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溶けない雪  作者: Ao
13/19

思い上がり 3

 寄り道をして家に帰った。家に着いてから、今度は要のことばかり考えた。

 私は嫌な性格をしてる。加奈子みたいに、自分の気持ちを信じて、誰かを好きになることが難しい。周りの状況とか、相手の気持ちを予測出来ないと、多分上手く行動出来ない。


(…彼女、いるのかな)


 こういう性格なのも、私の良くないところだと思う。もう寝る前だけど、リアンを送ってみる。気になって眠れない。


烏丸 奈緒:起きてる?


 自分で見ても、構ってほしい感が満載だ。ただ、どう言えばいいか分かる。知ってる。


(ほんと、嫌になるなぁ…)


 



 30分しても既読にならなかった。きっと寝てしまったのだろう。私も気持ちが落ち着いてきた。このまま、寝てしまおう…。思い通りにいかないことも、嫌いだ。




 翌日、昼頃になって返事がきた。


澤木 要:ごめん、気が付かなかった!どうしたの?


烏丸 奈緒:こちらこそ夜中にごめん!眠れなかっただけだよー!


 ただ暇だったから送っただけだと言って、会話を終わらせようと思った。


澤木 要:今も暇なら、公園で話さん?


 以前要と帰り道に寄った公園で、私たちは会うことにした。


「よう!ちょっと遅れた!」

「大丈夫だよー!さっき着いたばっかり!」


 さすがに外は少し寒い。あんまり長居はできないが、要と話せるのが嬉しかった。


「そこに自販機あった!寒いから、何か温かい飲み物買わん?」


 そう言われて一緒に自販機に行った。私は甘いカフェオレ、要はブラックコーヒー。2人で公園に戻ってベンチに腰掛けた。


「それで?昨日はどうしたの?」


 要が話を切り出した。私は、もうすでにどうでも良くなった話題だった。でも、何か理由をつけないと納得されない気がしたので、それらしい話をしよう。


「いや、本当に眠れなくてさ。昨日友達が失恋して、なんかこっちが悲しくなっちゃってさ。」

「あー、それは、悲しいねぇ。」

「あ!でも!恨むとかそんな感じじゃなくて!…どっちもいい人だから、なんか、切ないっていうか…」

「そうなんだ、それはまだ良かったねぇ」


(要、ちょっと困った顔してる?そりゃあそうか、こんな話聞いてもね。)


 さっきまで温かかったら缶が少し冷めてきていた。

 この話の勢いで、昨日気になっていたことを聞いてみることにした。


「要はさ、好きな子とか彼女いるの?」





「いるよ。彼女は。」




(…え)



「え?!彼女いるの?!」

「一応ね。」

「一応って…。てか、そうなら私とここにいるのまずくない?!」


 予想外の答えが返ってきて動揺した。私は少しだけ座る位置に距離を作った。


「え、別に関係なくない?」

「いや、えぇ〜。でもさぁ、女の子ってそういうの気にするよ?」

「大丈夫だよ。別に。多分向こうも気にしないでしょ」

「えぇ〜、大人な人なんだねぇ。年上?」

「ん?いや、違うけど…。まぁそこらへんはいいじゃん?ははっ」


 それ以上は、教えてくれなかった。要が話したがらなかった。聞けない雰囲気を作られては、私ももう聞けない。

 その後も少しお喋りして、私たちはお互いの家に帰った。帰り道でも私は、要のことばかり考えてる。子どもみたいにはしゃぐところも、いたずらっぽい笑顔もあるのに、恋愛についてはなんだか、周りより大人っぽいというか。身体と心が合っていない、ちくはぐな感じというか…。

 

(…彼女、どんな人なんだろう。)


 全く想像出来なかった。なんとなく、年上な気がするとは思う。


(…私かと、思ってたよ。)


 要が笑うと、ドキッとする。こっちも嬉しくて笑顔になってしまう。一緒にふざけてる時間も好き。昔からの友達みたい。それこそ、性別なんて関係なかった頃の友達みたいに…。

 とぼとぼ歩きながら、私は天秤にかけた。この気持ちを恋愛にしたとしても、叶わない。きっと苦しくなって、もう要と今みたいにいられないかもしれない。でも、このまま友達としてだったら、一緒にいられる…。


(まだ間に合う…。)


 私は要を好きにはならないと決めた。私は、性別の違いがない、心から話せる友達がほしかった。むしろそれを証明出来る人が欲しかった。なんとなく、要とはそういう関係になれると思った。

 私は、賢く生きていきたい。傷つきたくないし、傷つけたくもない。


(要は違う…要は違う…。)


 今までの曖昧な自分の気持ちに名前をつけることは出来ない。だって、分からないんだもん。見かけた時にだけドキッとすることが恋なの?たまに会えたらいいなって思うことが?私は、ずっと同じ気持ちを待ち続けていた訳じゃないよ。加奈子みたいに、気持ちを伝えたいとも思っていないよ。

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