからだよ。


澤木 要:奈緒は何してるの?


烏丸 奈緒:古文の予習。


澤木 要:早くやらないからだよ(笑)


烏丸 奈緒:予習だってば(笑)


 平穏が1番だが、これからのことを考えると生活は楽しかった。要と話していてもドキッとすることはなくなっていた。その代わり、なんだか胸がほっこりする。恋にせず一線をひくと決めても、どうしても心がごねているのかもしれない。

 不思議な状態だと思う。一線をひいてから、友達という枠に要をおさめてきたが、言葉を交わすたび、会うたび心が疼く。私は、上手くやれているのだろうか。普通ならこういう時どうするのだろう。恋心を認めて、告白するのだろうか。でも、私がほしいのはそういうものなのだろうか。


(考えても、仕方のないことかな…)


 こういう時は、物思いに耽るのが1番だ。ちょうど冬に入ったところ。静かに過ごすには良い季節になってきた。



 そんなある日、夜に要からリアンがきた。いつもの何でもない会話かと思ったが、この日は違っていた。


澤木 要:ちょっとさ、話してもいい?


烏丸 奈緒:どうしたの?


澤木 要:どうしたらいいか分からなくて。


烏丸 奈緒:うん?


 要から相談されるのは初めてだ。前のめりで聞きたい気持ちを抑えた。少しでも私を頼ってくれるのは素直に嬉しい。





澤木 要:元カノに子供ができたかもしれない。




(…えっ…)


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