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【亜人の女王 part2】

「おはようございます、陛下。本日の予定は…」

「よい。いつも通り頼む」

「………かしこまりました」


毎朝律儀な事だ。半ば呆れながら感心する。

目の前で跪く女性が面をあげる。するとその顔と躰が水面のように波紋を起こし己と瓜二つの外見に変化した。漆黒の瞳。栗色の髪。巻角。折り畳んだ翼。見事な再現度である。

彼女は魔族の中でも珍しい模倣種だ。ミミックと言えば通りが良いかもしれない。彼女には影武者として私に仕えてもらっている。聡明な彼女は日々の業務を卒なくこなしており、同胞達にも彼女を私だと思って接するようにと伝えてある。私の分身であると言っても過言ではない。


「ちょっと待て。私の腰はそこまで大きくないぞ」

「……畏れ多くも、陛下。残念ながら正確な数字です。修正いたしましょうか?」

「構わん。最近はどうにも体が鈍って仕方がない。少し運動した方がいいかもな」

「それがよろしいかと」


……可愛げのない部下だ。優秀な人材である事に疑いようはないが常に感情が希薄だ。それが有るのかどうかすら疑わしい。種族柄であろうか。こちらの問いにも機械的にしか答えない。歴代の統治者に仕えていると聞いてはいるが部下ながら謎が多い。


業務に向かう彼女を見送り、さっそく外出の支度をする。目当ては人族の旅芸人だ。豪華なドレスではなく地味めな衣服に着替える。女王だとバレればまた大騒ぎになってしまうからだ。

魔族領に娯楽が少ない事を差し引いても彼等の詩曲は新鮮そのものだった。


他の吟遊詩人の歌を聞いた事はあったが種類が少なく、何より怪物を退治する夢見がちな英雄譚ばかりで飽き飽きしてしまう。人族が勝てるのは精々狼程度であろうに。

それに比べて彼等はなんと毎日違う詩曲を歌うのだ。こんな贅沢な娯楽はない。実際問題、毎日決まった時間に披露される公演を観るために女王たる私が足しげく広場に通っているのだ。毎回変装しなければいけないので大変ではあったがそれも嬉しい悲鳴だ。彼等が城で芸を披露する日が待ちきれない。

本当に人族との国交を開いて良かった。


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