【ある聖女の手記 part3】
食料はそれから二日で尽きた。
もう一度街に戻る事も考えたが全員顔を見られてしまっている。捕まればその分時間を取られてしまう。私達に進む以外の選択肢はなかったのだ。
朦朧とする意識の中、脚を動かす。皮肉な事に真っ先に倒れたのは彼女だった。何度も謝る彼女の姿が痛々しかった。私達は一旦彼女を休ませて食料が無いか周辺を散策した。魔物を狩り仕方なくそれを口にする。このあたりの生物の多くは毒を持ち食用には適さないらしい。気付けば私達全員は神経毒にあたり動けなくなっていた。
この状況を襲われでもしたら皆死んでしまうだろう。短い旅だった。私はどこか冷静にもがき苦しむ仲間達を眺める。嫌だ。死にたくない。死ぬのが怖い。来たる死に震え、何かに祈りを捧げる私の前に、不思議な光景が広がっていた。
私の手に淡い光が灯ったのだ。光はこの身を優しく照らし、身体から毒気が消えていく。
初めてのスキル【解毒】を覚えた瞬間であった。
この身が動くようになると私は慌てて仲間達に【解毒】を使った。皆の毒が解除され、息を吹き返したように顔色が良くなる。まさに間一髪であった。
「まさに聖女様の奇跡だ」と彼らは笑いながらからかう。死にかけた事を分かっているのだろうかと呆れながら悪い気はしなかった。何より役立たずの自分が彼等に貢献出来たのが嬉しい。
旅の開始から初めて良い事が起こった気がする。
皆の雰囲気も少し明るくなった。
真っ暗だった旅路を小さな希望が照らしたのだ。
この先一つでも多くの希望が私達を導いてくれる事を願う。




