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溶けない雪  作者: Ao
12/19

思い上がり 2

 今日は土曜日。ベッドでごろごろしながら、加奈子のことを考えてた。


(加奈子…大丈夫かな…)


 リアンを送ったら、思ったより早く返信が来た。私達は駅前で待ち合わせして、会うことにした。

 駅前に行くと、加奈子は髪も結わず、元気なくベンチに座ってた。


「加奈子!」

「あぁ、ごめんねぇ急に」

「こっちこそ!…どっかお店入る?」

「うーん、まだ、ここにいてもいい?」

「いいよ、もちろん」


 あんまり人が通らない場所のベンチに移動して、加奈子がぽつりぽつり話し始めた。


「あの日ね、彼女さん見て、あぁ敵わないなぁとすぐに思ったの。だってさ、先輩、すごい笑顔で彼女さんのこと見てた。すっごく好きなんだなぁって、分かった。」

「…」

「家帰ってさ、リアンのやりとりとか、今までの先輩とのこと思い返してみてさ。全然違ったの。」

「…うん。」

「それでさ、昨日の夜、先輩にリアンで告白したの。」

「え?!」

「いや、言ったというか…先輩のこと、ちょっと、好きだったのにーって。会話の流れで伝えてみた感じ…」

「で?それで?返事は?!」

「ありがと!俺は彼女が大好きだよ!ってさ」

「…」

「だから、知ってますよー!この前彼女さんに会って、丸分かりでしたよー!って。」

「それで、いいの?」

「うん!ちょっとスッキリしたの!可愛い妹って、また言われたし、実際に先輩の妹にちょっと似てるらしいのよ。」

「なんだそれ。」


 ちょっと笑って、加奈子は話してた。


「全然、同じ気持ちじゃなかったんだなぁって。なんか私、ひとりで馬鹿みたいだなぁってさ。」

「…」

「でもねぇ、不思議なんだけど。先輩のこと、困らせたいとか、ムカつくとか、思えなかったんだよね。」


 加奈子がちょっとだけ鼻をすすって、気持ちを教えてくれた。


「なんだこのやろう!って思ってみても、先輩の笑顔が頭の中に出てきて、あぁダメだ、大事だって、すぐ思っちゃうの。」

「…」

「ここまで思える恋で…先輩を好きになって良かったって…先輩だから思えたんだなぁって、今、そんな感じなの。あぁ私、今すごく切ないじゃーんって、そんな感じ…」


 加奈子が笑って私を見た。目が、涙できらきらしていた。すごくすごく、綺麗な目だった。



「加奈子、あたしね、何にもしてあげられてないけど、話いっぱい聞くよ!加奈子が思ったこと、たくさん聞きたいって思うよ!私、加奈子大好きだよ!」


 こういう時も、私は上手く話せない。伝えられてない。心の中を、上手く言葉に出来てない。


「へへっありがとー。私も奈緒大好きだよ。」


 一瞬キョトンとして、加奈子は笑ってくれた。その後はカフェに行って、少しだけいつもの調子に戻った加奈子とたくさんお喋りした。


「先輩に彼女いるか聞いてなかったの?」

「あー、聞かなかったねぇ。まぁあのタイミングで言ってくれたって感じかな?」

「好きになった時に大体聞くものじゃないのかい。」

「いやぁ、勝手にいないと思ってしまってたのよ。私のこと絶対好きじゃん!とか思い上がってたねぇ、えへへ」

「加奈子はすごいねぇ。直線って感じ。」

「でもまぁ、彼女さんも多分私のこと妹キャラだと思ってるよ。私のことも、梓も麗奈のことも、あの日面倒見てくれたの。体調悪いって切り出したら、めちゃくちゃ心配してくれたの。」


 結局、カフェに2時間近く居座ってしまった。頼んだアイスコーヒーは、氷まですっかり溶けてしまっていた。



「じゃあ、また学校でねー!」

「うん!奈緒ありがとー!」


 辺りが暗くなってきたところで解散。駅の改札まで加奈子を見送って、私はバス停に。

 加奈子の気持ちを聞いて、切なさがうつった私は、いつも降りるバス停より前で降り、ゆっくり歩きながら家に向かった。暗い夜道は誰もいなくて、林の中から蛙とか虫の声だけが聞こえる。

 

(思い上がり、かぁ…)


 また私は、加奈子に感じた切なさを自分の気持ちと比べていた。


(どうして…そんな風に、相手を思えるの…?)


 私は、加奈子が好きだった先輩の気持ちを考えてみた。もしかしたら、加奈子の気持ちに気づいていたのかもしれない。でも多分、そうだとしても、彼女さんにも友達にも言ってなかったんだろうなと思う。


(ちょっと、ずるいよなぁ…)


 私はちょっとだけ、心がギュッとした。


(加奈子で良かったですね、先輩。)


 優しい加奈子が、優しい先輩に恋をして、2人とも、ずっと優しくて、どうしたら相手に少しでも悲しい顔させないか、大切に考えてる。

 一方の願いが叶わないとしても、ちょっとだけ重なった2人の気持ちが、すごく綺麗なものだって分かるよ。

 ちょっと涙が出た。でもなんだか、温かい感じがした。

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