第2話 能力
「まじか、それ当たらないか」当たったと思ったけどな。
「いや、ナイスだ開人」
「え、」
「『一閃』」
そう言ってフラスは自身の剣『輝彩』《きさい》を使い魔物の身体を斬る。俺の攻撃とは違いしっかりとダメージが入る。
「一発じゃあ殺れないか」
「そりゃ秘宝持ちは普通の奴より硬いしな」
まぁダメージが入っただけで十分だ。倒せない相手ではないことがわかったからな。それよりも気になることがある。
「なぁ、あいつの能力が分かったから攻撃できたのか?」
俺のは掠りもしなかったのに。
「分かった、と言いたい所だが隙をついただけだ」
「正確には?」
「能力のクールタイムを狙ったんだ。俺たちが吹き飛ぶ時に何かしらの能力を使ったと考えた。連発できるタイプだったら通用しないがな」
そういうことか。流石に経験が違う。まぁ1年程しか変わらないはずだが、俺たちとは違うらしい。
「起き上がるぞ、能力に気をつけろ」
そう言ったと同時にこっちに突っ込んでくる。
なんとかギリギリ避けることが出来たが、横からの急な風で吹き飛ばされる。
さっきからずっとだ、吹き飛ぶ時には強風が吹いている。ずっと吹いているわけではないこいつに近づいた時だけ突風だ。ということは、こいつの能力は−−−『風』を操っているのではないか?
「今だ!」
吹き飛んだことによって崩れた体勢をすぐに整えフラスは攻撃を仕掛ける。
「もう一発だ!『一閃!』」
シュッと魔物の身体から血液が出る。クリーンヒットだ。
だが、魔物も生き物だ。そう簡単には死にたくないらしい。
小さな風の柱を2本出してこっちに反撃してくる。
「うぉっ!」フラスはなんとか避け、風の柱から距離をとるが追尾してくるタイプらしく攻撃しようにも風に攻撃してもダメージは通らないから逃げることしかできない。
フラスには悪いが少しの間逃げといてもらおう。今は魔物が能力を使ったからクールタイムで能力は使えないはずだ。要するに、こいつに攻撃が通るチャンスだ。そう考え、『神威』を振るう。フラスの言った通りクールタイムを狙うのは大切だな。剣が当たったと同時にまた吹き飛ばされる。ようやく確信が持てた。
「やっぱ、『風』の能力を使ってんな」
流石に風の柱を出したら分かる。そして、今吹き飛んだ時に確実に魔物の方からの風が強かった。確定だろう。
「能力分かったのか?開人」
「あぁ、多分というか確定だと思うけど『風』を操ってる」
「『風』か……なるほど」
「流石に風の柱出したら分かるでしょ」
「俺、馬鹿だからわかんねぇわ」
「流石にわかってくれよメガロ」
メガロは何故、能力の事になると頭が弱くなるのだろうか。
多分あの二人は気付いているだろう。能力を報告する必要はないだろう。後は能力を持っている炎に頼もう。
「頼むぜ、炎」
「なぁ、僕はわかってるからいいけどさぁ」
「なんだ?何かあったか?」
「報連相はしっかりしてくれよ。戦ってる時は特に報告・連絡はしっかりしてくれ、マジで死ぬからな?」
「善処する」
「今回は見逃してやる。後はこいつを倒すだけだ」
「そりゃ、助かるよ」
「能力が分かったんだ、パッと終わらせるぞ」
そう言って炎は『炎の槍』を作り出した。