表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溶けない雪  作者: Ao
14/19

思い上がり 4

 次の日からも、学校ではあまり要を見かけない。たまに廊下で見かけても、特に声はかけてないし、あちらからも声はかけてこない。

 ある日、いつも通り4人でお昼ご飯を食べていると知らない男子が来た。


「梓〜お願い〜!ピアス開げで〜〜!」

「はぁ?自分で開けなよ。」

「だっで怖いじゃん〜!!一発で開けられなかったら痛いらしいじゃん〜!!」

「痛くないってそんなに〜。」


 私と加奈子は呆然とやりとりを見ていた。


「あ、てかお昼に割り込んでごめんよぉ。俺1組の洸平。呼び捨てでいいよ!」


 彼は洸平(こうへい)くんと言って、梓と麗奈と同じ地元の子らしい。梓はピアスが両耳合わせて5箇所開いてる。以前、開ける時に痛くなかったか私も聞いたことがあるが、梓は涼しい顔で「慣れた」と言っていた。


「麗奈が開けてあげようか?♪」

「やだ!お前はなんか斜めに刺して失敗しそう!」

「クラスの男友達に開けて貰えばいいじゃん!」

「サッキーに言ったんだけどさぁ、そしたら失敗した時の話めっちゃされてさぁ〜!そんなやつにやられたら超怖ぇじゃん!」


(要…?ピアス開いてるんだ。気が付かなかったな。)


「サッキー面白がってるねぇ〜♪」

「てかお昼食べてるのにグロい話しないでよ。」

「あ!そっか!ごめんね!えぇと…」

「私、加奈子だよぉ。2組!こっちは奈緒!」

「どうもー。」


 なんだか子犬のような洸平くん。会釈してまた梓とのやりとりを眺めた。梓と特に仲がいいみたい?


「あ!奈緒さんって、もしかしてサッキーと友達?たまに話出てたや!」

「え?!」


 突然話題を振られて驚いた。


「あれ?奈緒ってサッキーと友達っだったの?」

「そういえば一回一緒に学校きてたよね?」

「あ、あれはたまたま遅刻した時バスが一緒だったの!そこで結構話したから、たまに話してるだけだよ。」


 みんなが訝しんでこちらを見ている。居心地が悪い。


「あ、いや、俺も変な言い方してごめん!前に一緒に来たの俺も見たからさ!サッキーに聞いたら、友達になったって言ってたからさ!」

「へぇ〜」

「ほ〜う」

「てか梓と洸平くんも仲良いね!」


 これ以上この話題はさけたかったので話題をすり替えた。


「あぁ、地元一緒だし、家も近所だからさ。幼稚園も一緒だよ!」

「おぉ〜、幼馴染ってやつ?」

「腐れ縁だよ。」


キーンコーンカーンコーン


 予鈴が鳴って、続きは放課後にまた話すことになった。加奈子と私もピアスは興味があったので、放課後に1組にお邪魔する。

 

「奈緒!行こ!」

「うん!」


ガラガラッ


「梓!麗奈!おまたせー!」

「あ!来た来た!」

「お菓子あるよ〜♪食べよ〜♪」


 梓と麗奈が机をくっつけて待っていてくれた。私も持っていたグミを出した。ちょっとしたお茶会みたいになった。


ガラガラッ


「掃除やっと終わったぜ〜!梓おまたせ!」

「待ってな〜い。」

「おつかれ〜♪」

「あ!お菓子ある!ちょうだーい!」


 掃除を終えた洸平くんが参戦。相変わらず子犬っぽい人だなぁと思った。

 そのまま5人で机を囲み、和やかにお茶会が始まった。


ガラガラッ


 教室に要が入ってきた。久しぶりに同じ空間にいることに、一瞬体がビリビリとした。


「掃除終わった〜!ちかれた〜」

「お!サッキーおつかれー。」

「おつかれさまー♪」

「あ!お菓子だ!」

「洸平と同じこと言ってる〜♪どうぞ〜♪」


 要は洸平と麗奈の間に椅子を持ってきて座った。私の真正面。


「サッキー!私、加奈子!よろしくぅ。」

「んあ、よろしく〜。」

「一応中2までそっちの地元にいたんだけど、分かる?」

「え?!まじ?!…ごめん、分からないかも…」

「あははっ、話したことはなかったから良いよー!よろしくね!」


 加奈子が自己紹介をして、私も何かあいさつをしなくてはいけないと思った。


「久しぶり。サッキー。」


 みんながサッキーと呼ぶ中で、要とは呼びづらかった。私が声をかけると、要は不思議そうな顔をした後、少しだけ笑って言った。


「あ、奈緒じゃん。久しぶり〜。」


 

「サッキーと奈緒は遅刻友達なんでしょ〜?」

「あ!俺もそれ聞きたかった!」

「いや、だからさ、遅刻した日にたまたま同じバスだったんだってば〜。」


 加奈子が茶化し、洸平くんが乗っかってきてしまった。どうしよう、話題を避けたい。


(でも、要は、どう思ってるんだろう…)


 ちら、と要に目線をやったが、私が持ってきたグミを食べながらパッケージの裏表を確認していた。話が耳に入っていないようだ。


「ねぇ、これめちゃくちゃ美味しい。なにこれ〜!」


(本当に聞いてないのか〜)


「あぁ、それ奈緒が持ってきたんだよ。それより洸平!あんたピアスの話はどうしたの!」


 梓が話の軌道修正をしてくれたので、私と要の話は有耶無耶になってくれた。

 結局、洸平くんは肝心のピアッサーを家に忘れてきたことが分かり、ピアスは開けずお茶会はお開きとなった。


「じゃあうちらバスだから〜」

「サッキー!明日またピアス相談させてくれ〜!」

「奈緒、自転車気をつけてね!」

「またお茶会しようね〜♪」


「洸平!明日な!」

「また明日ねー!」


 バスに乗る4人と昇降口で別れ、私と要は駐輪場に向かった。なんとなく気まずい。多分、こんな気持ちなのは私だけだろうけど。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ