死霊で盆踊りをしよう!
現代日本に永山修一と言う男性がいる。
正確にいた。今は居ない。
まあ流行りのあれだ、異世界転生と言う奴だ。
つまりは死んだ。この世に恨みだけ残して。
彼の恨み事など知らなくて良い。
どうせ大した事はない。本人には死ぬほど辛くとも、私たちには知らぬことだ。
酷い?人の心とかないのか?
これから永山はモット酷い事をするのだ。これ位言って良い。
外道に落ちれば、それ即ち同情の余地なし。恨み事があっても黙って成仏する方が多数派なのだ。
永山は違った。
この世に対する恨みつらみと憎しみを持って、居るかどうかも分からぬ神だか悪魔だかに魂を捧げたのだ。
疲れてたのだろうか?きっとそうだろう。
幸運な事に、そして大多数の永山に巻き込まれる被害者には不幸な事に神はいた。
悪魔の方に分がある神であったが、、、、
永山の願いを聞き届けた邪神、、、名前は、、、知らない。
発音できない奴だ。
その神は、永山に、未来永劫自分の奴隷となり、世に迷惑を振りまき続け、自分を楽しませる事を条件に力を授けると言うのだ。
ご先祖様と、守護天使と、背後霊と死神と、悪魔が止めるのも意に介せず永山は頷いた。
バカの極みである。普通はこれだけ止められれば諦める物だ。
だが頷いた。そして彼の魂は永遠に邪神の物となり、比類ないパゥアーと、卑屈で根暗で捻じれた魔人が誕生したのである。
彼の願った力は、死の間際までやっていた、ダークファンタジーゲームのキャラクターの力である。
死霊術師。生ある者にしか闊歩できない筈の世界に、無駄に死者を蘇らせ、世に混沌と近所迷惑を振りまき、墓参りへ冒険者と言う極道者を引き連れないでは行けなくする、特殊な職業の力だ。
全うにプレイすれば、暗黒のパゥアーを使うが、世の為に戦うダークヒーロに収まる人気職であるが、永山は全うではない。
彼のキャラはアライメントは完全に悪。王様を不死の秘密で操り、街を死都に変え、お姫さまは自分好みの不死者にする。そんなキャラクターだ。
その力を貰った大馬鹿者が何をするかは考えなくとも分かる。
だが制約がある。邪神を楽しませる事だ。
邪神は好きな世界に送り込んでやろうと言った。
「ファンタジーは、、、、ダメだ、、勇者が怖い、、死ぬ、、殺される、、、あと不便なの嫌。風呂が毎日入れないとか勘弁、、、、僕の強みが活かせて、魔法に対策が無く好き放題できて責任とか取らなくて良い所、、、現代?だめだアメリカとかに見つかって研究所に送られる、、、特殊部隊とか絶対強い、対策取られて死ぬ」
注文の多い奴だ。慎重ともいうが、、、
「あれだよ、僕の後ろ盾になってくれて、なおかつ僕が居ないとダメな、組織なり国家なりが必要なんだ。死霊術と言う概念を知らないと尚良い、乗っ取るのに手が掛からない、、、なにか、、あるじゃん」
永山は火葬戦記が大好きな男だった。特に日本が勝つ奴が。ありとあらゆる頓智気で米国を負かす、ズルの化身、大日本帝国。
お誂え向きに大量の死者を出してもいる。無謀で横暴な戦争をしているのだ、邪悪な死霊術師を抱えるくらいなんとも思わないだろう。そして同盟国はナチスドイツだ、、、
永山も、バイアスが掛かっているが少しは知っている。枢軸がどれ程の死体の山を築いたか、どれ程の恨みつらみをまき散らしたかを。
これほど死霊術師が活躍できる世界もあるまい。
「我が主よ!第二次大戦の日本で宜しくお願いします!もう凄いかき混ぜますから!」
決断は成された。
こうして無限に広がる世界の一つが取返しが出来ない程、無茶苦茶になる事に決まったのである。