呪い
私には、ある呪いがかけられている。
墓の呪いだ。
私は墓の前に来ると親指を閉じる癖がある。
大人になった今、これがなんなのか覚えていなかった。
興味があり調べると、墓の前にきて、親指を閉じると親の寿命が減らない、ということが書いてあった。
私はもとよりこんなことを信じるたちではなかったのだが、なぜこんなことをしていたのだろう。
今日、それを思い出したのだ。
親が死んだ。
父親も、母親も。
そして親は博多弁でよく言っていた。
______墓ん前に来たら親指ば隠しんしゃい
私は信用していなかった。
からそれに従わなかった。
それをしない私を見ると母親はよく、泣いていた。
さすがにおかしいと思った。
日を改めるごとに母は、
死に近づいている
そんな気がした。
こんな話を母親が信じたのかは知らないが、母親の中で私がこの儀式をしないことは自分が死に近づいている、と感じることだったのかもしれない。
面白かった。
自分がお墓の前ですることを変えるだけで母親の心情は変わり、母親の寿命は変わったのだ。
一年後、母も父も死んだ。
何者かに殺害されたらしい。
でも私は思う。
これは私があの儀式をしなかった罰なのだ。
殺人を犯したのは人間ではなく、
墓から出てきた、鬼なのだ。
今になってこんなことを考える。
私は呪われている。
この呪いは、私の親指に来ていると思ったら体中を取り巻いていた。
そして私の後ろに、今。
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金田啓介はその日、殺害された。