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1.黄金の目が見つめる先に



 小部屋に満ちるのは静かな時間。紅茶の香りに包まれながら、少女は座って足を揺らしていた。天窓から差し込む光が透かしている薄緑の髪は少女の身体の動きにあわせて毛先が左右に揺れ、床では長い髪が箒代わりにならないようマンドラゴラが毛先を追いかけている。短い足を必死に動かしても彼らは運動に向かないようで、一匹は転び、二匹、三匹は互いにぶつかって倒れてしまう。ことん、ぱたん、と次々とダンスに失敗していく彼らを想像しては、少女は「くくく」と喉で笑い、振り返る。マンドラゴラに顔はないが、どことなく体に刻まれている皺が怒っているように見えた。

「すまん、遊び過ぎた」

 長い髪をすくいあげ、片方の肩へひっかけるように流す。そのまま手早く三つ編みを結うと、床に向かってくることがないことに安心してマンドラゴラは倒れている仲間を引きずって窓際の植木鉢へと戻っていった。ぽかぽか、と音が鳴りそうな穏やかな昼の日差しを浴び、深緑の葉を揺らしているのを見るといつまでもこうして時間を潰せそうだ。

 だが、少女は日が昇り始めて真上に来るまでしっかりと眠っている。これからはきちんと働かなければならない。

 ティーカップをテーブルへ戻し、大きく伸びをして行儀悪く足を上げる。こうしても口うるさく言われないことが一人暮らしの醍醐味でもあったが、少しばかり寂しさがよぎる。

 目を閉じ、首を反らすと、少女が動く時間だと知っているこの部屋の小さな住人たちも、目を覚まし、動き始めているようだ。マンドラゴラは揺れ、アッシュボーンが暖炉から顔を出し、首のない少年が空になったティーカップをキッチンへと下げていく。部屋が一度震えたのは、屋根の上を巣と勘違いしているドラゴンのせいだろう。

 寂しがることはあれど、目を開けば少女の世界を色鮮やかに染める彼らが全方位にいるのだ。

「……仕方ない、働くか」

 少女は大きく目を開く。金色の目は、ドラゴンによって塞がれた天窓からドアへと視線を移す。同時にノックの音が響き、客人を出迎えるために玄関へと向かった。


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