思い上がり 4
次の日からも、学校ではあまり要を見かけない。たまに廊下で見かけても、特に声はかけてないし、あちらからも声はかけてこない。
ある日、いつも通り4人でお昼ご飯を食べていると知らない男子が来た。
「梓〜お願い〜!ピアス開げで〜〜!」
「はぁ?自分で開けなよ。」
「だっで怖いじゃん〜!!一発で開けられなかったら痛いらしいじゃん〜!!」
「痛くないってそんなに〜。」
私と加奈子は呆然とやりとりを見ていた。
「あ、てかお昼に割り込んでごめんよぉ。俺1組の洸平。呼び捨てでいいよ!」
彼は洸平くんと言って、梓と麗奈と同じ地元の子らしい。梓はピアスが両耳合わせて5箇所開いてる。以前、開ける時に痛くなかったか私も聞いたことがあるが、梓は涼しい顔で「慣れた」と言っていた。
「麗奈が開けてあげようか?♪」
「やだ!お前はなんか斜めに刺して失敗しそう!」
「クラスの男友達に開けて貰えばいいじゃん!」
「サッキーに言ったんだけどさぁ、そしたら失敗した時の話めっちゃされてさぁ〜!そんなやつにやられたら超怖ぇじゃん!」
(要…?ピアス開いてるんだ。気が付かなかったな。)
「サッキー面白がってるねぇ〜♪」
「てかお昼食べてるのにグロい話しないでよ。」
「あ!そっか!ごめんね!えぇと…」
「私、加奈子だよぉ。2組!こっちは奈緒!」
「どうもー。」
なんだか子犬のような洸平くん。会釈してまた梓とのやりとりを眺めた。梓と特に仲がいいみたい?
「あ!奈緒さんって、もしかしてサッキーと友達?たまに話出てたや!」
「え?!」
突然話題を振られて驚いた。
「あれ?奈緒ってサッキーと友達っだったの?」
「そういえば一回一緒に学校きてたよね?」
「あ、あれはたまたま遅刻した時バスが一緒だったの!そこで結構話したから、たまに話してるだけだよ。」
みんなが訝しんでこちらを見ている。居心地が悪い。
「あ、いや、俺も変な言い方してごめん!前に一緒に来たの俺も見たからさ!サッキーに聞いたら、友達になったって言ってたからさ!」
「へぇ〜」
「ほ〜う」
「てか梓と洸平くんも仲良いね!」
これ以上この話題はさけたかったので話題をすり替えた。
「あぁ、地元一緒だし、家も近所だからさ。幼稚園も一緒だよ!」
「おぉ〜、幼馴染ってやつ?」
「腐れ縁だよ。」
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴って、続きは放課後にまた話すことになった。加奈子と私もピアスは興味があったので、放課後に1組にお邪魔する。
「奈緒!行こ!」
「うん!」
ガラガラッ
「梓!麗奈!おまたせー!」
「あ!来た来た!」
「お菓子あるよ〜♪食べよ〜♪」
梓と麗奈が机をくっつけて待っていてくれた。私も持っていたグミを出した。ちょっとしたお茶会みたいになった。
ガラガラッ
「掃除やっと終わったぜ〜!梓おまたせ!」
「待ってな〜い。」
「おつかれ〜♪」
「あ!お菓子ある!ちょうだーい!」
掃除を終えた洸平くんが参戦。相変わらず子犬っぽい人だなぁと思った。
そのまま5人で机を囲み、和やかにお茶会が始まった。
ガラガラッ
教室に要が入ってきた。久しぶりに同じ空間にいることに、一瞬体がビリビリとした。
「掃除終わった〜!ちかれた〜」
「お!サッキーおつかれー。」
「おつかれさまー♪」
「あ!お菓子だ!」
「洸平と同じこと言ってる〜♪どうぞ〜♪」
要は洸平と麗奈の間に椅子を持ってきて座った。私の真正面。
「サッキー!私、加奈子!よろしくぅ。」
「んあ、よろしく〜。」
「一応中2までそっちの地元にいたんだけど、分かる?」
「え?!まじ?!…ごめん、分からないかも…」
「あははっ、話したことはなかったから良いよー!よろしくね!」
加奈子が自己紹介をして、私も何かあいさつをしなくてはいけないと思った。
「久しぶり。サッキー。」
みんながサッキーと呼ぶ中で、要とは呼びづらかった。私が声をかけると、要は不思議そうな顔をした後、少しだけ笑って言った。
「あ、奈緒じゃん。久しぶり〜。」
「サッキーと奈緒は遅刻友達なんでしょ〜?」
「あ!俺もそれ聞きたかった!」
「いや、だからさ、遅刻した日にたまたま同じバスだったんだってば〜。」
加奈子が茶化し、洸平くんが乗っかってきてしまった。どうしよう、話題を避けたい。
(でも、要は、どう思ってるんだろう…)
ちら、と要に目線をやったが、私が持ってきたグミを食べながらパッケージの裏表を確認していた。話が耳に入っていないようだ。
「ねぇ、これめちゃくちゃ美味しい。なにこれ〜!」
(本当に聞いてないのか〜)
「あぁ、それ奈緒が持ってきたんだよ。それより洸平!あんたピアスの話はどうしたの!」
梓が話の軌道修正をしてくれたので、私と要の話は有耶無耶になってくれた。
結局、洸平くんは肝心のピアッサーを家に忘れてきたことが分かり、ピアスは開けずお茶会はお開きとなった。
「じゃあうちらバスだから〜」
「サッキー!明日またピアス相談させてくれ〜!」
「奈緒、自転車気をつけてね!」
「またお茶会しようね〜♪」
「洸平!明日な!」
「また明日ねー!」
バスに乗る4人と昇降口で別れ、私と要は駐輪場に向かった。なんとなく気まずい。多分、こんな気持ちなのは私だけだろうけど。